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殻のココロ呪  作者: ネコるんるん
1/8

第1話 到着

大学の夏休みに入り俺達四人は予定を合わせ海を目指している途中だった。




そもそも海へ行こうと言い出したのは、自分達の彼女候補を探すためと言う不届きな理由と


せっかくの長期休みなのだから青春を謳歌したい、そういった理由からだった。


こじんまりした低燃費の軽自動車を運転しているのは、チャラついていそうだが根は真面目の


【丘島 悟】


友達思いの良いやつだ。




そして助手席に座り足をフロントガラスの方に向けて組んでいるのが


【岡田 雄大】態度がでかくて調子にのりやすいが、このメンバーの中ではずば抜けて臆病だ。


そして、後ろの席でずっといびきをかきながら爆睡しているのが【召田 勇気】こいつも態度はデカいが小心者だ。


これだけ説明しといてなんだが、俺こと【白亜 はじめ】は一番のビビりで慎重者だ。




長時間運転しているせいか欠伸が止まらない悟が眠気覚ましに


「なぁ、海に着いたらさ、まず何する? 




「そりゃ勿論ナンパだろ」


そう答えたのは助手席で携帯をいじっている雄大だった。


「雄大は女のことしか考えてないからな」


予想通りの返答に悟はため息を吐く。


「じゃ はじめ何したい? 砂浜でお酒?」




「いや、俺は酒いいや。帰りは俺が運転するし」


俺の返答を聞いた雄大が


「ちょ、ノリわりぃな。そんなんじゃ女に逃げられちまうぞ」




「俺はそこまで、―――」


言いかけた時、ふと思い出した。




思い出したというよりどこか気がかりな、変な違和感を感じた。




「あのさ俺達、どこの海に向かってるんだっけ?」








「は、どこって…… そりゃ―――どこだ?」


雄大もどこの海へと向かっていたのか覚えていない。




運転している悟でさえも考えこんでいる。




名前を思いだせないだけじゃなく、場所さえもおぼろげのようだった。


大体の位置や方向だけで悟は車を走らせていたのだ。




俺は一旦、車を止めて場所の確認をするよう促したが悟は


「いやだ!!!! 車は止まらない!!!!  停めない!!!」




急に大声で荒げる悟に驚いた雄大と俺。


「何そんな大きい声出してんだよ。お前おかしいぞ!」




そう言った雄大に対して悟は


「そっちこそ……何言ってんだよ」


明らかに悟の目の焦点が合っていない。




「はじめ… こいつやばいぞ。クスリでもしてんじゃねぇのか」




あの悟がこんな感じになっているのは初めて見た。


「とりあえず悟、一旦落ち着こう? な?!」 




俺と雄大は悟に車を再度止めるように促すが、ハンドルを頑なに握りしめ離そうとしない。




更に悟はアクセルをべタ踏みして車の速度を上げる。


「おわっ!! 悟!!」


無理にこのまま止めれば重大事故に繋がらない。




海まで10㌔。


そうトンネルの上に書かれた標識の下を潜りトンネルの入り口に差し掛かる。


トンネルの中はライトが切れており、自動車のライトだけが前方の道を照らしていた。




何か気味が悪い。


雄大も悟の雰囲気にあてられたのか、段々と顔色が悪くなってきている。




全員が無言になるも車だけはスピードを緩めることなく真っすぐ走る。


ポツ、ポツとフロントガラスに水滴が落ちた。


「なんだ、雨? そんなわけ――」


俺は横の窓を見ると、窓の向こう側にはびったりと張りつきながらこっちを見てくる異形の顔があった。


挿絵(By みてみん)


恐怖のあまり声を出すことさえ忘れた。




考えてもみろよ。車、今何キロ出てんだよ。


明らかに人じゃない。


眼をギョロギョロと動かし人数を数えるように視点を変えていく。




「あ、、あ」


声が出る!!


「ぁあああ雄大!! 横!! 横!!!」


雄大が俺の叫びを聞いて振り向いたが、その時にはもうその顔は消えていた。




「え、顔が… 顔が今、つい今まであったのに」


雄大は俺までおかしくなったかのように冷たい視線を送っては何も言わなかった。


いや、もしかすると怯えていたのかもしれない。




車はトンネルを抜ける。


トンネルの暗闇から解放され光が差し込み、思わず目をつぶった。


またこのまま海までの道のりを行くのだろうと考えていた。




けれど俺の答えとは違った。




車は急停車をかけ、後輪が滑り、木に車のサイドから衝突した。


その衝撃で俺達は気を失い気絶した。




「ん、皆は――!!っ」


目を覚ました俺は横の勇気の安否を確認しようとした。


それがまさか


「おぇえええっ」




車ではいびきを欠きながら隣の席でずっと眠っていた勇気。


その勇気が死後何週間も経過したような姿で腐り果てていた。


異臭が車の中に立ち込める。




その臭いでか前の二人も目を覚ます。


「ぅッ――なんだこの臭い」


俺達は倒れこむように中から車のドアを開けて外に出た。




事故が起きた時、まず大事なのはパニックにならないこと。


俺は平常心を保つよう自分に言い聞かせた。




けれどこれは事故なのか…




俺はもう一度勇気の方に視線を向けようとしたが、


「うッ――」


再度吐き気を催した。




「おいおい、――どうなってんだよ。悟!! ここはどこなんだよ!!」


四つん這いで嘔吐している悟に雄大は怒鳴るが悟は返事をしない。




けれど悟はスッキリしたのか笑顔で叫ぶ雄大と俺に笑顔を送る、


「この状況でおまえ…」




悟のその顔がやけに気味が悪い。


けれど雄大が叫ぶのも当然だ。


さっきまで高速道路を走っていたのに、トンネルを抜けたら道が消えていたのか、よく分からない森に突っ込んでいたからだ。








幸いなことがあったと言えば三人はほぼ無傷で、車に関しては柔らかい樹木がクッションになったからなのか車体はそれほどダメージは受けてなかった。




車は走れそうだけど、通ってきたと思われる道が前にも後ろにもない。


しかも今、中の惨状を見れば再度車に乗ろうとは思わなかった。




「と、とりあえず携帯で助けを――」


ポケットから携帯電話を取り出し警察と救急に連絡を入れようとしたが


「圏外?! え」




俺の言葉を聞いた雄大も慌てて携帯を取り出し確認すると


「おれのは一本だけ電波があるぞ。すぐに電――!!」


悟が雄大に飛びかかり携帯を奪おうとする。


雄大も必死に抵抗しながら叫ぶ。


「なに すんだよ!!! やめろ!!」




「それはダメだダメだダメだ!!!!!」


さっきまでの笑顔が嘘のように豹変する。




「こ、こいつ、力、つよっ!!」


力づくで雄大の携帯を取り上げた悟。


俺も止めに入ろうと走り出したところで悟は


口をがばっと大きく開けて携帯を丸のみにする。


まるで蛇が獲物を飲み込むように顎の関節を外したようだった。




悟は落ち着いたのか平常心を取り戻し再びいつもの笑顔に戻る。


「おまっ!―――俺の携帯をぉおお!!」


雄大が怒りながら悟の胸ぐらを掴み突っかかるが悟はケロッと平然としている。




「雄大!! やめろって!! おい!!」


すかさず俺は雄大の腕を掴み引き留めた。




「はじめ! 離せよ! こいつだけはホンマに許せん!!」




「落ち着けって! 今どうこうしたって仕方ないだろ!」




「いや! 絶対殴る!」




「だから殴っても仕方ないだろ!! 無事に帰れたら悟に弁償してもらったらいいじゃないか」




「当たり前!! それと利子も貰わないと話にならん」




――それから話は続き、不満を吐き出した雄大は取っ組み合いの疲れがドッと来て雄大は落ち着きを取り戻した。




疲れて顔を塞ぎこむ雄大と何を考えているのか、蝶々を追いかける呑気な悟。




二人の様子を見ても当てにすることは出来そうにない。


俺がなんとかするしかない、そう気持ちが沸き上がった。




冷静に状況を整理し把握するために




ここはまずどこなのか、


無事に帰れるのか



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