第五話 白百合の芽吹き②
そして、夜が明け。
(よし。ちゃんとアイロン掛けしたから、これでランちゃんにハンカチ返せる!)
自然と笑みを溢しながら、そう心の中で思うジャンヌ。
(……お礼も兼ねて、何か一緒に渡そうかな)
考えてみれば、ランに助けられたのはジルの件も含めると二度目である。さすがに言葉だけの感謝だけでは、足りない恩義だとジャンヌは思った。
(プレゼント……とかは、今日はもう無理か……お菓子だったら、ちょっとしたものだったらコンビニで今から買えるかな?)
そう思い立ち、ジャンヌはハンカチを丁寧に仕舞い。テキパキと身支度を整えて、自宅を後にする。
(……コンビニって、思ってたよりオシャレなお菓子いっぱいあったなあ!)
それから、急ぎ足で駆け込んだ近所のコンビニで。ジャンヌはお菓子が入った袋の中身を眺めながら、顔を綻ばせる。
(お昼に、ランちゃんと一緒に食べよう)
お礼とは言いつつ、自身の食べたい物を結構買ってしまったなあ……と、思いながらも。ランの性格上、謙遜されて遠慮されてしまいそうなので。一緒に食べる事を口実にした方が気軽に受け取って貰えるだろう……と、ジャンヌは少し心の中で言い訳をする。
そして浮足だった気持ちで学校へと到着し、自身の教室と席へと到着すると。
(今日も昼休み、屋上でランちゃんと一緒にお昼ご飯……食べれる、よね?)
と、再び心がふんわりと浮遊した感覚になりながら。でも少し不安を過らせて、いつも通り連絡を取り合って互いの都合の確認をした方が良いかな……と、スマホを取り出した。
こういう時、ランちゃんと別の学年なのが辛い……と、考えながら「今日のお昼休みの予定はどうかな?」とメッセージを送る。
暫く、間を置いてからランからの返信通知が表示され。ジャンヌは少し胸を高鳴らせ、人差し指で画面をタッチして内容を表示。
[すみません……今日は、別の用が入ってしまい行けないです……]
というメッセージの後に、ごめんなさいスタンプが送信されて来た。
ジャンヌは暗く沈み始めた思いを嗜め。
[そっか、残念(汗の絵文字) じゃあ、また今度良かったら!(ニコニコ表情の絵文字)]
そう打ち込んで送信し。続けて、内容に違和感の覚えない当たり障りのないスタンプを送る。
(じゃあ、今日は会えない……かな)
なんで、私……ランちゃんと同い年で同じクラスじゃ無いんだろう。
影ったジャンヌの心に、そんな思いがさらに彼女の気持ちを沈め始める。