第4話 動転
俺は必死に辺りを探した。
風で飛んでいったのか? そんなことありえない。
野犬や動物の仕業か?
「とりあえず落ち着けよ はじめ」
「うるさい!! もとはといえばおまえらが寝ているからこんなことに!!!」
俺は、ハッと気が付いた。
もしかしたら……
―――コイツらが?
汗が頬を伝い流れた。
二人は嫌そうな表情を浮かべ俺のことを見る。
その感じが堪らなく苛立ちを覚えた。
この怒りをぶつけないように、辺り一帯を無我夢中で探した。
「一人じゃ危ないよ~」
悟の気遣う声が聞こえたが、今ただ癇に障るだけだ。
無視して昨日、上った廃墟とは真逆の方へと降りて進む。
草が多い。
虫も…… あーイライラする。
なんでこんなことに。
歩く度に草木がスニーカーに絡まる。
うざい うざい うざい うざい
自分でも感情が高ぶっているのが分かる。
もーどうにでもなれ
そんなことを思いながら草木をかき分け進むと、何かに躓きコケてしまった。
「ッ…… って。なんなんだよ」
足元を見ると白骨化した遺体が転がっており、その遺体の頭部の口がつま先に引っ掛かったのだ。
「ぃいッ がいこつ――!!?」
急いでつま先から頭蓋骨を取り外し、その辺に投げ捨てた。
この場所では昨日から変なことばっかり起きる、――もう嫌だ。
もう自分がおかしくなっていく。
とことん嫌気がさした。
倒れていると、また昨日の時みたいに奥の草がガサガサ、ガサガサ、と動いた。
「おい、雄大だろ?! 今日は付いてきたのか?!! なぁ」
ガサガサ、ガサガサとまた草が動く音が聞こえる。
「なぁって――はぁ…」
俺は立ち上がり、上から雄大の様子を見ようと近くの岩に登った。
「昨日は驚かせられたからな、今日は俺が――」
そんなことを考えていたが検討が外れた。
雄大でもなければ野犬でもない。
おぞましい見たことのない生物がこっちに向かってゆっくりと進んできていた。
下半身は蛇のように長く、幅は人の胴体の二倍ほど太く、通った後はナメクジのように湿っていた。
上半身は蜘蛛のように人の腕が生えており、両目には、人間の目がある辺りに3つの目玉が集まっている。
「ひッ――」
俺は咄嗟に身を屈めようとしたが体が強張って反応が遅れた。
そのせいで、【やつ】と視線があった。
「あ――あっ」
やばい やばい やばい やばい!!!
【やつ】は6本の腕を地面につき這いずりながら、物凄い勢いで迫ってきた。
逃げなくきゃ 早く、動けよ 俺!!
岩から転げ落ち、地面に打ち付けられても態勢を立て直し、全速力で車がある方へと走り出した。
落ちた時の痛みはない、アドレナリンのせいなのか。
そんなことよりあいつはやばい、あんな生物見たことない。
―――ここはなんなんだ!!!――