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夕陽色の髪の王子さま 7

2025/07/30 改

 心に傷を負った美しい王子と、田舎の女の子の恋物語。

 恋から愛へ変化する―。

 二人の思いは成就するのか、それとも、指先から零れ落ちていってしまうのか……。


 この作品は『命を狙われてばかりの王子と田舎の村娘の危険な恋 ~けっこう命がけの恋の行方~』の設定を見直し、大幅に改変したものです。

 推敲しようとしていましたが、それに収まりませんでした。基本的な部分は同じですが、主人公セリナの設定が変わったため、変更を余儀なくされる箇所がいくつもあります。脇役達の性格や立ち位置もはっきりしたため、変えたい部分があります。

 もっと面白くなることを願って……。      

 

                                 星河ほしかわ かたり

「……どうして? どうして村に行ったらだめなの?」


 セリナに強く否定されて、若様は少し傷ついたような表情で聞き返した。


(そんな顔をしないで……!)


 セリナは心の中で悲鳴を上げる。心臓が勝手にドキドキしてきた。


「ど、どうしてって、危ないからです。」


 きょとん、と若様は首を(かし)げる。愛らしい仕草にセリナは彼を抱きしめたい衝動に駆られた。かろうじて理性がセリナを引き止める。


 その時、人の気配に二人は振り返った。近くで隠れて様子を見ていた村の若者達だ。農閑期で仕事がなく、ふらふら仲間とつるんでいたのだろう。セリナは青ざめた。相手は五人。みんな顔を紅潮させている。理由はセリナと同じだ。その若様の愛らしい色気に当てられたのだ。


「よう、べっぴんさん。」


 村の若者達は引き寄せられるように、ふらふらと若様に近づいてきた。


「誰? 村の人?」


 若様は警戒心もなく、セリナを振り返って尋ねた。


「ええ、でも……。」


 セリナは少し前に出て若様を(かば)う体勢にした。


「よかったね。」


 セリナが言い終わる前に、若様の顔がぱあっと喜色に溢れた。


(え? 何が?)


 混乱しているセリナに若様が嬉しそうに口を開く。


「村に人を呼びに行かなくていいよ。」


 セリナは頭を石で打ち付けられたような気がした。育ちが違いすぎる。やっかいごとが増しただけだと分かっていない。それは若者達も同じ感想を持ったようだ。一瞬、ぽかんとして顔を見合わせた後、いいカモだと判断したらしくニヤニヤした笑いを浮かべる。


「俺達が手伝ってやるぜ。」


 一人がにやにやしながら近づき、セリナが止める間もなく若様の肩に手をかけようとした。


「ちょ…。」


 セリナが「ちょっと待ちなさいよ!」と怒鳴ろうとした時、ことは起こった。何が起きたのか、すぐには理解できなかった。

 気がつけば、若様の足下に若者が転がっている。


「私の後ろから近づかないで。危ないよ。刺客に対処するように訓練を受けてるから、考える前に動いちゃったんだ。」


 若様はにこやかに物騒なことを口にした。


「し、しかく?」

「しかくって何だ?」


 若者達は目の前で起こったことに(おどろ)き、言葉の意味も知らなかったので聞き返した。


「うーん、そうだね、分かりやすく行ったら、こっそり人を殺すために送られてくる人のことだよ。大抵は訓練を受けているから、とても強いよ。」


 若様は大真面目に若者の質問に答える。だが、その真面目さがかえって恐怖をあおった。


「じゃ、じゃあ、お前、そのしかくってのに狙われてんのに、うろついてんのか!?」


 一人、気が利く若者が素っ頓狂(とんきょう)な声で叫んだ。


「大丈夫だよ、今はいない。」


 若様は慌てたように若者を宥めようとする。


「それに、私は屋敷にいるから、たまにはいない方が刺客の裏をかけるし、それに何より、ずっと屋敷にいる方がつまらないもん。ちょっと出かけてみたかったんだ。気晴らしに外に出ないとね。」


 若様は誰かに言い訳するように言いながら、うん、と一つ(うなず)いた。細い絹糸のような手入れされた髪が風になびき、どう見ても美しく愛らしい少女のようにしか見えない。


「若様……!」


 その時、道の向こうから張りのある声が聞こえた。見ると、別荘のお屋敷がある方向からやってきたようだ。


「フォーリ。見つかっちゃった。」


 慌てて振り返った若様がへへへ、と笑う。


「見つかっちゃったじゃ、ありません。お一人でお出かけなさらないよう、何度もお伝えしたはずですが。」


 護衛らしいフォーリと呼ばれた男は、二十代後半くらいだろうか。思わずセリナも若者達もフォーリを、そして、その後ろから追いついてきた集団を見つめた。全員が馬の尻尾の髪型をしている。その上、後から追いついた集団は全員、制服らしい同じ衣服を着て帯剣し、外套(マント)を着ていた。それだけで、田舎の村では物珍しく威圧感がある。


 思わずセリナと若者達は、互いに顔を見合わせていた。今は昔ほど、村人のサリカン人に対する気持ちは敵対心に満ちていないし、村娘達がお屋敷で働いて給金を受け取れるとあって、王子である若様の来訪を受け入れる気持ちが強いが、武器を持った武人に対しては警戒心が強くなる。


 当然、王子が来るのだからその護衛だということは分かっているのだが、どうしても警戒心は拭えなかった。


 それに、セリナを初めとした若者達は、多少なりの戸惑いもあったのだ。見慣れないサリカン人の衣装の武人達がいるだけでなく、彼らがみんなそれなりに顔立ちが整っているからだ。

 特にフォーリと若様に目が釘付けになってしまう。フォーリも若様とは違うが華やかな顔立ちの美丈夫だった。そのフォーリはやや眉根を寄せた(きび)しい表情で若様に声をかける。

 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                    星河ほしかわ かたり

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