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第15話「魔族の思い」

「遂に…実現する…能力が覚醒する前の勇者を殺せるなんて…素晴らしいことだ。」

ケルビンは声高だかに放った。

サノラ村はまさに地獄絵図。

人々が走り回り、それを追いかける魔族。

抵抗しようとする者は体を真っ二つにされ、捕まった者は縛られて拘束される。

そして、ケルビンの目は捕らえた幼き勇者、怒りを含んでいると言わんばかりの赤髪…アリア・シルフィードを捉えていた。

「クックック…実に最高だ。歓喜の極みだよ。」

ケルビンは気分良く言いながら、アリアの頭を強引に掴み、力を込める。

「ねぇ?遺言とか聞きたいな…惨めに泣き散らしながら言ってよ。ねぇ。」

奴の行動はもう常軌を逸していた。目の焦点が明後日の方を見ている。彼の目には映っているのだろう…魔族が人間界を滅ぼす未来が… 魔族が未来永劫繁栄する姿が…

…それがすぐにでも掻き消されるとも知らずに

ドゴォォォォォォン

すぐ近くから大きな音が響き渡り、辺りに揺れ、砂埃が舞う。

その中から3人の救世主が飛び出してきた。

「ちょっと!もう少しゆっくり降りれなかった訳?」

「すまん、加減ミスったわ。」

「う〜、目が回る。」

ニーナ、俺…ユウヤ、コルンの3人だ。

俺達を見たケルビンの表情が曇る。

「どうしたんですか?コルン?早くそいつらを捕らえなさい。後、血塗れの悪魔でしたかね?私達は何も貴方に干渉していませんよ?」

コルンと俺は答える。

「いや、僕は魔王様からの命で来たから、ごめんね。ここはこちら側につかせてもらうよ。」

「すまんな、訳あってお前の操っている黒幕のことが知りたくてね。」

俺達の答えを聞くとケルビンは親指の爪を噛み出す。

「魔王様にもお伝えしたのにこの仕打ち…理解不能。血塗れの悪魔は来ないはず…理解不能。」

すると奴はぶつぶつと小言を話し始めた。

「魔王様はダメだ。魔族の未来を考えていない。今は危機的状況なのだ。だからこそ、今勇者を討ち取らないと勝ち目は無い。未来は無い…」

それが終わったかと思えば、俺達を見つめ、覚悟を決めたかの様に話す。

「我等の目的は勇者アリアを殺すことです。それ以外のことは妥協します。」

「なので、勇者アリアを殺せるならば私の命、幾らでも差し上げましょう。」

「…勇者アリアを殺した後、私は投降します。私は反逆罪で死罪となるでしょう。ですが、その代わりに私以外を罪に問うことはしないでください!」

なんとケルビンは自身の命を差し出すと言い出したのだ。

楽だなそれ。俺がその提案を承諾しかけた時、ケルビンに頭を掴まれたアリアがか細い声で言う。

「何か私悪いことをしたの?どうして私を殺すの?」

まだ若い勇者はケルビンに問う。

だが、彼女に待っていたものは酷く残酷なモノだった。

「悪いんだよ。お前の存在が!お前の力が!」

ケルビンは激昂しながら続ける。

「お前なんて生まれて来なきゃいいんだよ!」

プツン

その時、俺の堪忍袋の緒が切れた、重なってしまったのだ。俺と母親の姿と

「…。」

気付いた時には俺の左手は真っ赤に染まっていた。

右手は少女を担いでいる。

そして、真っ赤に染まった血を辿ると

「貴方…よくも!」

ケルビンが鼻から血を流していた。

「よくも!」

ケルビンが激昂しながら叫ぶと森から魔獣が集まってくる。

「ちっ、コルン、行くわよ!」

「そうだね!やっとこっか!」

ニーナとコルンは魔獣を対処しようと俺らの傍に近寄ろうとする。

しかし、遮る者が2人いた。

「行かせません!血塗れの悪魔を殺せる機会ですのに!」

「アンタ…あの化け物倒せる訳ないでしょ。」

ニーナを十二大魔将『病魔』のエリーゼ、

「死んどけ裏切り者が!」

「裏切り者は君だよ。シヴァ。」

コルンを十二大魔将『剛腕』のシヴァが足止めする。

さてと、どうするかな?

俺は担いでいた少女を下ろし、体に魔力を込める。

「眠いからサクッと殺るぞ。」

俺は眠くなった脳とダルい体を動かし、奴に向かっていった。


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