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第27話「他人」

森の最奥まで来ると俺は背後にいる奴に声をかける。


「おい、面倒くさいのは苦手だ。さっさと終わらそうぜ。」


「…気付いていたのか?」


すると男が俺の背後から現れた。

俺は振り返り、即座に鑑定魔法を使う。

"鑑定!"

…なるほどな。


「いくつか質問良いか?」


「…いいだろう。」


男は俺に近付きながら、了承する。


「まず、お前は異世界人か?」


「…何故分かる?」


奴の顔から多量の汗が滴り落ちる。


「次にお前は誰かの命令に従っているな?」


「…何故分かる…と…」


歯を噛み締め、俺を睨む。


「最後にお前の操っているのは"金髪の男"だ。」


「…だから…何故分かるんだと言っている!!!」


男は何故か激昂し、俺に"ファイアーボール"を放つ。

…"ファイアーボール"は俺に当たる前にだんだんと小さくなり、散った。


「さて、お前の質問にも答えるとしよう。何故分かるだったっけ?」


俺はその場で立ち尽くす奴に近付きながら答えた。


「鑑定魔法だ。"S級"のな。」


「"S級"…?」


奴は目を開いた…まるで閉じることを忘れたかのように…冷や汗をかきながら…ずっと…

"S級"とは生物が到達できるはずの無い境地…至高の領域…らしい…"鑑定の説明"で知った。

つまり、奴…エルドの前に立っているのは…"生物ならざる者"…"人智を越えた生物"…


「信じない…"S級"など…いくらでも偽装ができる。それに鑑定など戦闘に関係ない。優位に立ったと思っているのなら大間違えだ。」


「そうだな…いくらでも嘘はつける…」


「だから証拠を見せる必要があるな…」


俺は口角を上げる。

信じて貰うには…奴の歴史を読み上げるくらいしないとな。


「お前が6歳の頃に父、母、妹、弟全て盗賊により殺される。お前長男なのかよ。」


「何…何を言って…」


「へぇ、お前の想い人って領主の玩具にされて、自殺したのか…可哀想だな。」


「辞めろ…」


「可哀想なミリアちゃん。」


「俺の過去を見るなぁ!!!」


エルドは先程よりも強く激昂しながら、剣を抜き、俺の前まで走る。


「お前だけは殺す!」


奴は俺の胸に剣を振りおろそうとするが…防御結界が奴の攻撃を許さない…剣は弾かれる。


「おいおい落ち着けよ。"お前だけは殺す"って…」


「めちゃくちゃ殺してるじゃねぇかお前。」


俺は鋭い眼光を奴に飛ばす。

奴は怯みながらも叫ぶ。


「…全部悪なんだ…俺の家族を殺した盗賊…俺の大切な人を潰した領主…」


「アハハハハ!」


俺は大声で笑い、奴の言葉をかき消すと一言奴の眼前で呟いた…


「…その領主の無害な赤ちゃんを殺したのは何処のどいつだ?」


「…貴様は何処まで見えている?」


奴は睨むことはできるが動けない…いや、動かせない…俺の呪縛が効いているからな。


「全てだ。お前のクソな人生だって全て見えてる。」


俺はそう言い放つと踵を返し、奴への呪縛を解く。


「俺相手じゃ、お前は何も出来ない…諦めろ。仏の顔は1度までだ。」


奴はその場に膝をつき…呟く。


「…諦める者か…ミリアに会えるんだ…」


奴は立ち上がったと思うと俺に向かって突撃を仕掛ける。

…ほんと馬鹿な奴だ。


「"重力操作"」


俺がそう呟くと地面が棘状に変化し、エルドの腹を貫く。


「ガハッ…」


エルドは激しく吐血した。

奴の服はすぐ真っ赤に染まり、血がポタポタと棘状の形に固まった土に垂れる。


「…何が起こって…」


エルドは頭で理解できなかった。

エルドの常識の中にない…別世界を殺戮の限り尽くした奴ですら知らない攻撃だった。

エルドはこの時点でようやく悟った。


「…化け物。」


対面している者が勝てるはずのない存在である事を…

エルドは初めから勝機など無かった。

"金髪の男"に良いように使われただけ…

…エルドは呪った…自分の運命を作った神様を…そして


「…お前を…お前達を呪ってやる…お前の仲間を1人1人地獄に落としてやる。」


だが、エルドは理解していなかった…俺の本質を


「勝手にしろよ。俺に"仲間"なんて居ない。」


「じゃ、死にゆくお前にアドバイスをかけてやる。」


"優しい"俺は死にゆくバカに現実を見せてあげようか。


「お前…どうせ家族やミリアを生き返らせてやるとかいう取引で俺の前まで来ただろ。」


奴は目を点をするが、すぐに答える。


「…そうだ。何がおかしい。」


俺はここまで滑稽の人間を見たことない。

笑う以外道は無かった。


「何がおかしい!」


奴は怒鳴るがその声に力は入っていない。…もう死ぬのだろう…じゃあ、教えてあげよう。


「そもそも他人に生殺与奪権を握られている時点で諦めるべきだ。お前からしてホントか嘘かなんて分かるはずがないのに、奴の言うことを聞くメリットなんてない。」


「…本当だったら、どうするのだ!本当ならミリアや父、母の命を棒に振ることになる!」


「別にそれでも良いじゃねぇか。」


「"他人"なんてどうでもいいだろ?」


やつの見る目が変わる。…もう奴からして俺の言葉なぞ理解の範疇を越えたのだろう。


「"家族"なんて結局は"血の繋がった他人"だ。生きてる間は"利用"すればいいが、死んだら"形式的な悲しみ"だけを背負えばいい。」


「"他人"なんかに人生変えられるのは嫌だろ?」


エルドは意識が朦朧とする中、一つの言葉を聞き、死にゆくこととなる。


「"他人"に振り回されて生きてる時点でお前は"自分の人生"を歩めていない。そんな"負け組"に"俺の知ってる奴"が呪殺される訳がない。」


俺はそう言いながら、奴の死を見送るとエルドからコピーした"ファイアーボール"で火葬した。



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