第52話「"勇者候補"と"勇者の師匠(仮)"」
ーー数分前、俺達は闘技場の控え室にいた。
俺はクソだるいことに首を振ってしまったのだろう…今更だけど、棄権したい…まぁ、今回はアリアのメンツもある。真面目にはやろう。
「なぁ、さっさと終わらせても良い?」
「…あまり得策ではないかと…」
「ん…なんで?」
「それは貴方様が危険認定されて排除の対象に成り兼ねません。」
「それぐらいなら…」
「アリア様も勇者の任から外されるかも知れません。」
…そうか、そりゃそうか。危険人物…ましてや人類の敵と認識された奴の弟子が勇者になんてなれるはずが無い。
…ちょっと待って、これって…
「負け戦じゃない?」
「はい…挑戦を受けた時点で厳しい状況にいると思います。」
俺はクソデカ溜め息を吐く。やらかした…目先の事に怒り、後先考えない…悪い癖だ。
俺は自分を戒めるために頬を叩く。
…痛い…"感じるだけマシだな"… "感じる"…?
「これだ。」
あるじゃねぇか。一発逆転の一手が…
ーーー「おい、聞いてんのか、クソ魔族。」
「あー、聞いてるよ。始めていいよ。」
闘技場に立った俺は不遜な態度で彼らを見つめる。
リッカは周りに手を振っていたが、辞め、俺に剣を向ける。
「魔族は殺すよ。全てね。」
彼の言葉を皮切りに全員が俺に飛びかかる。
始めに来たのはシュナイゼルだ。
「死ねぇ!クソ魔族!」
横一閃の攻撃…流石は勇者パーティ剣士…キレはあるな…まぁ、"勇者と比べたらカス"だが。
俺はその横一閃を肘でガードする。
すると、
パリン
脆い剣はすぐにへし折れた。
シュナイゼルは動揺しながらもバックステップ…
たかが"バックステップ" …俺の間合いから逃げられるはずがない。
俺はすぐさまシュナイゼルの喉を掴む。
「ぐ…手を…離…せ…ぇぇ…」
みるみるシュナイゼルの顔の色が赤から青に変わってゆく。リトマス紙みたいだな。
「ふっ…」
すると見かねたのか、タンクが俺の目の前まで来て盾を突き出す…"シールド・アタック"か…だが、その盾、ちょっと耐久が足りねぇな。
俺が左手で盾を受け止める…直後、盾は粉々に砕けた。
そして、そのまま左手でタンクの首を持つ。右手にはシュナイゼル、左手はタンク…両手使うのは怠いな…
魔法使いと僧侶は何も出来ない。
当たり前だ。"仲間は攻撃できない"し、"傷を負わなければ回復は使えない" 。
…となれば、残るは一人。
「…君はとても強い魔族のようだね。だけど、負けないよ。勇者の僕が殺してあげる。」
リッカ…一番絶望に染めたいのはテメェだ。
俺の指が誤って力が篭もる。…危ね、首へし折るところだった。
俺がリッカから一瞬目線を外した…そして、目線を戻すと既にリッカは間合いを侵略していた。
選んだ技は横一閃!?
しくった…こいつ、仲間どうでもいい系だ。
まぁ、避ける義理はない。
次の瞬間、血が舞う…その血はシュナイゼルとタンクのものだ。勿論、俺が両手に持っていて、攻撃範囲内にいたからな。
「お前…割とドライなんだな。」
「ん?ドライ?何言ってるんだい?あー、攻撃のことかな?」
次の刹那、奴の本性が垣間見える。
「しょうがないよ。だって、悪を倒す為なんだからね。勇者なら悪を殺さないといけないだろ?」
わーお、これが勇者候補か、世も末だな。
「例え仲間を斬っても?」
「しょうがないよ。そういう運命だ。」
そういう解釈するか…狂ってんなぁ。
…さて、ここからだ。
「お前…気付いてるか?」
「…?」
リッカはポカンと頭にハテナを浮かべる。
教えてやろう、格の差を…
「俺、一回もこの場所動いてないぞ。」
「それがどうしたの?」
「動いていいか?」
「勝手にし…」
「ありがとな、とりあえず、こいつらここに置いとくぜ。」
俺はリッカの横をすり抜け、出血と窒息で意識を失ったシュナイゼルとタンクを闘技場端に置く。
闘技場にいた全員が度肝を抜かれる…当たり前だ。人間の動体視力を凌駕したスピードを披露したのだ。
全員が冷や汗を流す。
「驚くのは早いぜ。じゃあ、今度は魔法を使うとしよう。」
直後、俺はバカでかい火の玉を生成する。
数秒後、俺の火の玉に慌てて魔法使いが究極奥義を披露する。
「"メテオ・ドライブ"!!!」
次の刹那、空から隕石が降り落ちる。
これが"勇者パーティの魔法使いの力"か…
…あまりにもお粗末。
「ファイヤーボール、超手加減だ。」
俺が叫ぶと同時、火の玉が更に大きくなる…その大きさは隕石以上。
そして、隕石と火の玉がぶつかる…相殺か…いや、俺の圧勝だ。
火の玉が隕石を包み込む…その光景を見た魔法使いは膝をつき、"絶望する"。
いいぞ、その顔が見たかった。あれ?俺悪の素質ある?
「ほ、"ホーリーレイン"!!!」
動揺した僧侶も渾身の必殺技を放つ。光の矢か…聖なる力も篭っている…だが、俺はあえて真正面から受け止める。
俺と光の矢がぶつかる…次の瞬間、光の矢が崩れ、その場で四散する。
「そうだな…俺も面白い魔法見せてやるよ。」
ここまで相手の本気を食らったら、それ相応で返してやるのがお礼だ。
「闇の光の根源魔法"ゴッドネス・ブラッディ・レイン"!!!」
突如、空間が切り裂かれる、そこから現れるは白い女神…そして、その白い女神が自分の皮膚を切り裂く、すると、そこから多量の血が滴り落ちる。
僧侶はその姿をみた判断する…"直撃は死ぬ"と
「"ホーリー・エリア"!!!」
すると僧侶の周りを光が取り囲む。だか、その結界は一瞬にて崩れ去った。
血が触れた次の瞬間、結界は消滅、その血が僧侶に降り掛かる。
すると僧侶は叫ぶ散らす。当たり前だ。その血には狂乱させる効果がある。まぁ、もっとヤバいのは"敵"と認識した奴を溶かす効果がある。
"即興"で作った魔法にしては良いだろう。
さてと、正真正銘後は一人だ。
「リッカ、かかってこいよ。お前の渾身の一撃を俺に食らわせてみろ!」
「うるさい魔族です。殺してあげるよ。」
瞬間、リッカが凄まじい踏み込みを見せる。
だが、俺からしたらお前らの攻撃は遊戯…所詮お遊びだ。
俺は奴の剣を避け、カウンターの拳を繰り出す。すると奴は見事に吹っ飛んでいった。
「…悪には屈しな…ゴフッ…」
俺は辛うじて立った奴にトドメの一撃の拳を繰り出す。
そして、俺は叫ぶ。
「つまんねぇな!!!本気の殺し合いを見せてやろう!召喚"バハムート"!!!」
そう叫ぶと俺はワールド・ディザスター級のバハムートを眷属召喚する。
バハムートはスイパラの途中だったんだろう、明らかに不機嫌だ。
だが、俺は奴の喜ぶ言葉を知っている。
「バハムート!"喧嘩"をするぞ!」
「なにぃ?ホントか!?やるぞぉ!久々に昂ってきた…この気持ちは昨日、ドラマで犯人を当てた時以来だ。」
「わりと最近じゃねぇか。」
俺はツッコミを入れながら、バハムートの打突を受け止める。やはり強い…前よりも速くなってる。
身体能力なら"俺以上"かもな。
突如、神速をも超える殴り合いが勃発する。
その姿を辛うじて見えるのはアリアのみ…いや、アリアも厳しいんじゃないかな?リリネはもう目を回している。
「…これが倒すべき悪…悪…倒す…べき…べき…」
リッカもその様子を見ていたが、俺達の攻防を見て意気消沈、顔は"絶望"に染まっていた。
…目的は達した。後は…
「もういいぞ、バハムート。」
「辞めむ、貴様と本気で殺り合える喜び、この気持ちを今は失いたくない。」
「はぁ…ですよね。」
俺とバハムートは一進一退の攻防を続ける…戦闘は終わったのは1週間後、アカデミア内で起こったこの死闘は"アルリタ帝国一の死闘"として歴史に残ることとなる。
ちなみにワールド・ディザスター級同士が街中に死闘するのはこれが初である。




