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第五話 白百合の芽吹き④

数分後、ジャンヌとマリは連れだって。教室、そして学校を後にする事と相成った。


(つい、一緒に行かせて貰う事になったけど……ど、どうしよう……)


ランの事が心配なのも勿論だが、あのアブノーマル女子高生である彼女が日々住まう家や。そのご家族は、どのような方々なのか……気になる点は、ジャンヌには沢山あった。


(冒険ゲームや異世界ファンタジー作品の、迷宮ダンジョンみたいな感じの家じゃないと良いな……)


少し不安を抱く彼女の傍らで、道案内をするマリはというと。


(お見舞いイベント、キタコレー!!)


と、無表情の裏側で大興奮していた。


(最新話のキミ恋で、風邪をひいた昂輝の家に灯里がプリントを届けに行って。二人の距離が一気に縮まる、という神回を読んだけれど……まさか、現実でも起こるとは!)


マリは内心でほくそ笑み。


(風邪を引いたランの所に、貴公子がお見舞いに来て。距離よ一気に縮まりたまえ!)


と、ランとジャンヌとの関係の発展を目論むのであった。

互いの心中を知る由も無い二人は、途中お見舞い品としてゼリーとスポーツドリンクを購入してから無事にランの家へと到着する。


「凄い大きな家だね……」


ジャンヌの眼前に広がっていたのは、長く広がる純和風な塀。そこから覗く、これまた日本古来の風格を放つ和装建築の屋根であった。


「ランちゃん……実は、お嬢様か何か?」

「その呼び方が正しいかは何とも言えないですけど、裕福ではありますね~。まあ、この家が広いのは道場が併設されてるからですけど」

「あっ、そういえば。家が道場って言ってたね」


まさか、こんなに広大だったとは……本人不在でも驚かされる事が多いなあ、と。ジャンヌは思う。


「まあ、とりあえず入りましょうよ」

「そっ、そうだね!」


入口でたむろってしまっては迷惑が掛かってしまう……と、ジャンヌはマリに続き「あららぎ」と表札が飾られた敷居を跨ぐ。

堂々と慣れた風に、ずんずんと歩みを進めて行くマリとは対照的に。お邪魔します……と、おずおず後に続くジャンヌ。すると。


「――いらっしゃ~い」


と、二人の背後から音も気配も無く。細身で白髪に白髭を蓄え、瞳を隠す程に分厚いレンズの眼鏡を掛けた和服姿の老人が現れる。


「わあっ!? えっ!?」

「じっちゃん、お久~!」


少しだけテンション高めに、無邪気に挨拶をするマリに。


「お~う、マリリ~ン~! ひっさしぶりじゃのう~!」


穏やかな満面の笑みで、老人もマリへと挨拶を返す。


「桃瀬さん、この方はもしかしてもしかしなくても……」

「ランのじっちゃんです」


マリの返答に「そ、そうなんだ……仲良いんだね」と、戸惑うジャンヌ。


「お前さんは、どちら様かな?」


すると、ランの祖父がジャンヌへと視線を向けながら尋ねる。


「あっ、初めまして。私は、ランちゃ……蘭さんの一学年上の、その……友人、で……」


今考えてみたら、クラスメイトでもない上に。部活動、委員会が同じ訳でもない異性の上級生が見舞いに来る等。不自然なのではないのだろうか……そう思ってから、どんな反応が返って来るのかとジャンヌがアワアワした気持ちで居ると。


「おぉ! 孫の見舞いか! ささ、立ち話もなんじゃし。入れ入れ」


ランの祖父は明るく、そう告げた。

ジャンヌはその軽快な対応から「あっ、ランちゃんの親族だ」と、シミジミ実感するのであった。

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