第五話 白百合の芽吹き③
(ハンカチも返したいし、お菓子もせっかく買ったから。ランちゃんに渡しに行こう!)
少し沈んだ思いで一日を過ごしたジャンヌは、放課後にそう一念発起し。一年のランが在籍するクラスへと足を運ぶ。
部活や帰宅、委員会等に向かい生徒達がまばらになった教室内を。「もう帰っちゃったかな……?」等と考えながら、ドキマギと覗いていると。
「あれ、貴公子先輩だ」
聞いた事のある声が掛かる。見ると、自身を見上げる小柄な女子生徒と視線が交わった。
「あっ……えっと、君は確か桃瀬さん。ランちゃんの友達の」
ジャンヌの言葉に、マリは「ハイ」と返事を返し。
「ランですか?」
と、問い掛けた。
「そ、そう! ランちゃん! い、居るかな?」
「ランなら今日、風邪で休みですよ」
「えっ!?」
返って来た予想外の答えに、ジャンヌは目を見開く。
確か、メールでは「用がある」と言っていたのに。なんで、言ってくれなかったの……と、思いながら。
「そ、そうなんだ……」
と、少し呆然と相槌を打った。
「ラン。今まで、風邪引いた事なんて無かったんですけどね~」
「えっ、そうなの?」
「ハイ。だから、ちょっと心配なんですよね。学校休んで」
「そうだね……それくらい、辛い症状なのかも……」
「なので、今からランの家にお見舞いに行くんですけど――」
そこで、マリは口角を吊り上げて。
「先輩も、一緒に行きません?」
と、ジャンヌに尋ねた。
「……え?」