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王太子の来村 11

 心に傷を負った美しい王子と、田舎の女の子の恋物語。

 恋から愛へ変化する―。

 二人の思いは成就するのか、それとも、指先から零れ落ちていってしまうのか……。


 この作品は『命を狙われてばかりの王子と田舎の村娘の危険な恋 ~けっこう命がけの恋の行方~』の設定を見直し、大幅に改変したものです。

 推敲しようとしていましたが、それに収まりませんでした。基本的な部分は同じですが、主人公セリナの設定が変わったため、変更を余儀なくされる箇所がいくつもあります。脇役達の性格や立ち位置もはっきりしたため、変えたい部分があります。

 もっと面白くなることを願って……。      

 

                               星河ほしかわ かたり

 チャリ、と音がして考え事をしていたセリナは作業台の上を眺めた。小銭がいくつか置いてある。


「ほら、小遣いだ、やるよ。姉さん達には内緒だぞ。いつも頑張っているからな。」


 オルがニヤリと笑って荷物を背負った。


「え、父さん、いいの?」

「ああ。この間、そのフォーリさんが蜂蜜を買ってくれただろう。その代金の半分を母さんがくれたんだよ。」

「へえ、母さんが?」


 セリナは(おどろ)いて目を(またた)かせる。


「びっくりしただろ? でも、今回は思いがけない収入だったし、お屋敷での給金もあるからって、半分くれたんだ。」

「ふふふ、そっか、ありがと、父さん。」


 セリナは小銭を握るとオルに抱きついた。しかし、荷物があるせいでふらついた。


「おっと、危ない。お前、いつまでも子供の頃みたいなことするな。大きくなったんだからな。」

「…ごめんなさい。」


 注意されたが、オルは本気で怒ってはいない。その証拠に頭をぽん、と軽く撫でられる。


「じゃあ、行ってくる。」

「気をつけてね、いってらっしゃい。」

「お前もな。一応、村一番の美人で通ってるんだから、夜は気をつけるんだぞ。」

「うん、分かってる。それに、若様に少し護身術を教わったの。そしたら、少し違うって後でフォーリさんが教えなおしてくれた。」

「そうか。だからって過信するなよ。」

「分かってるって。」


 オルは頷くと、片手を上げて山に行く小道に向かった。

 それを見送ってから、セリナは手の中の小銭を握り直す。チャラ、と少しだけどお金があると気分が良い。


(このお金、どうしようかな?)


 うきうきとセリナは考えながら家に入った。それにしてもフォーリも親衛隊も、村の者から一度たりとも無償で何かを受け取ることはなかった。

 若様の食料調達のため村人から野菜を買っていたし、鶏だって買っていた。その買った鶏に卵を産ませて、その卵を調理に使っている。鶏の世話は親衛隊の兵士と動ける時は若様が行っていた。ちなみに若様は鶏にいつも嬉しそうに草をやっていた。

 必ずお金を払ってくれていたが、少し複雑な気分にもなる。若様達は決して贅沢(ぜいたく)をしていない。身ぎれいにしてはいるものの、若様をはじめ、フォーリだって親衛隊だって、何でも自分達で用意してこなしているのだ。


 もう少し、若様達にお金をやったっていいじゃないの、と思うと同時に自分達が汗水流して働いて収めた税金が、こうして回っているのかと思うと、少し腹立たしいような変な気分になる。いや、意地悪してくる領主よりましか、とセリナは思い直した。


 義理堅いとは思うが、このお金の出所を思うと、結局は国民の税金から出費しているんでしょ、とセリナはジリナに言ったことがあった。すると、ジリナに説明された。王室の財政は全くの別物で、税金は一切使われないのだという。ジリナ曰く、王室はいくつかの金山を所有しており、その利益で財政を賄っているらしい。


『じゃあ、そのお金があるのに若様達が貧しい思いをしているのは、国王様があげてないからってこと?』

『それもちょっと違うね。本当は国王様は若様にあげているんだよ。でも、それをちょろまかしているのが、ご領主様なのさ。』

『は?』


 セリナは思わずジリナを(にら)みつけるように凝視(ぎょうし)した。


『わたしを睨んだってしょうがないだろ。』

『そうだけど。』


 つまり、若様を療養させる限り、王から若様に生活費が支給される。それは、世話をする貴族を通して与えられるため、その生活費をちょろまかしたいために、若様の療養のために名乗りを上げたのだという。


『なんで、そんなことするのよ、そんなことしたら、若様の生活費をちょろまかすの当たり前じゃないの…!』


 すんでの所で、王様って馬鹿じゃないのと大声で叫ぶのを堪えた。


『国王様だって、分かっててそうしてんのさ。』

『はあ?』


 セリナには全く意味が分からない。


『だったら、そんなことしないで、最初から若様にあげなきゃいいじゃないの。ちょろまかされるって分かってんだから。』


 鼻息も荒くセリナが言うと、ジリナに笑われた。若様はセルゲス公なので、身分に即した財産を分け与えねば、貴族達からの不評を買うという。八大貴族のレルスリ家がそういうことには生真面目なので、徹底しているらしい。


 会話ごと、段落ごとに改行すると空白が大きすぎる気がしますが、スマホで読む場合は楽なのでしょうか……。わたしは改行が多いと面倒だと思うたちなので、よく分からないのですが……。


 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                              星河ほしかわ かたり

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