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固い意志

 俺とシャル王女は向かい合って話をすることに。着席した瞬間、硬質な雰囲気を王女から感じ取り、俺は言葉を待つことに。


「……ラグナさんの推測を教えて頂きたいのですが」

「はい」

「一連の敵……それについては、何かしら首謀者がいるとお考えでしょうか?」

「それは……わからない」


 さすがにレオン王子であると語ることは難しいので、誤魔化すように返答。


「ただ、立て続けに国を脅かす存在が出てくる以上、何者かが裏で手を引いていてもおかしくはないと思う」

「そう、ですか」


 濁した声。彼女は何か知っているのか?


「……ここに来たということは、何かわかったことが?」


 問い掛けに王女は沈黙した。俺は言葉を待つことにして、部屋は静寂が包まれる。

 張り詰めた空気を破ったのは……およそ一分後、王女が口を開いた。


「あくまで、推測ですが」

「はい」

「……ラグナさんは、城内に存在していた嫌な気配について、色々と言及していましたよね」


 俺は頷く。すると彼女は、


「私が動いたことによって解決はしました。ただ、兄の動きに問題が」

「問題?」

「結論から言うと、城内に存在していた気配の調査……その妨害をしていたのです」


 妨害――なるほど、俺がシャル王女に言わなければ、レオンは第五の敵を放置していたということなのか。


「そんなことをする理由が、兄にはない……そこで、密かに調べました。そして、兄が人には気付かれないところで、様々な工作をしていることがわかりました」

「……レオン王子は王位継承権を持つ人間だ。政治的にも色々と動いているだろうし、王女が見た活動はその一環では?」

「その中に、私達が戦った魔術師に関する資料と、やりとりが見つかりました」


 なるほど、それなりに連絡をとっていたのか……俺が沈黙していると、王女はさらに話を進める。


「さらに言えば、私達が遭遇した敵……魔物の王や竜についても、その位置が記述されている資料が」

「……レオン王子が黒幕かどうかはわからない。でも、何かしら関係があるということか」

「はい……」

「そうした資料を回収しているわけではないだろ?」

「資料を手に入れると、兄が当然気付くでしょうし」

「現状では証拠はない……ってことだな」


 ただ、と俺は思う。なんとなく、シャル王女に見つかるのは想定内のような気もする。

 もしくはこれから決戦が始まる以上は露見しても問題ないと考えているか……どちらにせよ、この段階で王女に事態がバレても問題はないと考えているように思える。


 さて、俺はどう答えるか……といっても、いくらなんでもレオンとのやりとりをそのまま説明するわけにはいかない。ならば、


「……まず、言わせてもらうとレオン王子から何か嫌な気配が漂っていたのは感じていた。でもそれは、あくまで俺の感覚だったし、城内に存在していた気配が王子にもあった、ということかもしれないと考えた。だからこそ、シャル王女へ調査を進めるよう進言したんだ」

「もしかすると兄は途中で倒れてしまうかもしれない、と考えた」

「そうだ……でも王女の言葉通りだとしたら、気配をまとっていたのは俺達が倒してきた存在と手を組んだため、という風に解釈ができる」

「兄が首謀者であるとしたら、事態は深刻です」

「ただ、さすがに敵については打ち止めのような気もする」


 俺の言葉にシャル王女は視線を重ねた後、


「……しかし、兄がこれで終わりにするとは思えません」

「今度は王子自身が動くと?」

「はい」

「……あの人は、国を滅ぼそうとしているのか?」

「動機はわかりません。ですが、確実に言えるのは……絶対に兄は諦めない。目的を遂行するために尽力をするだろう、ということ」


 ――世界を滅ぼすために動くことは転生前の記憶が戻ってきたためだとは思うが、王女の言葉を踏まえれば目的を遂行するという固い意思は生来のものであるとわかる。

 俺だって転生前の記憶や意思に引っ張られてはいるが、元々の性格だって残っている。故に、説得などは不可能……まあ、そこについては最初から諦めてはいるけれど。


「……王子が首謀者だとして、俺達はどうする?」

「それについて、相談しようと思ってここへ来ました」


 なるほど……だが、王子がどういう動きをするかわからないし、俺のことを知っている以上は動向を観察しようとも絶対に対策は立てるだろうし。


「具体的には?」

「……兄が相手となれば、当然ながら人を動員してどうにかするということは不可能だと考えていいでしょう」

「なら、俺と王女だけで……?」

「はい」


 ――それは、今まで以上の厳しい戦いとなるだろう。だが、王女はそれでも戦うつもりだった。

 ならば俺の答えは一つ。


「わかった……戦おう」

「ありがとうございます」


 シャル王女は笑顔を見せる。それに俺は笑みを返し応じた。


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