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対等な関係

 レオン王子がいなくなったという事実はロイハルト王国を駆け巡り、様々な憶測を呼びながら混乱が拡大していった。

 王子が様々な敵と手を組み、国を滅ぼそうとしていた――なぜそんなことをするのか、という疑問が多くの人に生まれた。これは当然だ――王位継承者であり、望む物は全て手に入る立場の人間である以上、国を滅ぼすなんてどういうつもりなのか。


 真実を話したところで信用されるはずもなく、下手をすると陰謀論までささやかれてしまうことを考えれば、俺は何も言及できなかった。色々な説が出ては消えを繰り返し、それでも結局結論は出ないまま、噂だけが一人歩きすることとなった。


 その一方で、国王は消えたレオン王子の代わりに継承者を決めなければならなかった……シャル王女だって候補に上がっただろう。レオン王子の暴走を止めたのは彼女だ。ただ、彼女としても不本意だろうとは思ったし、国王が継承を決めても拒否しただろう……俺の推測が正しかったのかわからないが、最終的に王位継承権はシャル王女の二つ下にあたる王子に決まった。突然王位継承権を得て当の王子は最初困惑したらしいが、それでも国を背負う覚悟を決め承諾したとのことだった。


 レオン王子がいなくなったことによる混乱は続き、俺は王都で待機する形となった。この混乱が収まるまで時間が掛かるだろう、という予想はしていたので特に気にしてはいなかったが、時折シャル王女は俺の所へ様子を見に来て、状況の報告をしてくれた。


 ――レオン王子を倒してから二ヶ月後、シャル王女は俺の部屋を訪ね、


「すみません、まだまだ時間が掛かりそうで……」

「気にしなくていいよ。それに、ずっと宿にこもっているわけでもないし」


 そう俺は返答する。報酬はもらっているし、得た額を考えると自堕落な日々を過ごしてもいいのだが、俺は色々と仕事をしていた。剣の腕を鈍らせないという意味合いもあるし、何より王都周辺を調べて新たな脅威が生まれないか確かめる意味合いもあった。

 その間に、俺の名は同業者の中で広まっていった……今まで弱かったのに突然強くなっているためどうしたんだと困惑する人もいたが、二ヶ月経過した今ではすっかり慣れたか、普通に接してくるようになった。


 そして、肝心の敵については……第五の敵まではレオンの差し金によって相次いで登場した。第六の敵については色々と調べたが、現在までに兆候すら現れていない。

 もしかすると『破滅の使徒』であるレオンが消えたことで、第六の敵もまた消滅したのでは……そんな風に思ったりもしたが、警戒は引き続き行う。とはいえ、一年でサービス終了したゲームによる知識であるため、いずれ終わりが来る。


 もし全部の敵を倒したら、俺の戦いは終わるのだろうか……考えている間にシャル王女が部屋を去り、俺は部屋で『終焉の剣』について確認を行うことにした。

 魔力により生み出した剣だが、レオン王子との戦い以来、やはり刀身にヒビが入ったままだ。とはいえ普通の魔物を倒すこと自体は問題ないし、折れる兆候もない。ただ、もしこの剣が半ばから折れたら、その時こそ『終焉の剣』そのものの寿命が来た、ということなのだろう。


 なんだか不思議だけど、この剣自体があまりに特殊であるため、そういう特性なのだと思うことにした……俺はゲーム知識を思い出し、これから襲来するはずの敵について考える。

 どれもこれも強敵だが、まだ発生していないことを踏まえると、ゲームで出現した時よりも早く攻撃を仕掛ければ、第四の敵であったブロウの時みたいに比較的楽に倒せる可能性は高まるだろう……今の俺にできることは、少しでも早く敵の動向をつかむこと。


「よし、やるか」


 気配探知――剣の力を利用し、俺は王都周辺を探る。レオンを倒してから一日たりとも欠かすことはなかった作業。

 レオンを観察しようと色々試行錯誤し、そして敵の動向をつかもうと作業を重ねた結果、俺は二ヶ月前よりもずっと範囲を広く探知できるようになっていた。


 王都の郊外に存在する魔物の位置すらも、今の俺なら把握できるようになった……そして俺は今日も、新たな敵が出現していないかを、確かめる。


 ……レオンがいなくなったことによる影響は、まだまだ続いている。新たな次期国王も決まり、事態は沈静化していくだろうが、レオンを支持していた者は多数いるはずで、政治闘争だって色々あるかもしれない。

 そうした中でシャル王女が動けているのは幸いではある……ただこの二ヶ月、王都の外には出ずひたすら王城内で動き回っている。報告内容を聞く限り彼女も相当大変なはずだが、俺と話をする時だけは笑みを浮かべ楽しそうにしている。


 ある意味、ここへ来ることが王女にとって心を休める時間なのかもしれない……そんな風に思いつつも、俺は迷惑になっていないだろうかと考えてしまう。


「……対等に話ができるようになるのは、まだまだ先かな」


 そんなことを呟きつつ、俺はひたすら作業を進めるのだった。


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