第3話 動き
しばらく足を止め立ち止まったが、さっきの人影や悟の言葉が頭をよぎる。
居ても立っても居られない。
この場から無性に走り出したくなった。
俺は左の道を降りていくことにした。
進むに連れ、茂みが多くなった。
更に進むとまた分岐が
「なんだよ これ」
行きにはなかったのに
やはりさっきの分岐、道を間違ったのか
時間はかかるが引き返そう
そう振り返ると、さっきまでにはなかった草が自分の顔辺りまで伸び、道が無くなっていた。
「え、は? なんで……」
頭が、処理が落ち着かない。
「これは、きっと、この暑さのせいだ こんなこと起こるはずが」
混乱していると茂みの奥からガサガサ、ガサガサと何かが動いた
こっちに向かって一直線に向かってくる。
足が固まって動けない。
ほぼ目の前の草が動いた瞬間、
「ひッ――」
思わず声が漏れた。
草から出てきたのは雄大だった。
「はじめ、お前、あまりにも遅いから探しにきたぞ」
「雄大…… びっくりさせるなよ」
「お前が、おせーんだよ」
「そんな時間経ってないだろ?」
「何言ってんだよ、もう夕方だぞ」
雄大の言葉を聞いて空を見上げて気が付いた。
さっきまで昼だと思っていたが既に夕方だった。
「ちょっと俺――疲れてんのかな……」
「だろうな、なんか顔色悪いぞおまえ」
言われて俺は疲れてるんんだと自覚した。
俺と雄大はその場所から再び悟が待つ車の前まで戻った。
「はじめ~大丈夫?」
「大丈夫、熱中症になりかけてるのかも。少し休めば平気さ」
俺は車のドアを開け、勇気の死体横に転がるコンビニ袋を取り出した。
その袋には海に行く前に寄ったコンビニでおにぎりや水等の食料が入っている。
これで何日か凌ぐしかないな。
雄大や悟も各自で車から食料を取り出した。
「もう夜になるな。 今日はここで野宿しようか」
獣に襲われることを危惧して、俺達は雄大が普段タバコを吸うのに使うライターの火で小枝や葉を燃やし、
2時間おきに交代で眠ることに決めた。
最初は雄大が眠り、次に悟、そして俺の順番だ。
特に何の会話をする訳でもなくただ火を眺めているだけだった。
自分の番が来て俺は眠りに入る、
寝ている間に夢を見た。
離さない 大事 勇気の指 指輪 消失 悶える光景。
よく分からない夢だった。
ふっと起きた。
光が森を照らし、朝のようだった。
「なんだ、誰も起こしてくれな……」
目が覚めた俺が辺りを見ると、雄大も悟も眠っていた。
「なんだよ、結局全員寝てるじゃ――!!」
俺は大事なことに気が付いた。
「え、ないない……ない ちょ ――ない!!」
取り乱して焦っていた俺の言動に二人も目を覚ます。
「どうした? はじめ」
「ないんだよ!! 食料が!! ここに置いてあったはずなのに」