第3話「2度目の死」
今、俺は最悪な状況下に置かれている。
なんと、家の外にドラゴンがいるのだ。
ドラゴンは翼や尻尾を動かしている。
本物だ。終わった。何故ここまで気付かなかったんだ?
そして、俺は気付く
「防音魔法かけてるじゃん…」
俺は家全体に創造魔法でつくった防音魔法をかけていたのだ。
ここら一体は戦闘が起こりやすく、うるさくて夜も眠れないためである。
俺は指をパチンと鳴らし、防音魔法を解く。
すると叫び声が俺に飛び込んできた。
「おい!我の話を聞け!若者!」
声の主はドラゴンだ。
ドラゴンは声を荒げ、黒き巨体を左右に揺らしている。
こいつ、相当待ったんだろうな…
俺は窓を開け、返事をする。
「はいはい、なんでしょうか?」
するとドラゴンは顎を高くあげ、まるで…いや俺を見下し、こう言った。
「貴様の噂を聞いた。そんな貴様に朗報だ。我が闘ってやるぞ!」
「は?」
何を言ってるんだ?こいつ?噂?なんじゃそれ?
まぁ、とりあえず…
「すみません、とりあえずお引き取りください。」
こんな夜中に来るとは常識がないのか?
俺は窓を閉めようと指をかける。
するとドラゴンが口の中にエネルギーを溜める。
俺は驚き、すぐさま、家に障壁魔法をかける。
ドカーン
大地が裂ける。辺りは月のクレーターのように凹む。勿論、中心地にいた俺の家は吹き飛んだ。
俺は石を掻き分け、埋まった体を空気に晒す。
「おい!やってくれたな!」
俺はすぐさまドラゴンを鑑定する。
鑑定!
個体名 暗黒龍 バハムート
ワールド・ディザスターの一人。バハムートが緑しげる大地を通ったのなら、残るのは荒れた大地だけだと言われている。伝承ではバハムートの怒りを買った国が一つ滅んだとされている。
…うわぁ、マジか…普通に強そう。
まぁ、とりあえず話を聞くか…
「どうして家を吹き飛ばしたんだ?」
「我の話を無視したからに決まっているだろう?」
「無視するに決まってるだろ?いきなり来て我と闘えとか無茶ぶりにも程がある。」
「は?貴様は血塗れの悪魔ではないのか?」
血塗れの悪魔?何言ってるんだ?
「人違いだ。さっさと帰ってくれ。」
まぁ、家を作るのは簡単だ。ここは俺が大人になって、許してやろう。少し痛いけど。
「いや、我は確信した。下級魔人如きで我の攻撃を耐えれるはずがない。」
ん?嫌だな、この流れは…
「貴様が噂の血塗れの悪魔であると、それと同時に貴様に決闘を申し込む!」
はぁ…さいですか。
「嫌だと言ったら?」
「貴様に再度ドラゴンブラスターをぶち込む。」
…選択の余地はない。こうなったら
騙せる程度に闘って負けるか。
勝って因縁をつけられても嫌だしな。
しゃーないな。
「やってやるよ。手加減はしてくれよ。」
「よし!行くぞ!」
そういい、バハムートは俺に突進を仕掛ける。
「速ッ!?」
奴は巨体に似合わないスピードで俺へ向かってゆく。
瞬間移動!!
俺は心の中で叫ぶ、すると、光が俺を包み、散っていく。
散った光はバハムートの突進により、辺りに消えていった。
「瞬間移動か!上にいるな!」
そう、俺は奴の真上を陣取っていた。
「お前は少し痛い目をみてもらうぞ!」
神の鉄槌!!
雲の上から一筋の雷が降ってくる。
雷は一直線にドラゴンに落ちる。
奴の体に電気が駆け巡る。
「これはキツイだろう?」
俺は自身の翼を広げ、奴の前まで移動し、顔色を伺う。
「…少し痛かったぞ!面白いな貴様!」
バハムートは口角を上げ、笑い声をあげる。
少しか…結構本気だったんだけどな…
俺はすぐさま連撃を繰り出す。
黒炎!
氷槍!
右手に黒き炎を纏い、左手に氷の槍を持つ。
「凍ってしまえ!」
そういい、氷の槍を全力で奴めがけて投げる。
バハムートは遙か上空に飛び、回避する。
瞬間移動!
俺は瞬間移動で奴の眼前に現れる。
そして、奴の顔に触れる。
すると、右手から黒い炎が奴の体に燃え広がる。
「おお!燃えてる!我が燃えてるぞ!」
奴は何故か歓喜の声を上げる。
奴の巨体は黒き塊となり、小さくなっていく。
黒き塊がひび割れ、だんだん灰となっていく。
中から出てきたのは小学生低学年くらいの少女だった。
その少女は黒い髪をなびかせ、赤い目はルビーのように輝いていた。
そんな美しい少女に俺は一瞬に目を奪われた。
少女は俺を見て笑う。
「貴様は速さで殺させてもらう!」
そう言ったと同時だった。
俺の真正面にいた少女は消えた。
いや違う、消えたんじゃない、最速で俺の視界から移動したんだ。
思考が現状に追い付いた、その時
グシャ
背中に激痛が走る。
俺は理解した。あの少女…バハムートに背中を蹴られたのだと。
蹴りの勢いのまま上空から地面に墜落する。
辺り一面が崩れ、一帯には煙が舞う。
「…背中が折れたか。」
俺は痛みを我慢し、煙の中で息を殺し、反撃の隙を伺う。
だが、その考えは無駄だった。
「なぁ?何故止まっておるのだ?」
バハムートはもう既に距離を詰めていた。
そして、渾身の右ストレートが俺を襲う。
俺は血を吐きながら、吹き飛ばされる。
くそったれが、もう虫の息だ。
だが
「おお!我の右手が凍っておる。」
反撃はしたぞ。あの戦闘狂め…
俺は深く息を吸い、仰向けに倒れる。
「…こりゃ死んだかな。」
体はボロボロ、腕や足、翼の骨、背骨は折れ、その骨は内蔵に突き刺さる。
俺は吐血しながら呟く。
「今世は随分短かったな。」
俺の新たな人生は半年という短さで幕を閉じようとしている。
「さよならだな。」
今世は自由に過ごすつもりが、こんな早くに亡くなるとはな…
「お前みたいな役立たずなお似合な末路だ。」
「あんたは産まれてこなきゃよかったんだよ!」
前世のいじめっ子の声や親の声が聞こえたような気がした…
…
''個体名『ソウヤ』は中級魔人に進化します。"
何処からか声が聞こえた。
俺の体から痛みが引いていく
"創造魔法から再生力を獲得します。"
何故か力がみなぎってくる
"進化に伴い、ステータスを上昇させます。"
…あいつに勝ちたい
俺の安住の地を奪った、理不尽な奴に勝ちたい。
"了解しました。獲得した魔人の魔力及び魂を利用し、補填します。"
俺は再び立ち上がる。
"成功しました。"
「おお!進化したか!ますます気に入ったぞ!」
バハムートは喜びの声を上げる。
「お前のその面、泣かせてやるからな!」
俺は今世に転生して半年、中級魔人となった。