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同類

「……あんたも、同類ということか?」


 俺はレオン王子へ向け問い掛ける。口調が鋭いものへ変化したのを聞いてか、レオン王子は目を細めながら笑みを浮かべた。


「ああ、そうだな……婉曲的な言い方はやめにしよう。貴様は転生者だな?」

「あんたもそうらしいな」

「正解だ……この世界のことを知っているという事実。それは……『ワールドエンド・アルカディア』か?」

「……俺とあんたは、同じ世界の転生者だというのか」


 その言葉にレオン王子は笑みを浮かべながら頷いた。


「どうやら、そのようだ……だが、おかしな話だ。ゲームの主人公は誰もいない。その中でモブですらない貴様が、剣を手にしている」

「それはあんたも同じだろう。一年でサービス終了してしまったゲームにおいて、あんたは立ち姿すら公開されていなかった」

「ははは、そうだな」


 あっさりと同意する……この現状は、一体どういうことなのか。


「まあ俺達の話はいいだろう。ここでの問題は、俺は世界を滅ぼす者として。そして貴様は世界を救う者として転生を果たしたわけだ」

「……なぜ、こんなことをしている?」


 俺は思わず問い掛けた。どうやらレオン王子――その転生者は、この世界を滅ぼす存在として選ばれたらしい。

 だが、そんなことをして何になるのか――疑問を抱き問い掛けると彼は、


「それが俺の役目だからな」

「……何?」

「役目だからだ。貴様が『終焉の剣』を手にしたように」


 わけがわからなかった。役目だから――世界を滅ぼそうとする?


「そちらはまったく事情を知らないようだな。いいだろう、なら話すか」

「何を、だ?」

「この世界の真実とやらだ」


 何か、嫌な予感がする――そんな考えを抱いたが、制止する前にレオン王子は話し始めた。


「まず、この世界がゲームだとか、そんなオチはない。紛れもなく現実であり、そこについては疑わなくていい……が、この世界は俺達の前世の世界と関連がある」

「ゲームになったのも理由があると?」

「そうだ……ゲーム上では一切触れられることのなかった真実……貴様は『破滅の使徒』にも興味があるだろう? その答えを提示してやろう」


 ――なぜ、今そんなことをするのか。疑問ではあったが、俺は口を挟むことなく話を聞く。


「発端はこの世界のとある存在だった。世界の創造者とでも言おうか……そいつはこの世界を最高のものとするために異世界から様々な情報を得ていた。その内の一つが、俺達のいた世界だったというわけだ」

「つまり創造者は何かしら魔法でも使って、この世界の情報を俺達のいた世界へ与えたと」

「そういうことだ。もっとも、それによって出た影響は一年でサービス終了するゲームだったわけだが……その事実を受けて、創造者はこう思ったらしい。自分が創造した世界は完璧であったはず。だが、そういった世界観は、極めて凡庸で俺達の前世において、空想的にはありふれたものであったと」

「……創造者はそういった事実を目の当たりにして、何かやった?」

「それが、俺達だ」


 自身の胸に手を当ててレオン王子は語る。


「創造者は、この世界を凡庸なものではなく特別にしたい……それをやるべく、二つの実験を行おうとした。一つは世界を滅ぼす存在について。俺の介入がなくとも、いずれこの世界でオルザークが出現し、邪竜が暴れていた。だが、それらを制御し率いる存在が生まれたらどうなるのか……実験するために、創造者はこの世界を基にしたゲームに傾倒していた俺達をこの世界に呼び寄せた」

「……実験の二つ目は?」

「創造者は、もう一つの実験――自らが生み出した『終焉の剣』を用いた英雄が、世界にどのような影響を与えるのかを調べたかった。結果として世界を滅ぼす存在は貴様に負けた……創造者がどう評価しているかわからないが、俺に天罰が注いでいないところをみると、もしかしたら満足のいく結果なのかもしれない」


 創造者――話を聞く限りは誠に身勝手な存在と思える。そして、


「……主人公達がいないのは理由があるのか?」

「様々な弊害の一つだ。創造者は未来の出来事すら把握する。その情報を別世界に与えて『ワールドエンド・アルカディア』を作成したわけだが、その情報内容は俺達からすれば現在及び未来の出来事だ」

「ああ、その通りだな」

「創造者は実験を行うとき、ゲームによる未来の情報を保有する存在を呼び寄せ実験を行った。ただしそれによって、世界全体に影響を与えてしまった」

「結果として主人公やその仲間が、いなくなったと?」

「そうだ。俺達の頭の中にあるゲームの記憶を維持するために、様々なコストを支払った。その内の一つが、リュンカと呼ばれていた人物や、彼の仲間達について」

「消えた、のか?」

「そう考えていいだろう」


 彼の言葉が真実なのかはわからない。だが、リュンカはいない――その事実については、内心で納得もしていた。


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