第26話「本当は神獣って偉いんです!」
「ぜぇぜぇ…」
俺は手を膝を付き、立ち止まる。
俺は奴からの逃亡に成功し…
「何故生足で逃げ切れると思った?」
前言撤回、逃亡に失敗した。
奴は走ることに慣れているのだろう、息一つ上がっていない。
「というか貴様は瞬間移動で逃げれば良かったのでは?」
「あっ…」
そうだ。俺には瞬間移動がある。
瞬間移動なら尾行されずに済むし…疲れない。
俺は自分の頭に手をやり、涙を流した。
「本当…貴様はよく分からんやつだ。」
フェンリルは珍しい物を見るような目線で俺を見る。辞めてくれ…俺が馬鹿だからって…辞めてくれ。
自分の行動に後悔していると皆が俺の方へ近付いてくる。
「師匠!なんですかこのモフモフ。」
「モフモフでは無い!フェンリルだ。」
フェンリルは自身のことをモフモフと言われると、すぐさま否定する…いや、俺はモフモフだと思うけど…
「フェ…フェンリル様…!?」
そんなやり取りをしてる傍でリリネはガクガクと震える。
震えが止まったかと思うとその場で土下座した。
「フェ…フェンリル様…どうして我々の前に…何か粗相を…」
彼女は恐らく神獣ということで恐れているのだろう。彼女の顔色はすこぶる悪い。
彼女の顔から汗が滝のように流れ落ちる中…畏怖されているフェンリルはと言うと…
「ふ、ふん!よく私がフェンリルと分かったな。褒めて遣わす!」
先程までの怒り面が何処へ行ったのやら…尻尾をブンブンと振り回し、顔はニヤケ面に変わった。
「いや、そいつ…」
俺が畏怖されるべき者でないと伝えようとするとフェンリルが俺を必死に睨みながら、牽制をいれる。
あぁ…こいつ。最近扱いが悪かったから…良い扱いされて普通に嬉しいんだ。
まぁ…ぞんざいに扱ったのは俺なんだけどな。
「というかモフモフちゃんは何故来たの?」
アリアはまだフェンリルのことをモフモフと呼び、フェンリルに当然とも言える質問を投げかける。
「小娘…良かったな…私は今、気分が良い…答えよう…来た理由は…は…」
気分が良かったらしいフェンリルの顔が突如として汗だくになり、少し涙目になりながら、俺の方へ助けを求めるかのような視線を送る。
…はぁ、マジで面倒だけど…あいつの顔も立ててやるか…バカ正直に俺の下僕になったなんて言えば、アイツはガチのモフモフになり、皆が敬う神獣という地位から落ちる…
「…俺の監視のために来たんだよ。あれだよ。ワールド・ディザスター級の俺とバハムートが一緒にいるから…危険だろ?俺達って。」
俺はフェンリルに目配せをする。
「…そ、そうだな。俺らは神は貴様らを危険視している。だから監視するため、"忠実なる神の下僕"である私が来た。」
フェンリルは俺に話を併せ、自慢げに語る。
…作り話の癖に…
「なるほど、神でも危険視しますか…」
リリネは土下座の姿勢のまま、視線を上げた。
…安心したのだろう、彼女の顔から汗はひいていた。
…てか、そんなに神獣って畏怖するものなんだ。
「てか、話しながら帰らないか…早く家のベットに頭をうずめたいんだ。」
俺は話をバッサリ切る。早く帰りたいだけの俺にとって長話はダルいモノ他ならない。
「…そうね。アンタにしてはよく我慢した方だし。」
ニーナの言葉に続き、全員がタオルで体を拭き始める。
俺は奴等が着替える時間を待つため…いや、待つのもダルいし…"他にも待ってる奴がいるしな"
「先に帰る。魚は異次元にしまうからな。」
そう言いながら異次元を開き、魚をそこへしまう。
俺が森の中へ入ろうとするとフェンリルが着いてこようしているのが足跡で分かる。
俺は振り帰らず、一言放ち、暗い暗い森へと入っていった。
「フェンリル…お前はあいつらと回り道をして帰れ。命令だ。」




