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圧倒

 空き地にいると気がついた瞬間、レオンは剣を抜き、俺とシャル王女へと駆けた。

 戦闘が始まる――そう直感した瞬間、シャル王女の前に出てレオンと剣を交わした。


 ギィン、と甲高い音が響き、俺とレオンは鍔迫り合いとなる。


「ずいぶんとシンプルな戦法だな」


 俺はレオンへ言及する。世界の命運を決める戦いではあるが、最初は単純な斬り合いからスタートした。


「始めはこの程度でいいだろう」


 するとレオンは発言すると共に、俺の剣を弾く。

 距離を置いて改めてレオンの姿を観察する……その体と剣に秘められた魔力は、ひどく静かで俺に悟られないようにしている。


 どれだけ探っても、底が見えない……そういう風に思わせることこそ、レオンの目論見なのだろう。俺が持つ気配をつかむ能力を完璧に理解し、対策している。


「そちらは戸惑っているだろう。さて、一気に終わらせたいのであれば、挑戦は受けるぞ?」


 レオンが告げた時、俺ではなくシャル王女が仕掛けた。魔力を迸らせた彼女の動きは神速と形容すべきものであり、暗黒大樹で見せた強化の技法だった。

 レオンは動いていない。反応できなかったわけではないと思うのだが、シャル王女の剣が彼へ――


「見事だが」


 だが、王女の剣をレオンは防ぐ。


「王家の武装であっても、今の俺には届かない」

「っ……!」

「お前は、この戦いをただ見守るしかできないさ」


 シャル王女の剣を弾く。その直後、彼女は大きく後退する。

 その顔には、悔しそうな感情が見えていた。どれだけ鍛えても、決して届かない領域。それを認識して、彼女は引き下がる。


「王女」


 そこで俺は声を上げる。


「ここは俺に」

「……はい」


 小さな返事に俺は意志を固める。レオンを倒す――そのために、


「力を貸せ、剣よ」


 言葉と共に、俺の体に魔力が宿る。


「ここで引き上がるか」


 そしてレオンは呟く。一気に増した俺の魔力に大した反応をしていない。


「そのくらいの予想はしていた……そして、もう一つわかったことがある。どうやら貴様の意志の強さはシャルに関係しているようだな」

「……だとしたら、どうする?」

「シャルを狙えば当然、貴様も力をさらに剣から引き出そうとする……故に、このまま戦うのが得策だろう。シャルの剣は通用しないことを踏まえれば、放置するのが賢明だ」


 ……俺は内心で怒りを覚えながら、レオンへ挑む。それに対し相手は、禍々しい魔力を放出しながら叫んだ。


「いいだろう、来い……!」


 まるで、戦いを楽しんでいるかのようであり――いや、実際に楽しんでいるのだろう。俺を倒せば世界を滅することができる。その未来を見据え、なおかつ俺の能力そのものが、自身の予想を超えていない……勝利を確信しているが故に、楽しんでいる。

 俺はこの状況を挫くことが第一……剣が再び交錯する。鍔迫り合いとなるが、レオンの体は動かない。


「その剣を所持する人間として、全力で応じる……そう考えてはいた。だが、今の状態では力を出す前に死ぬぞ?」

「ぬかせ……!」


 俺は渾身の魔力でレオンの剣を弾いた。次いですかさず一閃する。俺がイメージした通りに描く完璧な剣戟。レオンにこれが届けば――そんな考えを抱いたが、彼は余裕といった表情でこちらの剣を防いだ。


「全て、わかっている。そちらは可能な限り剣に力を集めている……強い意志により剣は呼応し、貴様に力を注いでいる。だが」


 レオンが俺の剣を弾く。俺はすかさず反撃に転じたが――それもあっさり防がれる。


「俺の力が明らかに強い……いや、力だけではない。技量を含め、全てが上だ」


 俺は構わず剣を放つ。だが、その全てがレオンの完璧な防御によって、弾かれてしまう。

 どれだけ攻撃しても、絶対に届かないような……そんな予感がした。俺はさらに剣を見舞うが、やはり叩き落とされる。


 レオンの言う通りだった。力で真正面から勝つことができていない。ならば技量面においてその差を縮める方向性……というのも厳しい。なぜなら今回の相手は王子。当然剣術を学んできただろうし、持たざる者だった俺にとって技量とは剣に宿るものしかない。

 つまり、今までの相手と違い技術戦でも対応できる……そして、剣から力と共に技術を得ていても、限界がある。力と技術――双方で俺はレオンに勝ててないという状況が浮き彫りとなった。


「どこかで勝てると踏んでいたか? 残念だが、そうはならない」


 圧倒的な力で俺の剣を叩き落とす。それに対し何か他にないかと考えるが……レオンはその考えをすぐに察知した。


「どうすればいいか決めあぐねているな。策を用いて俺に挑む。だが、それも通用しない。なぜなら、そちらの動きは魔力の動きで容易く読める」


 そう告げるとさらに魔力を噴出する。その瞬間、相手と自分の差が絶望的であると理解し、


「あえて今問うとしよう。英雄ラグナ。私が持つ力を目の当たりにして……どういう感想を持ったか聞かせてくれ?」


 ――背筋が凍るほどの魔力を持つ世界の敵が、俺へ向け問い掛けてきた。


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