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王太子タルナスの回想 2

 王太子のタルナスは行動力があります。


 心に傷を負った美しい王子と、田舎の女の子の恋物語。

 恋から愛へ変化する―。

 二人の思いは成就するのか、それとも、指先から零れ落ちていってしまうのか……。


 この作品は『命を狙われてばかりの王子と田舎の村娘の危険な恋 ~けっこう命がけの恋の行方~』の設定を見直し、大幅に改変したものです。

 推敲しようとしていましたが、それに収まりませんでした。基本的な部分は同じですが、主人公セリナの設定が変わったため、変更を余儀なくされる箇所がいくつもあります。脇役達の性格や立ち位置もはっきりしたため、変えたい部分があります。

 もっと面白くなることを願って……。      

 

                           星河ほしかわ かたり

 父のボルピス王を出し抜く事ができたのは、ひとえにフォーリのおかげだった。

 タルナスは王太子となってから、ずっと護衛についてくれるニピ族を探していたが、なかなか見つからなかった。ニピ族は自分で仕える主人を決める。両親が正当でない方法で王と王妃になったため、子供のタルナスにもなかなか忠誠を尽くして仕えてくれるニピ族が現れなかったのだ。

 でも、タルナスはどうしてもニピ族の護衛を必要としていた。必ずやりたいことがあった。本当なら王太子の立場さえいらないと思ったが、その目的のためには必要だったので不服でも立太子を受けた。その地位でないとできないことだったからだ。


 なかなか面接までこぎつけなかったが、ある日、会ってくれるというニピ族がいるというので、タルナスは緊張しながら覚悟を決めて面接に臨んだ。

 基本的にニピ族との面接は二人だけで行われる。ニピ族は王族の暗殺は行わない約束を大昔にお互いに結んでいるからだ。しかし、母のカルーラ王妃はニピ族が嫌いなので、二人だけの面接を渋った。しかし、それは絶対に困る。母のせいでニピ族の護衛がつかなかったら困るのだ。

 断固として母に抵抗していると、父のボルピスがやってきた。何はともあれ王である。慣習通りにやるようにと一言で母を黙らせた。父とは対立してばかりだが、今回ばかりは助かった。

 そうして、ようやく面接にこぎ着けた。二人だけといっても油断はならない。あの母のことである。きっと、様子を(うかが)わせているに違いない。


 タルナスは緊張しながら部屋に入った。二十代の見た目のいい青年が立って待っていた。こんな人に護衛して貰えたら嬉しいと思うが、同時に今はこの奇特なニピ族に必ず護衛して貰わなければならなかった。

「…初めまして。私は王太子のタルナスだ。面接を受けてくれて、とても嬉しい。」

 タルナスは緊張のあまり声を震わせながら挨拶をした。相手は礼のお手本のように美しく整った礼をした。

「初めてお目にかかります。私はフォーリと申します。」

「フォーリか。一つ聞きたいことがある。なぜ、私の護衛の面接を受けてくれようと思ったのか。私は両親のせいで、八大貴族にも議員にも民にも憎まれて恨まれている。その答えを聞きたい。」

 タルナスは緊張のせいで息が上がり、はあはあ肩で息をしながら尋ねた。

「殿下。その前にまず深呼吸をなさってください。そうなさいましたら、お答え致します。」

 思わずフォーリの顔を見上げると、じっと様子を見ているので言われた通りに深呼吸した。さらにもう一度と言われ、結局、三回ほど深呼吸をした。深呼吸をすると確かにさっきの震えは収まっていた。

「殿下。先ほどのご質問にお答え致します。両親の罪と子供の罪は別だからです。親は親であり、子供は子供です。」

 フォーリの答えにタルナスは胸をつかれた。思わず涙が出そうになって慌てて横を向き、腕涙を拭った。両親がグイニスに罪を着せて以来、どの目もずっと、お前も親と同じで不当にその地位に就いたと無言で責めていた。一年半近くその目線に耐えてきたがとても辛かった。


「殿下。私も一つお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 タルナスは慌てて、フォーリに向き直って頷いた。

「殿下には何か成し遂げたいことがおありですか?」

 後で思えば、フォーリはタルナスの様子から推測を立てたから、こんな質問をしてくれたのだろうと思う。それはタルナスにとって、とても答えやすい待っていた質問だった。

 タルナスは答える前に、入り口の扉をちらりと見やった。それを見たフォーリが静かに入り口の扉を開けた外の様子を(うかが)い、戻ってくると衝立を部屋の角に動かした。さらに、もう一つあった衝立も動かし、内密に話ができる空間を作ってくれた。

「ここならば、小声で話せば外にはほとんど聞こえないでしょう。」

 入り口を見た、たったそれだけの動作でここまでしてくれたフォーリに、タルナスは嬉しくなった。


「お前の質問に答える。私には必ずやらなければならない事がある。それは、まずグイニスを助け出すことだ。必ず助けなければ、両親にあの子は殺されてしまう。

 それには、グイニスがどこに監禁されているかを調べなければならない。一応、当てはある。母上の動きを確かめると、時々、誰にも言わずに姿を消すことがり、その時におそらくグイニスの部屋に行っていると思われる。

 だから、母上の後をつけ、具体的にどこに監禁されているかを調べる。どの辺りに行ったかが分かるだけでも、見当をつけられる。幸いなことに母上は、ニピ族が嫌いでニピ族の護衛をつけていない。」

 タルナスはそこで言葉を区切り、上着を脱いで服の帯を解いた。さらに帯の端をめくり、芯を抜いて、芯の内部から地図を数枚取り出した。

「見てくれ。これは王宮内部の地図。そして、これは地下通路などの地図だ。さらに昔の地下通路の地図と王宮内の増築がされる前の地図。これらは厳密に保管され、簡単に閲覧できる物ではないが、王太子の特権を利用して地図を写した。これらの地図を手に入れるために私は王太子になった。」

 ただ、問題があった。それらの地図は父のボルピスも知っているという点だ。しかし、地図を毎日見ていたタルナスには、確信めいたものがあった。地図には何カ所か不明な点がある。おそらく、隠し通路などがあるだろうということだ。

「だが、それらの隠し通路を把握している可能性の高い者には目星をつけた。」


 物語を楽しんでいただけましたか?

 最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


                           星河ほしかわ かたり

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