第29話「戦闘狂」
…しばらくは平和の時は続く。
魔王軍と帝国軍の戦争は小競り合い程度…双方人的被害はほとんどない。
「ホント平和になったもんだな。」
俺は呑気に欠伸をしながら、右手にポテチの袋を握りしめ、テレビのあるリビングへ向かう。
「おっ、お前らもう席ねぇじゃねぇか。」
リビングのソファにはニーナ、コルン、バハムートの3人が座っていて、俺が入る分の余裕は無い。
「はぁ、自室にでもテレビ作ろっかな…けど、めんどいんだよな。」
俺はトボトボとした足取りで少し離れたダイニングテーブルに座る。
そこにはフェンリルも座っており…説明する必要があるな…
実は犬っころは人間の姿をとることができる。その姿はまるで獣人のよう…褐色の肌に相対する白い髪、黄色のキリッとした目ん玉…ちなみに女性。所謂イケメン系女子ってやつ。
「なんだ?お前もテレビ見てるのか?意外だな。」
「…修行ばかりでは効果がない。適度の休息も強くなる近道となるのだ。」
なるほど…共感できる。特に"適度の休息が必要"というところがな。
「お前いいように解釈していないよな?」
ウンウンと頷く俺にフェンリルはこう問いてきた。
失敬な…そんなことはしていない。俺は反論をしようとした…次の刹那。
…何か不穏な気を感じ取った…辺りは揺れていないのに揺れたように感じた。
…だが、ここからは遠い…出向く必要は無いな…
一方、感じ取った不穏の原因の者達は…海洋都市ルルイエの上空にいた。
「おっ、ここから攻める感じ?ビビってるのリーダー?」
笑みを全面に見せる男はリーダーであろう黒髪ロングの女の愚弄から始めた。
「安全を期すことは重要だ。相手は最大限警戒している男…舐めてかかると死ぬと思った方がいい…なら、反対側にある都市を徐々に攻めて、万全を期し、全兵力で攻めるのが良い。」
リーダーも思しき女は徐々に降下を始め…水面に足先が着くとその場に留まる。
「"聖剣エクスカリバー"!!!」
彼女がそう叫ぶと空中に50mをも光り輝く剣が出現し、都市を切り裂こうと剣を振り下ろす。
ドゴォォォォン
海洋都市ルルイエは振り下ろした剣の衝撃によって砂埃が舞った… 砂埃は街を包む…が、衝撃波によりすぐ四散した。
「ほぉ…」
彼女は面白そうに口角を上げる…彼女の見つめる街は…以前と変わりが無かった…そして、その手前にいるのは
「ねぇ、ボクの街を壊さないでくれる?」
「神獣リヴァイアサンか…」
海洋都市ルルイエの守り神、神獣リヴァイアサンだ。 リヴァイアサンは牙を抜き出しにし、殺意を剥き出しにする。
「ふん、"この世界"の貴様はどれだけ強いんだろうな…1度、"血塗れの悪魔"とやったんだろう…期待が出来るな…」
彼女は腰に下げた刀を抜き、構える。
その刀の反射する光はリヴァイアサンを捉えていた。
「さぁ、死合うぞ!リヴァイアサン!」
彼女は神速の踏み込みで海を走り、リヴァイアサンとの距離を詰めようとする。
「面倒からすぐ殺すね。」
対するリヴァイアサンは口から水を吹き出す。ただ、その速さは凄まじく、当たれば水圧で肉片が残ることは無いだろう。
「リヴァイアサン!その技は見た!」
彼女はまるで攻撃を読んでいたかのように見切り、水の柱の間を縫って、飛び上がる。
「貴様はやはりつまらないのか?」
彼女は狂ったような満面の笑みでリヴァイアサンの首元まで位置取り、刀を振り上げる。
まずい…そう感じたリヴァイアサンは全身が輝き始める。
「…何ッ!?」
女の振るった刀は空を斬る。だが、その威力は凄まじく、風圧だけで海を割ってみせた。
「…君は危険だ。あの男とは比べ物にならないぐらい…」
割った海の中から水の柱が形成され、形成された水柱が彼女を一直線に襲う。
「くっ…この配置はキツイな…」
彼女は避けつつも白い制服が掠り、綺麗な肌が露になる。そして、頬からは赤い一筋の線から赤い液体が滴り落ちる。
「…だが、彼より弱い…やりようはあるね。」
彼女は攻撃を避け終わると攻撃を繰り出した主を目視する…そこに居たのは耳がエラででき、頭に角が生えた女性…まるで魚人と鬼人が混ざったような人型の生物…リヴァイアサンの人型の姿だ。
…彼女の顔は美しいが、酷く歪んでいる…何故なら
「良い。久々に痺れる。死を身近に感じる。これが死闘。殺し合い。生死をかけた…勝負。」
女は頬にできた傷の血を手で口に運び、狂気的に笑う。彼女の視点は最早誰ともあってない…何か遠くを見ていた。
そのイカれた人間の前にリヴァイアサンは呑み込まれかけていた…
「戦闘は楽しいよなぁ!!!!!」
彼女の狂気的な戦場に…




