第6話 出会い
ポツンポツンと雨が降ってきた。
一旦、俺は彼女とこの場から離れ、二人が待つ車まで戻った。
「はじめ 遅かったな! また道草くってたのかよ」
「いや、ちょっと色々あって――さ、悟?」
悟が両手で自分を抱くようにしてガタガタと肩を震わせていた。
さむいさむいさむいさむい と独り言をブツブツと呟いていた。
「確かに雨降ってきたからな」
雄大が呑気に言うが、悟は寒がるというよりむしろ…
「ねぇ、はじめ君?」
「え! うん?」
彼女から名前を呼ばれ少し驚いた。
「この上にさ、誰もいない廃墟があるんだけど、そこで雨をしのがない?」
「え、知ってたの?」
「うん、私もここへ来た時に、最初に見つけて友人達としばらくそこにいたの」
その話を聞いて納得がいった。
「昨日、俺も坂を上がってその廃墟を見つけたんだけど、
人影をみたんだ。あれはもしかしたらその友達かもしれないな」
「そうなんだ! 良かった、じゃ一旦、あこに向かわない?」
俺がそう話していると雄大が
「なんだよ、はじめ。廃墟があるなら雨しのげるじゃんか、はやく言えよ」
「ごめん、黙ってるつもりはなかったんだけど」
この時にあの化け物のことも言うか考えたが、悟の体調や雄大の性格を考慮すると今は黙っている方がいいか…
雄大から念のために持って来ていた傘を渡され、雨足が強まる中、俺達4人は廃墟へと向かことを決めた。
傘は二本しかなかったため、雄大と悟。
俺とこの子が傘をさして道を行く。
「ねぇ、はじめ君」
「どうした?」
「私ずっと一人で心細くて不安だったんだけど、出会えてよかったよ」
そう笑顔で話す、ん? 名前!
「そういえば、君の名前、聞いてなかったね」
「あ、うん、私は、未海」
「おけ、未海ね。覚えた! バッチリ」
「後ろの二人のお名前は? さっき呼んでたのをチラッと聞いたけど」
「あの傘を持ってんのが雄大で、今は体調を悪そうにしているのが悟」
「わかったよ。後で私も改めて自己紹介するね」
雨で足元は悪くなっているが、迷うことなく坂道を行き、無事に廃墟へ辿り着いた。