チートブレイカー
少し変わった短編小説ですが、もしご好評でしたら続きも書こうかなと思います。
是非よろしくお願いします!!
悪用チーターを撲滅している日々を過ごしているある日の事、俺は武器倉庫に侵入していた。理由はただ一つ。今背中に差してる刀以上に強い刀を探すためだ。もう刃こぼれもすごいのでそろそろ新しい刀が欲しいと思っていた頃合いだった。
「えっと、刀はどこだ〜?」
周囲の箱を探し回っても、良い直剣や大剣はあっても良い刀は見つからなかった。途方に暮れていると、倉庫の扉が開く音がすると同時に白い特攻服を着た集団が入ってきた。
「おいおい、ガキが入り込んでやがるなあ!」
「このゾルデ様のチートで泣かせてやるよ! あひゃひゃっ!」
「ちっ、チート使いが何でこんなとこにいんだよ……!」
このゾルデ率いる暴漢達のように、たかがチート一つ持っただけでこの世界を支配した気分に陥ってしまう理由はいたって単純だ。それは『チート=最強』という概念が結びついているからだ。
「おらあっ!!」
「ぐっ……」
突然暴漢の一人が右手から魔剣を召喚したと同時にザシュッ、という音を立てながら俺を斬りつけた。俺は傷口からポタポタと血の雫を床に落としながら膝をつく。
「あひゃひゃひゃひゃっ!! お前雑っこぉ〜!」
「チートも持てねぇお前に人権なんてねぇんだよお!!」
しかし、俺はチート自体を否定する訳では無い。ただそれを利用して無慈悲に人を心身両方で痛めつけたり、自分より格下の者全ては奴隷のように見下したりする奴らが気に食わないだけなのだ。ぶっちゃけ最初の方で言ったハーレムが気に食わないというのはただ俺が嫉妬してるだけである。
そんな奴らに殺されたくない一心で俺は何とか立ち上がる。
「おいてめぇら、早く逃げた方がいいぜ? 今頃可愛い女の子達はてめぇらとのイチャイチャタイムを待ってるぜえ?」
「チートもねぇガキが調子のんなよゴラァ!!」
「てめぇら、殺っちまえええ!!!」
俺の目の前に立つ暴漢が魔剣の切っ先を俺に向けて後ろにいる集団に指示をする。その直後、チート暴漢集団が俺に襲いかかった。
「はぁ……こんな奴らがいるから結婚する人減るんだよなああ!!!」
背中から刀を抜いた途端、勢いよく青い炎が刀身から噴き出しながら纏った。刀を持つ右手を後ろに構え、そのまま地を蹴って一直線に飛び込む。
「オラオラァ!! ぶった斬っちまうぜえっ!!?」
正面にいる暴漢に向かって左斜め斬り上げを喰らわせる。血飛沫を上げながら斜めに真っ二つに斬られると同時に青い炎が刀の軌道を追うように迸り、一直線の暴漢達が吹き飛ばされる。
「音ゲーみてぇにシャンシャン音立てながら譜面叩くのも良いけどよぉ、たまにはじゃんじゃんモブ共ぶった斬るのも良いよなあああ!!!」
こんな状況に訳の分からない事を言いながらチート使いの暴漢集団を斬りまくる。しかしその刹那、背後から冷気を感じた。
「相変わらずガキは馬鹿しかいねぇなあ! 後ろもよく見ねぇと迷子になっちまうぜ?」
「うっせぇんだよジジイッ!!」
ジャリイイインッ、と魔剣と刀が甲高い音を立てながら刃先を滑らせる。魔剣の切っ先が頬を掠った。そこで俺はある事に気づく。
「なっ……こいつら全員同じ人じゃねぇかよ!」
「ようやく気づいたか! これが俺のチート!『無限分身』だぜええ!! あひゃひゃひゃっ!!!」
ゾルデが変な笑い声を上げながら一斉に分身達が襲いかかってくる。全員同じ魔剣、同じ能力、同じイカれた性格……
「へっ、てめぇみてぇな奴が可愛い女の子とイチャイチャするなんて想像出来ねぇなあ!!」
「黙れクソガキがああ!!」
俺は再び青い炎を纏った刀を正面に構えて分身達を待ち受ける。四方八方から魔剣が振り下ろされる――
「ただのクソガキだと思ったら大間違いだぜええ!!」
俺は右手で柄を強く握り、青い炎で刀身を延長させる。そしてそのまま全身の捻りを使って水平に一回転する。
「残念だったなあ! ぜ〜んぶ偽物だゴラァ!!」
「残念だったなあ! 今のでもう二度と分身作れねぇようにしてるから本物見つけるのも時間の問題だぜええ!」
「なっ――!?」
俺はゾルデと同じ言い方で形勢逆転を伝えてみせた。ビビってるチート使いも中々見どころだ。
「この青い炎に当たっちまうと〜っ、チートが使えなくなっちまうんだぜえ!!」
「て、てめぇっ……!!」
俺の刀から放たれる青い炎……『浄化の豪炎』は他人のチートを封印及び浄化する事が出来る。これもあの暴漢の分身と同じくチートの一種だ。しかし大きく違うのは、これは対チーター用に特化したチートなのだ。
もちろんこれは俺しか持っていない唯一無二のチート。そんな俺についたあだ名は『チートブレイカー』。その名の通り、最強を超えた権化の破壊者という意味である。
「だから言ったろお!? 女の子達を待たせてねぇで逃げろってよおお!! こういう事なんだぜえ!」
この倉庫の中を埋め尽くすほどいた分身があっという間に数えられるほどまでに減った。これだと一分も経たずに倒しきれる。
「もうお前殺せば終わっちまうぜ?」
「――!!」
分身が全て消え、チートが使えなくなったゾルデは全身を震わせていた。刀を振り払って炎を消すと、俺はゾルデの首に刀身を向ける。
「ひぃぃっ!!」
「俺は優しいから逃がす猶予をやるよ。大人しく尻尾巻いてイチャイチャする事をオススメするぜ。くははは!!」
ゾルデは言うまでも無くその場から離れ、魔剣を投げ出して倉庫から逃げた。
「はぁ……、いい年でこんな事して恥ずかしくねぇのかっての……」
俺は小声で愚痴を吐きながら床に転がり落ちたゾルデの魔剣を拾う。黒曜石のような色をしており、片手剣よりは大剣に近い大きさだ。
「武器良くても使用者があれだったら見映え悪くなっちまうよなぁ……」
中々の重さでかなり使いやすいが、使ってる人がチート気取りの女たらしなのであまり使いたくない。
「こいつはルリさんのとこに預けとくか」
刀を背中に納め、代わりにゾルデの魔剣を持って俺は倉庫から出ようとした刹那、頭がくらくらした。
「あっ……、がはっ……」
若干熱くなってる腹部を見ると、先程喰らった魔剣の一撃による傷が更に広がっていた。
「くそっ……この魔剣もチートだってのかよ!!」
血を吐きながらそれを確信する。しかし、分身と魔剣……さっきのゾルデは二つのチートを持っている事になる。そこまで読めなかった。俺とした事が不甲斐ない。
「あ〜やべぇなこれ……。死ぬ、かも……な…………」
右手から魔剣が滑り落ち、甲高い音を立てながら床に落ちる。その後、俺は前のめりに倒れた――
「あの、大丈夫ですか……!? しっかりして!!」
倒れてすぐ、聞き覚えのある可愛らしい女性の声が少しだけ聞こえた気がした――
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