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ジリナの秘密 1

 ジリナの秘密が分かります。


 心に傷を負った美しい王子と、田舎の女の子の恋物語。

 恋から愛へ変化する―。

 二人の思いは成就するのか、それとも、指先から零れ落ちていってしまうのか……。


 この作品は『命を狙われてばかりの王子と田舎の村娘の危険な恋 ~けっこう命がけの恋の行方~』の設定を見直し、大幅に改変したものです。

 推敲しようとしていましたが、それに収まりませんでした。基本的な部分は同じですが、主人公セリナの設定が変わったため、変更を余儀なくされる箇所がいくつもあります。脇役達の性格や立ち位置もはっきりしたため、変えたい部分があります。

 もっと面白くなることを願って……。      

 

                           星河ほしかわ かたり

 すっかり夜になって、屋敷の中はいつもどおり静寂が訪れていた。

 ようやく、いつもより遅い夕食も終わり、ジリナはほっとしながら廊下を歩いていた。さすがに今日は疲れた。

 首を回しながら歩き、誰もいない廊下ではたと足を止める。後ろから呼び止められたのだ。思わずぎょっとした。ついさっきまで、誰もいなかったのに。


「ジリナさん、少しいいですか?」

 もう一度呼び止められた。

「はい。」

 何とか平静を装ってジリナは振り返った。フォーリである。しんと静まりかえっている廊下に二人きりになる。ニピ族と二人っきりになるのは、どうにも居心地が悪い。

「話があります。」

「ええ。そのようですね。」

 フォーリはじっとジリナを見定めている。物凄く居心地が悪い。なんだって、狭い廊下で声をかけるんだろうと思うが、逃げられないようにわざと狭い廊下なのだろう。


「単刀直入に聞きます。あなたは、一体、何者ですか?」

 フォーリは静かに聞いてきた。彼は一人だが一切の隙がなく、逃げ出すことは不可能だ。逃げようとした瞬間、ニピ族の武器である鉄扇が(ひらめ)いて死ぬ。

「誤魔化そうとしても無駄です。あなたはこの村の出身ではないですね?」

 言い逃れはできそうにない。ジリナはため息をついた。


「どこで、それを聞いたんです?」

「聞いた……。確かに聞いている。あなたの言葉には、この地域特有のパルゼ語の(なま)りがない。綺麗なサリカタ語だ。似せて発音しているが少し違う。」

 思わずジリナは笑った。まさか、こんなことで気づかれるとは。さすがニピ族。侮れない。

「おやまあ。それはそれは。ニピ族の耳がいいのは本当のようだね。わたしとしては、上手く誤魔化せていると思ってたんだけどねぇ。困ったものだね。」

 ジリナはフォーリの様子を確認しながら、続けた。


「わたしも聞きたいことがあるんだよ。ニピ族は二つあるって本当かい? わたしがよく知っているのは、踊りの方でね。それでも凄いと思っていたのに、あんたはその上を行く。噂には聞いたことがあったんだけどね。踊りと舞の二つあるって。本当かね?」

 すらすらと嘘を並べる。嘘も方便、完全に誤魔化せなくても少しは誤魔化せる。


 ランプの明かり一つの暗がりの中で、フォーリの目が鋭くなった。

「はぐらかそうとしても無駄だ。まだ、私の質問に答えて貰っていない。あなたは一体、何者だ?」

 ジリナはどう答えるか頭を巡らせる。フォーリがどういう答えを求めているのか。しかし、ニピ族相手に全て嘘は得策ではないし、通用する相手ではない。

「答えられないなら質問を変えよう。あなたは首府にいたことがあるはずだ。ベブフフ家の屋敷で働いていたというが、領地ではなく首府の方だろう?」

「…ふん、やはり騙されてくれないね。わたしの質問に(おどろ)いて、あんたのした質問を忘れてくれるかと思ったけど。」


 ジリナは頭を巡らせながら、ため息をついてみせる。

「……まあ、仕方ないか。そもそもニピ族相手に隠せる話じゃないしねぇ。」

 わざと渋ってみせながら続ける。

「……わたしは首府にいたよ。王宮で一時働いていたさ。ま、わたしも若い頃は、それなりに美人で通ってたんだよ。」

 フォーリは微動だにせずジリナの動きを観察している。ここで呼吸なりが乱れると、嘘があると見抜かれる。ジリナは平静を装いながら、フォーリの姿に既視感を覚えた。一瞬、心臓がドキリと跳ねそうになった。


(危ない、危ない。気づかれる。)

 だが、見覚えのある人物と似ているのだ。できるだけ思い出さないようにしていた過去の事実。

 ここのところ、毎日、思い出さざるを得ない。何とも皮肉な運命だ。王宮から逃げたのに、向こうの方から追いかけられているような気さえする。

 しかし、一度たりとも臭わせたことはなかったはずだ。ジリナの教養だって、大貴族に仕えていたなら知っていておかしくないことばかりだ。それなのにフォーリは勘づいている。ジリナが何か知っていることを。

 ジリナは因果な運命に思わず笑った。フォーリはそれを黙って見ている。何がおかしいとか焦りを見せないところも小憎らしい。自分より年下の若造だが、侮れない若造である。


 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                           星河ほしかわ かたり

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