第9話「陰謀」
ここは魔王城の中心部。魔王軍大幹部『四天王』の会議室。
4人が円卓の机に座し、睨み合っている。
「で?今世の勇者ってのはマジで見つかったのか?」
男が開口一番に本題を切り出す。
その名は『豪炎』のラルバ。真っ赤に燃え盛るような赤髪と鼻の上にある傷が特徴、敵兵を持ち前の豪炎で骨すら残さず死亡させる。そんなイカれた男だ。
「本当に合ってるんだろうな?」
ラルバは対角に座る獣人を腕を組みながら、睨みつける。
「本当ですよ。しかもサノラ村…私たちはついてるんですね。」
獣人…四天王の一人。『操獣』のケルビンが問に答える。ケルビンは一見おっとりしたような雰囲気をしているが、勇者を殺せるという狂気の笑顔が見え隠れしている。
ケルビンは高らかに笑い、狂気を孕んだ顔を揺らしている。
「笑い過ぎだぞ。静かにしろ。」
淡々と話すのは『黒騎士』のダグラス。
2mを超える大きな身体を黒甲冑で隠し、背中に大剣を携える声色の低い男である。
そして、最後に残った異形が思念を音にする。
「それで確証はあるんですか?」
異形は顔のパーツが無いがそれ以外は普通の人間と大差ない。彼の名前は『念力』のイグザムである。
そして、イグザムの質問にケルビンは口に指を立て答える。
「企業秘密です。だが、やる価値はあるでしょう?サノラ村だったら帝国も関与しません。だから、安心安全です。」
3人は沈黙を貫く、正直魅力的な提案だ。
勇者と魔王…人類と魔族は何年も続いている。その戦争の唯一の主戦力を安全に潰せる機会なのだ。嘘の可能性があるとしてもサノラ村奇襲はマイナスになることはない…やる価値はあるのだ。
「では、明日にサノラ村に侵攻するので、その時に会えることを願ってますよ。」
悩んでる3人に対して、ケルビンは一言伝えるとその場を後にした。
…
一方、アルリタ帝国の教会
神父が祭壇に祈りを捧げている。
「ああ、神よ。血塗れの悪魔から我等を救いたまえ。」
そうすると辺りが揺れ始める。
神父は驚きながらも耐えながら祈り続ける。
すると祭壇の上空が光り始める。
辺りの光が離散すると、そこには5mを超える狼がいた。
神父を見るなり、質問を投げかける。
「人の子よ、貴様の言う血塗れの悪魔は何処にいる。」
「神様ですか?あぁ、なんと凛々しく神々しい御姿。70年生きて今一番の僥倖を噛み締めております。」
神父は敬愛し、ひれ伏す。
しかし、奴はお構い無しに質問を続ける。
「人の子よ、我は神の使い、神獣のフェンリルだ。貴様の御託はいい。さっさと情報を吐け。」
「で、でしたらアルリタ帝国と魔族領の国境付近にいるとされています。」
フェンリルはそれを聞くなり、直ぐ様、教会を飛び出した。
神父はフェンリルが出てきた空間を眺めながら、
「神ですら血塗れの悪魔を危険視するのですか…」
そう呟いた。
…
フェンリルはアルリタ帝国の国境付近の森を駆け巡る。
走りながらフェンリルは思念を他の神獣に飛ばす。
「血塗れの悪魔の排除は我等が創造主のノア様の指示だ。貴様らも来い!」
…
その瞬間、海洋都市ルルイエとマグラム火山から神々しい光の柱が現れる。
「血塗れの悪魔…さっさと殺し、眠りにつく。」
「ノア様に逆らう者は消し炭だ。」
この後、この神獣達が歴史に名を残す大事件の足掛かりを作ることとなる。