第51話「だから"人間"が嫌いだ。」
平和な時間は過ぎてゆく。
…一月が経った頃だ。
「師匠、アカデミアに来て!」
「は?」
ーそれは唐突な誘いだった。
「いや、行かねぇけど…」
「やだやだやだやだやだやだ!行くもん!行くもん!」
子供がぁ…クソガキがぁ…ホント誰の影響なんだろうな…
…ニーナの視線が痛い…俺は師匠なだけで…俺の影響じゃない。…てか、俺師匠って言っても口しか出していないし…てか、俺こんなに暴れないし…
俺は溜め息を吐きながら、アリアの駄々こねる姿を眺めていたら、リリネが口を挟んできた。
「すみません、行って貰えませんでしょうか?帝都の美味しいスイーツは知ってますよ。」
「いや、そういう問題じゃ…」
「いいじゃない。最近闘い三昧で疲れたでしょ。」
「そうだな。我々は頑張り過ぎておる。暫しの休息も必要だろう。」
俺が断ろうとしたその時、バハムートとニーナが俺の口を強引に締め、前に立ち、言葉を発する。
こいつら…スイーツのことしか頭にない。
よし、ここは忠告しておこう。
「お前ら太…」
「「何か言った?」」
「何も…」
怖ぁ…俺はバハムートとニーナの圧に屈し、ついて行く羽目となった。あぁ、マジで最悪。お前ら太…いや、なんでもない。
…
アリアの通うアカデミア、『帝国立アルリタアカデミア』に着いた。
「てか、ニーナとバハムートは?」
俺はアカデミアに着くなり、リリネに質問を投げかける。
おいおい、まさか…あいつら…
「カフェの場所を伝えたら向かいましたよ。」
アイツらが無理矢理連れて来たんだぞ。なのに自分はスイパラ…世の中は理不尽だ。
…と、それとは別に気になることがある。
「てか、リリネ敬語じゃん。何か心変わりがあったのか。」
そう、リリネは最初俺に敵対意識を向けていた人物だった。時には武器を向ける時もあった。
そのリリネが俺に頭を下げる。
「今まで不遜な態度を取って、すみませんでした。貴方様のご活躍…陰ながら見させて頂きました。何度も何度も私達を救う姿…私の憧れの勇者の様でした。」
「別に他人の為に救っちゃいねぇよ。俺が楽したいから救ったんだ。"結果的に"そうなっただけでな。」
「…分かりました。そういうことにしておきましょう。ささ、中へ、案内致します。」
俺はリリネと言葉を交わしながらアカデミアの門を潜った。
"そういうことにしておく"って…本当なんだけどな。
アカデミアの中に入るとそこは凄まじいの一言しか出なかった。
校舎は綺麗な白色…ドアは全て自動ドア、案内ロボットはいるし、巨大な闘技場はあるし、その闘技場の様子をスクリーンで見れる。
所謂最新の施設ってやつだ。
このイメージは無かった。最新の方が楽ができる。
勉強しがいがある。早速イメージして想像魔法で作ろーーー
「おいおい。なんで魔族がここにいる。」
一人の男が話しかけて来た。
この男…見覚えがある…だが、名前が出てこない。
確か…俺の喉元に剣を突き立てた…
「シュナイゼル…彼はアリア様の客人として来ている。無礼な真似はよしてください。」
するとリリネが俺を庇うように前に立つ。
こいつ、ホント変わったな。
「うるせぇリリネ。こいつは魔族、駆逐されるべき種族なんだ。邪魔立てするようなら殺すぞ。」
シュナイゼルがリリネの喉元に剣を突き立てる…その瞬間、シュナイゼルの剣が宙を飛ぶ。
シュナイゼルが飛んだ原因を指差した。
「てめぇ、アリア。よくも俺の剣を!」
そう、アリアがシュナイゼルの剣を瞬時に蹴り飛ばしたのだ。
流石は勇者…判断が速い。
「私のお友達に剣を向けるのは辞めて、危ないでしょ?」
アリアは険しい顔でシュナイゼルを見る…リリネを守るその姿はまるで勇者…まぁ、勇者なんだけど…
「アリア…貴様…誰に向かって蹴りを入れた?」
シュナイゼルの顔がみるみる赤くなる…その影から、一人の男が出てきた。
「シュナイゼル、落ち着いて。君の言い分は合っている。魔族は死ぬべきだ。アリアちゃんの師匠だとしてもね。」
「リッカ…当たり前だ。俺達の考えは合っている。」
リッカ…聞いたことがある。新たな勇者候補…アリアが気分屋で師匠が魔族だから勇者としての立場が悪いから、新たな勇者を担ぎあげようとしている…らしい。
「ねぇ、君が魔族?人間みたいな見た目をしないでよ。気持ち悪い。」
リッカは笑顔で俺の方を見る。
…笑顔で眉ひとつ動かさず悪口って…変わってるな。
「そうか、見た目似てるんだし、許してくれよ。」
俺は冗談交じりにリッカの前に腕を差し出す。
と同時、リッカが俺の手を跳ね除ける。
「本当に気持ち悪い。魔族は滅ぶべきです。」
イラッ…としたけど、抑えて…ふぅ、争うことはない。俺は楽に生きたいからな。
「本当に魔族が師匠のアリアちゃんもどうかしている。」
「…おい。」
お前それアリア侮辱してるんじゃねぇか。反応が無かったら攻撃の対象を変える…"だから人間は嫌いな
んだ"。
「…おいクソガキ…お前の土俵で闘ってやる。」
「ん?」
「手加減してやるって言ってるんだ、クソガキ。」
…こうなる事が分かっていたかのようにリッカは提案を投げかけた。
「じゃあ、闘技場行こうか。僕達…勇者パーティで君を殺す。」
「勇者はアリアだろう。気が早いぞ、この野郎。」
このガキには分からせる…誰の弟子を馬鹿にしたのかということを。




