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終焉の剣

 レオンの目論見は、俺に絶望を与え剣の力を使えないようにする……あるいは、意志を挫き剣から引き出す力を弱くする。

 俺はそういう考えを確信しつつも、レオンは策を読まれても構わないと思っている……圧倒的な力は刃のように突き刺さり、例えレオンの言動が目論見ありだとわかっていても、戦意を失わせる。それだけの差が存在する。


 どれだけあがいても、勝つことはできない……そんな風にレオンは主張したいようだが、


「……確かに、世界を滅ぼす存在として最強なのかもしれない」


 俺はレオンへと語る。


「だが、それでも……俺は戦いを捨てることはない。全力で、お前を倒す」

「絶望はしない、というわけか。だがわかっているか? その剣は使用者の意志に従い力を与える。しかし、負けるかもしれない――そんな可能性がよぎるだけで、力は弱まる。俺が猛攻を仕掛け、それでも一切否定的な感情になることもなく……戦いを続けることができるのか?」


 俺はその問い掛けに何も答えなかった。無論、わかっている。圧倒的な差がある以上、少しでもネガティブな感情を出せば、それだけで終わると。


「……やるだけ、やるだけさ」


 俺はそんな風に答えると同時に、剣に魔力を込めた。


「俺の意志に応えろ……目の前の存在に、勝てる力を!」


 次の瞬間、剣が魔力を発して一気に俺の体を取り巻いた。それを見たレオンは笑みを浮かべる。


「これで勝負を決めるというわけか? いいだろう、ならば――始めようか!」


 勝利を確信するような声音と共に、レオンは動く。目の前には、あまりにも巨大な魔力――それは今まで戦ってきた世界を滅ぼす敵、全てを上回っている。

 俺にできることは、意志を信じ向かい合うことだけだ。正直、勝算はないに等しいことは、俺自身わかっている。不安もあるし、こうやって考えている時点で、相手の術中にはまっているのも理解できる。


 しかし、それでも――俺は背後にいるシャル王女の姿を思い浮かべた。俺が負ければ、最初に彼女がレオンの手によって殺されるだろう。それだけは、絶対に避けなければならない。

 その未来を防ぐために、俺は疾駆する。そして剣は――俺の意志に、応えた。


 真っ直ぐ突き進む俺の斬撃を、レオンは剣で受けた。せめぎ合いになる……しかし次の瞬間、爆発的に膨れ上がった『終焉の剣』の魔力が、彼の剣を押しのけた。


「なっ……」


 これは予想外だったが、レオンは声を上げる。ここまで追い込んでも、まだそんな力が……おそらくそういった心境だろう。

 しかしレオンはすぐさま体勢を立て直す――状況は優勢だ。ならば、


「最後の最後で、馬鹿力を発揮したか。だが、その程度では――」

「おおおっ!」


 相手の言葉をかき消すように俺は叫び、剣を振り抜いた。それによってレオンは大きく後退する。その表情は再び驚愕に染まり、何が起こったのか理解できていない様子。


「……この状況下で反撃しても、どれだけ魔力を高めてもほんの一時の抵抗だぞ」

「だが、一度押し返した。それに、今のセリフはそうだと自分に言い聞かせるような雰囲気があったな……俺の反撃が怖いんだろ?」


 その言葉に対し、レオンの顔つきに変化が。明らかに怒りを伴ったものであり、


「ああそうか――なら、本当に終わらせよう。遊びもなく、全てを蹂躙してやろう」


 真顔となり、レオンは限界まで剣に力を収束させた。それはこの場を揺るがすほどであり、その魔力量は、山を消し飛ばすであろう恐ろしいものだ。

 だが、俺はまったく反応しなかった。その表情を見てレオンは再び怒りの形相を見せ、


「塵も残さず、全てを滅する――!」


 宣言と共に振り抜いた剣戟。俺が今、剣に収束させている力では、とても勝負にならないほどのもの。

 魔物の王や古の邪竜でさえも倒せるほどの力だが、それでもレオンには届かない……だが、俺に絶望感はなかった。一番の理由はこれに負ければどうなるか……背後の王城を再び意識する。それだけで、俺は不安も絶望も全てが消えた。

 それは王女がいるから戦えるというわけではなく、ただやらなければならないという意志が蘇るから――俺は声もなく剣を構え、振る。そしてレオンの剣と交わる寸前に、剣は俺の願いに応え、瞬間的に魔力を発した。


 そして、交わった刃。刹那、俺は腕の感覚がなくなった。どういう結末を辿ったのか、俺にはすぐ理解することができなかった。

 でも、俺は頭で把握する。剣がぶつかり、レオンと互角の勝負を繰り広げている――けれど視界は魔力の奔流によって白く染まり、相手の姿は見えない。


 レオンの方が優位であることは間違いなく、俺の剣戟をいなして反撃してくる可能性もある。けれど、俺は止まらなかった。このまま力を使いきっても構わない――そんな考えと共に、俺はさらに足を踏み出し、光の中へ突き進んでいった。


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