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第四話 遅桜の秘め事⑥

「――協力、感謝する」


眩く神々しい光を纏い、大きな純白な羽根を広げ、中性的な美貌の人物が生徒会室内へと現れた。

少しうねりを帯び、たおやかに艶めく麦色の髪に甲冑を纏って宙に佇むその姿は。現状から見ても、絶対に人間ではなかった。


「あなたは、大天使ミカエル様!」


その時、ジャンヌの声が弾ける。


「久しぶりだな、ジャンヌ。元気そうで、何より」


薄く笑みを象り、大天使ミカエルが言う。


「ケルベロスの右の首と、ジル・ド・レェ。そなた達も、協力感謝する」


床にグデっと座り込む悪魔と、魔獣を振り返るミカエルに。


「いや……俺達は、何もしてねーよ……」


珍しく、殊勝な様子でジルが言い。


「結局、『N』表示されたチートレアの隠し兵器に頼っちまったからな」


ケルベロスの右の首も、そう告げた。


「ジャンヌの友よ」


すると、ミカエルはランへと顔を向け。


「感謝する。そなたのお陰で、神が張っていた結界が破れ。拘束する事が叶った」


と、告げるミカエルに。ランは「いっ、いえいえ!! お役に立てたのなら何よりです」と言いつつ。「拘束? 結界?」と、不思議そうな顔をした。


「彼は、ジャンヌへの求愛を邪魔されない為に。この者の身体に憑依する前、周囲に結界を張っていたのだ」


そう告げるミカエルに続き、ケルベロスの右の首が。


「この部屋に入ろうとしたら、扉が開かなかっただろ? アレは、あのストーカー神が結界を張ってたからだ」


と、言い。


「えっ? それを、ランちゃんが殴って破壊して入ったの?」


それを聞いたジャンヌは、驚愕の表情を浮かべた。


「まあ、壊しても良いから開けてくれっつったのは、オイラ達だけどな」

「だが、誰も素手でいくとは思わねーっての」

「この嬢ちゃんはチートスキルの遣い手だ。しょーがねぇ」


その結論は、ほぼ思考放棄に近いな……と、思いながら。ジャンヌはケルベロスの右の首とジルの会話を聞いていたが。


「ジルとケルベロスの右の首様は、この方が来られるのを。(あらかじ)め、知ってたんですか?」


思い至った疑問を尋ねてみる。


「ああ。私が冥王ハデスに協力を仰ぎ、彼等を遣わしたのだ」


するとジャンヌの質問に答えたのは、ミカエルだった。


「神っつっても。許可なく公務でも何でも無い私用で人間に憑依して、現世に降臨するのは禁じられてるんだ」


そして、ケルベロスの右の首も補足説明を加える。


「逆に、許可取れは良いんですか?」

「許されるが、この方の動機は不純且つ迷惑行為と判断され。許可は絶対に降りない」


ランの質問に、きっぱりと答えるミカエル。「天界って、ちゃんとした判断出来る方達居るんですね……」と、ランは思わず溢した。


「何を聞いたかは知らないが、傍若無人だけが神々の本質ではない。仕事はちゃんとするし――させる」


一瞬、鋭い眼光を放ったミカエルを見て。ランが「天使さんって、有能秘書さんみたいですね」と言い、ジャンヌも「確かに……」と肩を落としながら同意する。


「天からジャンヌを監視していたこの神は、彼女と親しくなったこの青年が“適合者”であるのに目を付け。現世でジャンヌと再会する機会を伺っていたのだ」


淡々と告げるミカエルに続き。


「それを、天界側が察知し。この天使の依頼がハデス様経由でオイラと変態悪魔に来て、聖女サマの護衛と、ストーカー神の捕縛補助の任務が与えられたっつー訳だ」


ケルベロスの右の首が言う。


「神の力に干渉するには、天使だけでは心もとなかったのでな。最近、ジャンヌと交流が深まった彼等に協力を願ったのだ」

「で、『SR』と『R』じゃ。『SSR』相手にするのは気が重かったから、『N』表示の『UR』(ウルトラレア)に協力を仰ぐ事にしたっつーワケだ」


ケルベロスの右の首の言葉に対し、ジャンヌが「右の首さん、さり気にランちゃんに辛辣では……?」と戸惑う中。


「そんなそんな……過大評価ですよ……」


と、ランは全く気にした様子が無い所か。ちょっと満更でもなさそうに、照れた笑みで返す。


「ランちゃん!? そこ照れる所じゃないと思うよ!!」


ジャンヌが言うが、ランはやはり全く意に介しておらず「そうですか?」と首を傾げるだけだった。


「とにかく、お前達のお陰で助かった。礼を言うぞ」


では、私は彼を連れ帰らせて貰う……と、ミカエルは櫻小路へと掌をかざした。その時。


「この野蛮は暴力女め!! いくら憑代体(よりしろたい)越しとはいえ、神を殴った貴様には、必ず天罰が下るからな!! 覚悟しておれ!! ジャンヌ、また……また必ず来――」


そこまで喚き散らしてから、ミカエルの放つ光に包まれた櫻小路の身体は。気を失ったように、首をガクリと項垂れさせて動きを停止させる。

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