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騎士の評価

 レオン王子が語った二日後、王都から騎士団が出発し、俺もそれに加わった。

 指揮官はシャル王女。レオン王子は王都へ残ることとなり、第五の敵について引き続き調査を続行するとのことだった。


 そんな中で、俺は馬を進める……第四の敵が根城にしているのは山の中。しかし馬でそこへ赴くのは不可能であり、最寄りの町まで到達したら徒歩での移動になるだろう。


「残念ながら、作戦の性質上奇襲は難しいです」


 と、俺の横にいるシャル王女は告げた。


「相手は間違いなく私達の動向を把握しているでしょう。よって、相手に気取られないように動く、というのは事実上不可能です」

「確かに、そうですね」


 ここについては仕方がなく、ゲーム知識も役に立たない。

 相手は魔術師なので、自分を討伐するような人間が現れれば即座に対処できる手はずくらいは用意していることだろう……敵の居場所へ攻め込むという状況は暗黒大樹と同じだが、今回の相手は人間であるため、どんな手を打ってくるかわからない。


 魔物の王や古の邪竜は、自分自身が圧倒的な力を持っていることを自負していたため、人間側を出し抜くような作戦なんてものは用いず、力による蹂躙を行おうとしていたし、ゲームでもそうだった。

 しかし、今回は人間である以上は相当警戒してくるはずだ……話がどう転ぶかわからない点は不安だし、なおかつ王都に滞在していた時に知ったとある事実のこともある――


「シャル王女」


 俺はふと、王女へ話し掛ける。


「質問が二点あります」

「どうぞ」

「まず、俺が助言したことですが」


 ――出発前日に、シャル王女は一度俺の部屋にやってきた。もちろん装備はシャル=アルテンのものではあったが。

 そこで、俺は一つ頼んだ。第五の敵に相当する王城にまとわりつく気配……それについてはレオン王子が対処するだろう。しかし、念押しでシャル王女からも色々動いてもらえないか、と。


 作戦前日だったのでやれることは少なかったが、レオン王子に加えシャル王女からも調査をしている人間へ向け、頼んでおく……あるいは王女が利用できる人員がいるのであれば、彼らに協力を持ちかける。


「それについては、いくつか候補があったので彼らに頼みました」

「そうですか。ありがとうございます」

「兄上が動くだけでは不安でしたか?」

「そういうわけではありませんが、場所が王城である以上は特に注意を払うべきかと思っただけです」


 そう答えはしたが、嘘で――明確な理由はあるのだが、そこはあえて語らない。

 で、シャル王女としては何かあるのかと疑問に思っているかもしれないが……深く尋ねてはこなかった。


「なら二つ目……その」


 俺はここで小声になる。


「騎士達の、俺に対する評価ですけど……」


 ――今回の作戦は大規模であり、俺の知らない人間もかなり多い。そんな中で王女と帯同していれば何だこいつはと感じてもおかしくない。

 ただし、今までとは異なり現在俺は国から請われて作戦に参加する立場にある。つまり、公的な立ち位置を確保しているのは事実であり、一定の信用を国から得ているという事実から、俺が王女と一緒に行動していても表面的には誰も文句を言ってはこない。


 だが、不平不満が溜まればそれが問題を引き起こす可能性もある……そこまで考えた時、シャル王女は俺へ返答した。


「まず、あなたの能力に関する詳細を知っている人は少ないです。魔物の王を始めとした一連の敵について、その詳細を語るのも難しいですからね。それに、王家の装備で太刀打ちできなかった存在に対抗できる剣士……というのも、騎士達からすると異例であり、評価を難しくするところです」

「そうですね」

「よって、その辺りの詳しい話についてはひとまず語ってはいません。もちろん、事実を知っている人間は詳細を語れますから、徐々に話は伝わっていくでしょうけれど。現時点で知らない騎士に対しての説明としては、強大な敵との戦いで著しく貢献した人物、というものです」


 ……解釈の余地がある言い回しなのか。


「嘘は言っていませんし、詳細を知りたい方は自ら情報を集めるでしょう。逆に詳細は別にいらないという人もいますし……作戦とはそこまで関係がありませんから、情報共有は最低限に留めています」

「その中で、俺の評価は……」

「あなたを知っている方は私を助けたことで信頼しています。一方で知らない方は興味の対象、といったところでしょう」


 評価としては良い方向……なのかな。ただまあ、俺の存在によって不満が溜まるというわけではなさそう。


「もちろん、作戦に関わる騎士全員に確認したわけではありませんが……おおよその状況はこんなところです。もし、反発があったとしても私が対応します。そこについて、ラグナさんが心配する必要はありませんので、ご安心ください――」


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