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レ・コーダ

作者: 物部がたり

 新しい元号が発表される間際に、れいの祖父は亡くなった。

 ガンだった。

 最初に発見されたのは肝臓であり、すでに各部位に転移して医者に余命三ヶ月だと告げられた。ドラマなどで見たことのある余命宣告だが、医者の余命宣告は占い師の当たるも八卦当たらぬも八卦のような曖昧模糊たるものでなく、科学的に裏打ちされた的中率の高い宣告であった。

 そこまでガンが進行するまでに検診していれば助かったかもしれないが、れいの祖父は病院嫌いで検診はよっぽどのことがない限り受けたことがなかった。


 元気だけが取り柄のような人だった。

 そんな人でも、余命宣告されてからは早かった。治療の見込みなく、ガン細胞が祖父の脂肪をエネルギーに変換し成長するのをただ見ていることしかできなかった。

 祖父はみるみる骨と皮になり、皮膚を持った骸骨に等しい姿となった。

 祖父は弱音を吐かない人であったが、同じ病室の人々が一人、また一人と亡くなるを見て、死を身近に感じたときには見舞客が帰り夜一人になったとき、辛い胸の内を身内に打ち明けることもあった。

「次の元号なになるやろな」

 祖父が訊いた。

 れいは答えられなかった。恐らく祖父は元号が発表される前に余命宣告通り亡くなるであろうと感じていたからだ。


 れいは祖父がガンだとわかったときも、身内の人々が泣いていたときも冷静に眺めているだけであったが、祖父と二人っきりになると初めて泣いた。

 祖父も黙って、目を潤ませていた。

 それから半月もしない内、弱音を吐かない強い祖父でも薬の副作用に耐え切れず延命措置を辞めて、危篤に入った。危篤に入って二日後の深夜、祖父が亡くなったという連絡が、静かに告げられた。別れの儀式が流れるように進められ、やっと落ち着いたころに新たな時代を告げる元号が発表された。激動の激しい昭和、平成を生きた人生であった――。

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