第37話「前哨戦」
「これで殺すべきはフェンリル、血塗れの悪魔、バハムート、"神龍"のみか。」
"紅"はフェニックスと書かれた字に被せるようにばってんを付ける。 よく見るとその下にあるリヴァイアサンもバツが付けられていた。
「俺に感謝しろよ。リーダー。俺がフェニックス殺したんだからな。」
そういう"漆黒"の目は左目が紅に染まっている…彼の左目は金色の色から変化をしていた。
「…感謝する。それで、"蒼"は帰ってきていないか?」
「死んだんじゃないですかい?」
そんなやり取りをしていた…刹那…突如として地面が揺れる…
「来たな…フェンリル!!!」
"紅"は口角を上げる。彼女は心から戦闘を愛していた。
対する"漆黒"は気だるそうにする…
「待っていろ!私が殺してやる!」
"紅"は勢いよく扉を開け、部屋から出て行った。
それを眺める彼はボソリと一言呟いた。
「もう"奪った"から興味無いんだよなぁ…」
アジトの外まで既に戦闘が始まっていた。
白い制服達…神の信徒はバッサバッサと倒されてゆく。
「弱い。リヴァイアサンやフェニックスはこんな輩に殺されたのか!!」
フェンリルは牙を剥き出して声を張り上げる。彼女の声には凄まじい程の怨嗟が混じっていた。
そんな暴れる巨大な狼を見下ろしていたのは…
「へぇ、やるね。私の"子"の出番かな?」
"翡翠"…深緑の髪に紫色の目…普通の信徒と変わりない強さ…だが、彼女を"異質"と言わしめる要素が隣にあった。
「グルルルルルル…」
隣にいる謎の生命体…彼女はそれを操っている…
「一緒に行きましょう。"チー"。」
「グワァ…グルルルルルル…」
彼女の質問に応答するとすぐさま建物の屋上から飛び降りる。
ドゴォォォォォン
砂埃が舞う…突風が突如として現れる。
「グウォォォォォォォォォ…」
その中心にいたのは何とも形容し難い緑色の化け物だ。
「ウォォォォォォォォ!!!」
化け物は辺りを気にせずに暴れ始める…が、すぐにそれは止められた。
「辞めよう。"チー"。殺すのはあの狼だよ。」
知能があるのか"翡翠"の言うことに従い、フェンリルに牙を剥く。
「グルルルルルル…グウォォォォォォォォォ!!!!!」
繰り出されるは全体重を掛けたタックル。化け物は巨大だ。食らったらひとたまりも無い。
「だが、動きが直線的…避けることなど造作もない。」
彼女が横に1歩踏み出そうとした…その時…
「"グリーン・バインド"」
"翡翠"が叫ぶ。すると地面からツタが生え、フェンリルを拘束する…力任せに外そうにも外れない。その間にも化け物は突進している…
「グウォォォォォォォォォ!!!!!」
化け物は拘束されたフェンリルへとタックルを決めた…その衝撃でツタが外れる。フェンリルは威力のせいで転がり続け、木々にぶつかり、回転を辞める。
「クソッ…骨が折れた…」
フェンリルは立ち上がるもののその姿はあまりにも不格好だ。
"翡翠"は笑い声を上げる。
「ウフフ…やっぱり神獣って大したこと無いんだね。」
「貴様…やはり貴様らは万死に値する…」
フェンリルは強がりを見せるも自身の折れた前足を見ながら考える…増援が来る可能性がある限り…圧倒的不利は自分だと…
(クソッ…これなら"アイツ"の力を借りれば良かった。)
悔やんでいる中…フェンリルは新たな魔力を感じる…それはどれも"異質"…桁違いのものだ。
恐る恐る視線を上げる…そこには
「あれ〜?神獣ちゃん。もうピンチっぽい?」
「つまらん、やはり神獣はたかが神獣か…」
「そう言うなよ。"紅"ちゃん。向こうも必死に戦ってるんだからさ…」
"山吹"、"紅"、"琥珀"…どれもリヴァイアサンと戦える程の力を持つ強者…
その時、フェンリルは絶望に支配される。自分が勝てる可能性は万に1つもない。
…だが、フェンリルは最期の力を振り絞る…"無駄"…と言われればそうかも知れない…だが、自分は"神獣"だ。命を賭して人間達を守るために生まれて来た。その覚悟や思いは貴様らとの格が違う…そう知らしめたい…彼女は最期の欲望を叶える…はずだった。
「よう、やってるか?」
フェンリルの背後から声が聞こえる…それは最近になって聞き始めた声だ。
「…ソウヤ?」
「大正解。さてと、神の使いを名乗る者たちへの質問です。」
俺はフェンリルの前に出ながら質問を投げかけた。
「君達は後何分で死ぬでしょうか?」
俺はニヤリと口角を上げる…だが、俺の行動を真似するように口角を上げる者が1名居た。
「ほう、貴様が"血塗れの悪魔"か…丁度いい。殺してやろう。」
"紅"は最大限まで力を上げる。ここから始まるのは"戦闘"ではない…"殺戮劇"だ。
俺は奴等に"絶望"を教え込む。




