聖女、辞めます
新作です、よろしくお願いします。
「すまない、ベラ……、君を本日を持って聖女職から外す事になった」
「……はい?」
朝一番で司祭様に呼び出されて言われたのがこの言葉だ。
「えーと、それって……、クビという事ですか?」
「不本意だが……、そういう事になる」
「私、何かやらかしましたか?」
「いや、君には何も疚しい所は無い、それどころか歴代聖女の中でも優秀だと思っている」
「それではなんで……」
「実はな、王家からの要請なんだ。『王太子の婚約者である公爵令嬢に聖紋が現れた、よって公爵令嬢が聖女である』とな」
司祭様は疲れた様な顔をして言った。
聖紋というのは聖女の証である痣の事、私は腕に聖紋が生まれた時から付いている。
孤児だった私は教会に保護され聖女としての教育、知識を学んだ、あのまま路上生活をしていたら悲惨な事になっていただろう、凄く感謝してる。
「でも、聖紋って都合良く出てこない筈ですよね? それに聖女になったら神に使う者として結婚とか出来ない筈じゃぁ……」
「一応説明はしたんだが……、王家としては『聖女との結婚』を重要視しているらしい」
そういえば前に王家の方が見に来たような気がするなぁ、凄く残念そうな顔をしていたのを覚えている、激しく問いたい。
「それで公爵令嬢が聖女になるから私を追い出せ、て王家が言ってきたんですか」
「すまない……、もうすぐ祈りの儀式がある、というのに」
祈りの儀式とは年に1度行われる儀式で国民の前で国に祈りを捧げる儀式の事だ。
聖女というのは基本表舞台に姿を見せない中で年に1回だけ姿を見せる事が出来るんだけど私の場合はベールを被せられ顔を見せない様にされていた。
国からの要請だったらしい、地味で悪かったな、そばかすあって悪いか。
「はぁ〜、私には拒否権なんてありませんよね」
「あぁ、上層部は既に承認している」
そう言って司祭様は苦い顔をした、色々上から言われたんだな、同情する。
司祭様は私の指導係としてずっと側についていてくれた、親であり兄みたいな存在だ。
「わかりました、私ベラ、本日を持って聖女の座を降ろさせていただきます、今までありがとうございました」
こうして私の聖女生活はあっさりと幕を閉じた。