29 勇者 6
売国奴として討たれた兄のせいで騎士団から追放された令嬢騎士レイシェル。
そんな彼女の前に最強を自負する転生者にして霊能者・ノブが現れ、秘宝探索の旅へと誘う。
迷子を捜しに入った森の中で、レイシェルの旧友がいる事を知る二人。
勇者ドリルライガーを仲間にし、二人は旧友を救出したが――。
植物の怪獣は、倒されるや見る間に萎び、朽ち果てていく。
エリザはその根本でへたり込んでいた。
「エリザ! 大丈夫?」
彼女の肩を掴み、呼びかけるレイシェル。
「レイシェル‥‥」
半ば惚けた様子でエリザが見上げた。
「ええ、私ですわ。貴女が無事で良かった‥‥」
レイシェルの目尻には、僅かばかりの涙さえ浮かんでいた。
今の状況を拒むように、首を横にふるエリザ。
「なんであんたが無事なのよ。そこの魔術師を倒してあんたを連れて帰る筈だったのに」
何を言っているのかわからず、レイシェルは少しの間、何も言えなかった。
「え、エリザ….…何を言っていますの? 魔王軍に精神操作でも‥‥」
なんとかそう絞り出すように訊くがーー
「よくそんな都合良く考えられるわね。あいつらがあんたを探してうちの騎士団を襲った事は知っているんでしょう?」
恨みがましい目でレイシェルを睨むエリザ。
肩を竦め、ノブが「やれやれ」と呟いた。
「その恨みがなぜレイシェルに向かうのか。疑問はそこだな」
「こんな女、もともと嫌いだったわ。フレディは騎士団で一番顔も家柄もいい若手のホープだったのに! ある日、隣国からぽっと出てきて、婚約者って! その上、剣も魔法もよくできて! 目障りだったのよ、ホントに!」
怒鳴るように叫ぶエリザ。
レイシェルが後ろによろめいた。
「エリザ‥‥私といつも仲良くしてくれていたのに‥‥」
そんな彼女を睨むエリザの目に、涙が滲んでいた。
「あんたのグループにいれば上位組でいられるからそうしただけよ! これから没落するだけのあんたを見て、やっと“ざまあ”って思えたのに! 私は騎士団も家も潰されて、あんたは救いの手があったとか‥‥ずるい!」
レイシェルは言葉を失って俯く。
旧友の変わり様がショックだった。変わらないでいてくれた、と思った相手だっただけに。
と、そこへラルド少年が恐々と顔を出す。
「エリザお姉ちゃん‥‥なんで泣いてるの? 痛いの?」
ただならぬ雰囲気なのは幼子でもわかる。だが話の内容までは理解しきれていない。
だから、自分を助けてくれた少女――幼い少年からなら大人に見えるだろうが――が泣いているのを見て、とにかく心配になったのだ。
そんな少年から、エリザは顔をそむけた。
彼の視線が辛かったからだ。
「その子を村へ連れて帰るんでしょ! 私、行くから!」
そう叫んで立ち上がり、じりじりと後ろへ下がる。
それを見てジルコニアがニタニタ笑う。
「お、うやむやのうちに逃げようとしてるぞ。誤魔化されずに斬り捨て御免しねーか?」
妖精の言葉に、エリザはびくりと肩を震わせた。
「エリザ」
レイシェルが旧友を呼ぶ。
エリザは震える手で、背に隠し持っていたショートソードを抜いた。
ノブが右拳を握る――相手の出方次第で容赦なく叩きのめすために。
「ラルドを守ってくれてありがとう」
レイシェルは微笑みを浮かべてそう言った。
陰のある、何かを堪えた笑みだったけれど。
エリザは剣を握る手を震わせて怒鳴った。
「反吐が出そう! そんなに良い子ぶりたい? 私があんたを捕まえるために来た、その巻き添えに決まってるでしょ! ついでにあんたを怪獣の所へおびき寄せるための道具にしてね」
怒鳴りながら嘲笑する。
怒鳴って泣きながら。
レイシェルは頭をふる。
「直接人質にでもすれば、私達はもっと苦戦していましたわ」
「そうすれば良かったわ! 死んじゃえ!」
もはや笑いも浮かべずそう叫ぶと、エリザは森の奥へ走り出す。
時折つまづきそうになりながら、木々の陰に姿を消した。
ドリル戦車形態で何も言わずにいたドリルライガーが、ランプを明滅させながら訊く。
『行かせるのですか? まだ話す事があるのでしたら、捕獲するのに手を貸しますが』
旧友の走り去った方を見つめながら、レイシェルは答える。
「いえ、村へ戻りましょう。この子達を早く帰してあげないと」
そう言って、エリザの背を辛そうに見送るラルドとタリアの方を見た。
設定解説
・ドリルライガー
ある世界の地球が守護者として生み出した七つの勇者の一つ。
1990年代にその地球を襲った星間帝国の侵略に立ち向かうべく、リーダーとして選ばれた小学五年生の少年によって覚醒する。
仲間と共に戦い一年に及ぶ戦いの果てに勝利はしたが、ドリルライガー自体は最終決戦で敵の幹部と相打ちになって爆発した。
‥‥筈だったが爆発の直前にこの世界・インタセクシルに召喚されており、破壊された体を修復されて一命をとりとめる。
それ以降、今度はこの世界を守るために魔王軍と戦う事を決意。各地を転戦し、この物語に登場する場面へと至る。
兄弟と三体合体して力の勇者ビッグライガーに変形合体できたのだが、この世界に兄弟は召喚されなかったので、バラ小メカのまま戦っている。
よって一撃必殺の火力には乏しいが、装甲の強度と回復系コマンドで粘り勝ちしてきた。
合体時、彼の担当は両腕。一応変形機能はまだ健在だが、でかい両腕だけでは動けないので今のところ無駄な機能になっている。
武装は両腕に収納されているマシンガンと両肩のドリル。
ドリルを突き刺すショルダータックル「ライガーボム」が主な攻撃方法だが、ドリル戦車に変形して突撃する「ドリルチャージ」が最強武器。
29話時点のステータス
レベル20
格闘190 射撃176 技量209 防御167 回避114 命中128 SP89
スキル:ケイオス3 ヒーロー2 底力4
【スピリットコマンド】
ガッツ:HPが30%回復。
アクセル:移動力+3。
ヒット:短時間の間、命中率が100%になる。
プロテクション:短時間、敵からのダメージが1/4になる。




