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自分自身ができること

 魔物を吸収し、能力を強化したブロウに対し俺は真っ直ぐ仕掛けた。取り込んだことによって強化した能力を瞬時に看破し、正面から当たるべきだと判断してのことだった。

 目の前にいるブロウは、ゲームと比べれば弱い。しかし、それでもこの場を蹂躙できるだけの力を持っているのは間違いない。


 だからこそ、俺は真っ直ぐ突き進む。それに対しシャル王女は何も言わなかった。俺の判断である以上は、それに従うという雰囲気らしい。

 一方でブロウは俺を見て目を細めた――直後、両腕に魔力をまとう。


「まずは貴様からか」


 呟いた矢先、俺へ向け両手をかざし魔法を放った。それは漆黒の大剣であり、凝縮した強大な魔力が、俺一人へ向けて撃たれた。

 それを俺は、真正面から受け、弾いた。古の邪竜のような仕掛けはない。弾き飛ばせばそれで終わりだ。


「何……!?」


 声を発したブロウは強い警戒の声と共にさらなる魔法を放とうとする。だがそれよりも先に俺の方が動いた。一気に間合いを詰めてブロウへ肉薄する。

 ――相手は魔法使いであり、接近戦の経験は皆無のはず。というより、実際にゲームでもそのような描写が成されていた。


 ブロウはここで全身に魔力を発し、防御の構えをとった。俺の斬撃を防ぎ、反撃の魔法で倒すという意図なのは間違いないが、それは俺の能力を把握できていないのだと確信させられる反応だった。


「はっ!」


 声と共に一閃する剣。それをブロウは魔力を込め胴体で受け――振り抜いた瞬間、斬撃の軌跡がその体へと刻まれた。


「っ……」


 短い呻き声がブロウの口から漏れる。間違いなく、俺の攻撃が予想外だった。

 そして俺の剣戟が決定打となって、ブロウの体が倒れる。途端、王女や騎士達が決着を付けるべく一気に踏み込んでくる。


「ま、て……!」


 どうにか魔法を放ち抵抗しようとするブロウ――あまりにも短い勝負だったが、彼の敗因は俺の能力を看破できなかったことに加え、シャル王女達が動いた段階で打つ手がほとんどなかったこと。それに尽きるだろう。

 そして騎士達の攻撃が入り――魔物と化してしまったブロウの体は消滅。犠牲なく、俺達は戦いに勝利することができた。


「……今までと比べれば、まだ楽な戦いだったな」


 これまではかなりギリギリだったが、ブロウの場合は違っていた……もしかするとこれは、時期的なものが関係しているかもしれない。魔物の王や古の邪竜については、最初から凶悪な力を持っていた。暗黒大樹についても、被害はなかったにしろその力はゲーム通りのものであったと考えていい。

 しかしブロウは違う。まだ魔物の数は少なく、なおかつロイハルト王国を崩壊に追いやるような魔法についても兆候は見せていたが、完成していたわけではなかった……実際はもっと研究を重ね、なおかつ魔物を増やす必要があったが、それができていなかった。理由は、時間が足りなかったこと。


 そして、戦う前にブロウが発言した内容を踏まえると……俺は呼吸を整える。周囲を見回せば崩れた建物を調べ始める騎士の姿が。


「念のため、魔物が他にいないか確認をします」


 と、シャル王女が近寄ってきて俺へ告げる。


「今までと比べれば、作戦が功を奏し速やかに打倒することができましたが……楽勝であった、などと考えているわけではありません。もう少しここへ来る時期が遅ければ、危険な状況になっていたでしょう」

「……そうですね」


 頷きつつ、俺はこれからのことを考える。第五の敵は既に登場している。事前に色々と動いていたし、解決できるものだと思いたい。

 そして次の敵だが……俺はそこで思考を止め、この作戦前に知ったとある事実について思い起こす。もしそれを調べるなどすれば、これからの展開も大きく変わる。次の敵がどう動くのかも読めなくなる。


 とはいえ、このまま何もしなければさらに次の敵がロイハルト王国へ襲い掛かるだろう。ゲームではシナリオが進むごとにさらに強い敵が押し寄せていた。そして、俺の戦いがどこまで通用するかも未知数だ。

 そもそも『終焉の剣』だって俺が今後も使い続けることができるかどうかもわからない。やれることは、早期にやっておくべきだ。


「……王女」


 俺はここでシャル王女へ声を掛ける。


「実は、この戦いが始まる前に、色々と調べていてわかったことがあります」

「わかったこと、ですか?」

「はい……ここまで立て続けに凶悪な敵が出現し続ける事実。そして、魔物の王オルザークや今回の敵が語った戦う理由……おそらく、ロイハルト王国に対し攻撃を仕掛けている存在がいるのではないかと推測します」

「……かも、しれませんね」


 シャル王女は同意する。そこで俺は、


「王城内で起こった気配のこともありますし、当面は王都内で活動したい。なので、可能であれば拠点が欲しい」

「はい、わかりました」


 あっさりと受諾。その返事を聞きつつ俺は、王都に戻った際にやることを頭の中で確認した――


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