第45話「耐えた自分」
日向は"第一の人生"で俺に虐めた人物だ。
俺と日向は小学校から一緒だった。彼は小さき時から人気者だった。対して俺は日陰者。立場は明白だ。
「お前、ホントに何にも出来ないんだな…」
「…。」
「けっ、無視かよ!覚えてやがれ!」
俺は散々やられた…靴に画鋲…頭から水入りバケツ…古典的だったが、幼い俺の心を枯らすには充分だった。
誰も助けてくれない…先生だってクラスの皆だって、イジメは知っていただろう。
…だから人間は嫌いなんだよな…誰も"無益"で助けないから…
さてと、昔の話は終わりだ…
「蝦夷町日向…俺の平和的時間を奪いに来たのか?」
「蝦夷町様だろうが?ボンクラソウヤ!」
…残念ながら…昔の俺は昔の俺…今の俺は今の俺だ。
「日向…お前の顔は見たくない。」
俺は日向の顔を鷲掴みにし、握力で潰しにかかる。
もう死んでくれ。
「グゴォ…"握力強化"!」
だが、そう簡単には死んでくれない。日向は俺が握る手を強引に外そうと企てる…
…恐らくスキル関係で力を底上げしてるな…
…いいだろう…仕返ししたいしな…
俺は顔面を握る手を外す。
すると、奴のひしゃげた顔が露となった。
しかし、奴にそんなことを気にする暇はない。
「オラァ!"筋肉強化"!"骨強化"!」
日向の体は筋骨隆々な男へと早変わり…なるほど、これが全力か…
「おい!一発打たせてやるよ!かかってこいッ!」
自信満々だな…けど、それじゃ俺に勝てない。
俺は渾身の一撃を奴の腹部に叩き込む…
「グフォ!?」
すると、耐えきれなくなった体は悲鳴を上げ、あちこちの骨をへし折り、体をあらぬ方向へ向けながら転がり回る…
岩に激突してようやく止まる…その時には日向の体はもう原型を留めていなかった。
だが、日向は死んでいない…俺はトドメをさそうと左手に槍を生成する…すると、日向は醜くも命乞いを始めた。
「許してくれ…悪かった…助けてくれ…」
「なぁ…お前は何人いじめたか知ってるか?」
「え?」
「5人だよ…俺で6人目だ。」
「それがどうしたんだよ?何の関係が?」
まだ分からないのか…理解の乏しい奴だ。
「5人の人生をお前は潰したんだ…殺したも同然…5人殺した"殺人鬼"には"罰"をあげねぇとな…」
俺は左手を槍を振りかぶる…すると、日向は最後に泣き喚く…
「なんだよそれ!私怨だろうがァ!」
「私怨だよ。…俺はずっと耐えてきたんだ。」
あれ…これは心の内にしまうはずだったのに…口が勝手に
「これ以上犠牲者が出ないようにずっと耐えてきたんだ。どんだけいじめられようがな…地獄を見る人間が少ない方が良いって思ったからよ!」
分かってる…こんなのただの自己満足でやってたこと…こいつに言ったってなんの解決にもなりはしない。
だけど…認めて欲しかった。
俺は耐えてる…偉いって…
「俺は凄いんだ…テメェに十数年間ずっといじめられ、他の子に標的がいかないように頑張ったんだ!」
俺は日向の胸に槍を突き立てる…奴はすぐに死んだ。
俺はただ日向の死体をジッと見つめる…
「天罰だ…お前の罰だよ。」
あれ…俺はなんで…"涙を流しているんだ?"
俺は涙を拭い、その場を立ち去ろうとする…
「アンタが他人のために頑張ってたなんて初めて知ったわ。」
すると、物陰からちょこんとニーナが出てくる…くそっ…見せたくなかった。
「気まぐれと戒めだ。それに俺はそんなできた奴じゃない。」
俺はただの糞だよ…元は何もしてないニートみたいなもんだからな。
俺は死体を燃やし、仏に向かって手を合わせた。




