第30話「無言の約束」
僕は守らなければならない
僕はみんなを助けなければならない
そういう運命…気持ちを抱いてしまったから…
何時だったか…1000年以上も前のことは基本忘れてる…けど、この思い出だけは覚えていた。
昔、凶悪なる魔王がいた…僕達、神獣が束になっても構わない魔王がいた…暴君だった…自身の部下6人と一緒に世界を壊し始め、世界の平和が崩れかけた…僕は神の子ながら神を呪った…恨んだ…
僕はその時から戦うのを辞めた…
何故痛い思いをして戦わなければならないのか?
何故他人を守りながら戦わなければならないのか?
何故死と隣り合わせになりながら戦わなければならないのか?
僕は逃げた…他の3人の神獣を見殺しにして…特段生きたい理由など無かった…ただ…死にたくなった…
だが、そんな弱い奴…生き残れるはずがない…
「…感覚がない…もう終わり…な…の…かな…」
僕は魔王の遣い2人と熾烈な争いを続け、とうとう魔力が底をつき、僕はやられるがまま…体を分断され…内蔵は腹から少し出ていた…
もう死ぬ…誰だって分かる…その2人は僕の消えゆく魂の姿を見ると去っていった。
その間にも訪れる1人での静寂な時間…長かった…何時間も経ったかのように…途絶えそうな意識の中、誰かが大きい声で叫んだ…
…数刻が経っただろうか…僕は五体満足で目を覚ました…こんなはずは無い…だって僕は確かに奴等に八つ裂きにされ、殺されたんだ…辺りを見渡す…するとそこには何百人もの人間が倒れていた…死んでいた…魂が抜けたかのように…
「なんで僕に蘇生の術を…僕はもう君達を守ることを放棄した奴なのに…」
僕は人型の姿をとると、遺体を全員綺麗に埋めた…
木々の間から朝日が照らす…まるで死んでいった人達を優しく包む聖母の光…
「あぁ、この人達は僕に期待したんだ。」
朝日から目線を下げるとそこには海に囲まれた立派な都市…海洋都市ルルイエの姿があった。
「…僕は託されたのか…人間ってこんなにも素晴らしい生き物だったんだ。」
僕は神様の命令から仕方なく人間を悪意から守ってきた…そんなことは無意味だと思っていた…何も意味をなさないと思っていた…違った。
"人間は命を使ってまで僕に期待した"
この意味は僕の中では大きかった…僕は人間達に生きる理由を教えてもらった…
「人間達は自分の命を使ってまで僕に期待した…この街ぐらいは守るかな…」
弱い自分の出来る範囲でコツコツと街を守ろう。僕は人間に命を助けられたんだ…恩を返さないといけない…違う…恩を返したい…僕に生きる意味を教えてくれたか弱き英雄達に
さてと、それから何千年もルルイエは平和だと思ってたんだけど、予期せぬ事態に見舞われてピンチ…
白い制服がたくさんいるが…脅威は見た感じ6人のみ…だが、相対しているこの女…何処かで見たような雰囲気だ。
「どうした?来ないのか?」
女は首を傾け、ただ笑う。
この女は不気味だ。さっさと決着を付けしまおう。
「"水双蛸壺"」
僕は魔法を展開する…女を直方体の中に閉じ込め、直方体の上下の面に壺を具現化、その中から巨大な蛸を召喚。
女はまず水でできた直方体の中から出ようと側面を斬る…だが、こんな程度では壊れない
「なるほど…かなり頑丈だな…」
女が感心する間にも…蛸の触手は迫ってくる… 女の背後を取るもすぐに触手は輪切りにされてしまった。
「…蛸は脆い…それに息が続かんな…しょうがない…」
女は何かをしようとするが無駄だ。
"蛸を斬った時点で彼女の敗北は決まっている"
「何だ…神経毒か…魔法も使えない…普通に不味いな…」
体を痙攣させながら、彼女は考える…無駄だ。
蛸の触手は彼女の手足に伸び、10本以上もある触手で彼女を圧殺にかかる。
もう無理だ。彼女は何も出来ない。彼女は触手に潰されて死ぬ。
その時だった。
パリィィィン
僕の魔法が解除…いや、破壊された…
僕は理解に苦しむ…あの直方体は物理特化してある。斬ることは不可能。かと言って魔法の使用された痕跡はない。何が起きている。ヤバい。
…何かヤバい。
女の手を見ると刀を握り締めていた。
「この剣を使うことになるとは…流石神獣だな。」
何がある…あの剣の仕業か…
「けど、私はもう動けそうにない。後は頼むぞ、"お前ら"。」
!!今は考えるな…あの女以外に集中しろ…あの女クラスの敵が5人も残っている。
僕は背後…空中に飛んでいる奴らが一気に飛んでくるのを感じ…魔法を展開する。
「ルルイエは僕が守るんだ!」
だって僕は約束したんだ。この神獣、リヴァイアサンが海洋都市ルルイエを守るって!!!




