第16話「遙か遠い敵」
俺がケルビンに向かって歩いていくと魔獣たちがジリジリと近寄ってくる。
なるほど、こいつを主として認識しているタイプ…傀儡方でなく自律型…まぁ、どっちみち。
"地形操作"
俺がそう呟くと地面の土が棘状に変化し、魔獣たちを貫く。
これで奴等は無力化した。
ケルビンはこれを見てもまだ平静を保っている。
…まだ切り札があるな?
俺はそう確信し、奴に端的に伝える。
「さっさと出せよ。時間が勿体ない。」
すると、ケルビンは口角を上げた。
「いいんですね?最高傑作を出してしまっても…」
ケルビンは慣れた手つきで胸元のネックレスを握る。
「出てきなさい!私の最高傑作"キマイラ"!」
そういうとネックレスの宝石が光輝き、空間が歪む。
そこから出てきたのは獅子と山羊と蛇の頭の持つ、背中に翼を生やした四足歩行の生物であった。
キマイラは俺を見るなり遠吠えをあげる。
そして、翼を広げ、俺に向かって飛んでくる。
「さぁ、キマイラ!人間の魂を利用して呼び出した冥界の生物よ!さぁ!殺してしまいなさい!」
ケルビンは手を天へと広げ、笑う。
…まぁ、俺とバハムート以外ならいい線いってたと思うわ。
俺は拳を固め、魔力を込める。 そして、俺の間合いに入ったキマイラに対して、"半分"の力で殴る。
バコォォォォン
俺の力に耐えることが出来なかったキマイラは吹っ飛ばされ、地面を転がり、木々をなぎ倒してゆく。
やっと止まり、立とうとするキマイラに対して
「お前は神獣の後だと弱く感じるわ。」
"神の鉄槌"
雷を…眠りを邪魔する者達全部への怒りぶつける。
ギャオオオオオオオオオオオオ
キマイラは叫ぶと黒くなって動かなくなった。
それを見ていたケルビンは真っ青になり、膝から崩れ落ちる。
「そんな…あんな簡単に…」
そんなケルビンに俺は瞬間移動し近づく。
「なぁ?お前あれどうやって呼び出した。人間の魂を利用したとか言ってたが…」
鑑定!
『操獣』のケルビン(洗脳)…四天王の一角。魔族優位な世界を作るため、人間の魂を利用して冥界から"キマイラ"を呼び出す。この力で世界を意のままにしようとした。
なるほどな…洗脳してるとはいえ…
「他人から幸せを奪うのは関心しねぇな。」
俺は奴を見る。
すると奴は怯えながら話す。
「と、とりあえず落ち着いてくれ。」
あっ、今怒ってたわ。なんで怒ったんかな。
俺は怒りを抑え、奴に要件だけ話す。
「俺はお前を殺さない。だが、お前の記憶を見させてもらう。」
そういい、手を奴の頭の前まで持ってくる。
「分かった…」
奴は諦めていたのか…抵抗することはない。
"記憶複写"
俺は奴の記憶を読もうとする。
"ダメ"
この2文字が頭を浮かんだと同時だった。
グシュ
奴の頭が吹き飛ぶ、奴の首からは多量の血が吹き、辺り一面赤く染まる。
残ったのは奴の頭部以外の部位とグシャグシャになった眼鏡だけ。
…対策してきたってことは…俺がフェンリルの記憶を覗いたいたことを見ていた…でないと対策しようがない。
だが、あの場には敵は誰もいなかった。
誰かがフェンリルの目を介して見ていた?
それとも…俺の気配察知に入らない"俺達より遙か強い存在か?"
…ここまでしか考察できないな。
それにこれは"考察"だ。推測の域でしかない。
俺は諦めて奴の死体を寝かせた。




