第5話 遭遇
無我夢中で森の中を駆け抜ける。
どこまで走ればいいのか、後ろからまだ悪寒がする。
背中に ぞわぞわ と伝わってくる。
ガサガサ ガサガサ
横から音が聞こえた。
まさか既に横には――
横を向いた時、人が飛び出してきた。
「な!!」
俺はぶつかった衝撃で転がり倒れこんだ。
「痛っ……」
「ぃてて。ごめんね、大丈夫?」
手を差し出してきたのは、雄大でも悟でもなかった。
見たこともない女だった。
頭の中では疑問や回答がいくつも浮かんだ。
けれど
話したいことや聞きたいことはあるが、それは今じゃない。
「ちょっと、どこ行くの?」
「話はあとだ! ついてきてくれ!!」
俺はその手を取って一刻も早くこの場から離れた。
「とりあえずこの辺までくれば大丈夫か…」
そこはまだ道中よりも森が開けており、見晴らしもよく襲われる心配がなさそうな場所ではあった。
「急に連れてきてごめん」
「いいよ、まさか、人と出会えるなんて」
「? もしかして、君もここで迷っているのか?」
「そうだよ、何日か前に友人達と海に出かけてる途中だったんだけど、事故があってそれで」
「俺も一緒だ。まさかこんな偶然があるなんて」
境遇が同じだが彼女の方が先にこの森へ到着していたみたいだ。
「友達達は?」
「分からない、みんなとはぐれてしまって」
「そうなのか、なら一緒にいたらいいよ。この道の先で俺の友達もいるし」
「いいの?」
「そりゃそうだよ、一人より大勢の方が安心だろ?」
「ありがとう」
「さっきみたいな化け物もまた出くわしたら危険だしな」
「あいつ、ね」
「あぁ―――でもここなら安心だから」
「ねぇ、安心ってなんでわかるの?
「え… なんでって言われても――」
「ここに来た事あるの?」
「いや…―――」
ここに来たことは勿論ない。ないはずなのに……
なんでここが安心だと分かった?
俺は――