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2 邂逅 2

字が読める方々にこのような注釈は不要だと思いはするが、自分は良心的(自己基準)な人間なので、念のために記させていただく。


ヒロインは令嬢ではあっても悪役ではありません。

誤解なきよう。

あとタイトルに「もう遅い」を入れ忘れましたがそれこそもう遅いですね。

 婚約者に、友人達に捨てられ、独り帰郷するレイシェル。

 巨大ロボに乗って森の中の街道を歩く……その途中。

 国境近くの森の中にて、彼女は少し離れた所から上がる煙を見た。


 地図によると小さな村がある筈だ。煙の量は――田舎村の生活で出る量ではない。そう、火事でもなければ。

 (いぶか)しんでいると、レーダーに反応があった。ある程度以上の数か大きさを示す反応が。


(見に行きましょう。何事もなければそれで良し。もし魔物が人里を襲っているなら……戦わなくてはなりませんわ)

 レイシェルはそう決断し、人造巨人を煙の方へと向かわせた。



――そして、事態は悪い方へと転がった――



 火と煙の中、レイシェルの乗る人造巨人が衝撃で揺れる! 彼女は悲鳴を必死に噛み殺し、機体の目で敵を睨んだ。

 やはり村が襲われていた。魔物によってだ。魔物はゴブリンやオーク等、ありふれた種族の混成部隊。統一された規格の鎧を纏い、そして……人造巨人に乗っている奴らがいた。それも複数体!

 そして歩兵の一人が掲げる旗には見覚えがあった。


(やはり魔王軍!)

 歯がみするレイシェル。


 敵のケイオス・ウォリアーは、重装歩兵(ホプリテス)のような姿の、剣と弩で武装した巨人。それらBソードアーミーは最も普及してる量産型ケイオス・ウォリアーである。

 一方、レイシェルが乗っている銀の騎士・Sエストックナイトはオーダーメイドのカスタム機であり、性能では敵の機体を全面的に上回っていた。


 だが彼女は独り。敵は多数。

 こうなると短時間に何度も攻撃を受ける。この世界では多数の攻撃により敵の逃げ場を無くす連携――通称連続ターゲット補正――が確立されており、それにより著しく苦戦を強いられる羽目になる。


 さらに彼女の機体はいつもよりパワーが落ちていた。彼女の精神が落ち込んでいる影響を受けて。


 ケイオス・ウォリアーは操縦者と一体化し「自分の大きな体」として動かす。それは魔法の鎧を造る技術を起源に持つ兵器が故の特性だ。操縦者を巨大超人へと変身させるための兵器、と言ってもいい。

 そのため、操縦者の精神的なコンディションにも大きく影響される。人間が肉体の耐久度や振り絞る力に精神の影響を受けてしまうのと全く同じく、出力や装甲の強度に操縦者の精神状態が影響してしまうのだ。


(現実を受け入れたつもりでしたけど……私、そんなにも気に病んでいたのね)

 彼女は二人の兄をどちらも慕っていた。名高い公爵家に誇りをもっていた。代々スイデン国を守る武家の血筋に自信があった。

 それら、それらが、全て残らず、数日前に届いた情報で瓦解したのだ。

 敬愛していた兄の死、敬愛していたもう一人の兄の裏切りで。


 魔王軍の巨人兵達が剣を構え、大股で近づいて来る。勝利を確信し、とどめを刺す気だ。

(村人は? 避難できたの?)

 モニターに周囲のMAPを映して急ぎ確認するレイシェル。人影は……無いようだ。


(良かった。クイン家の名についた汚れを、最後に少しだけ拭き取る事ができましたわ。私がここで果てようと……)

 死の恐怖に怯えながらも、レイシェルは僅かな慰めを感じた。

 そして腕に力をこめ、己と一体化した巨人に再び剣を構えさせる。

 後は、見事に討ち死にするだけだ。



――だがその最後の望みは容易く断たれた――



 敵機の一つが頭を吹き飛ばされ、直後、爆発!

『え!? ナニ?』

 通信機から驚愕した魔王軍兵の声が漏れる。

 何が起きたかわからないのはレイシェルも同じだ。だがモニターに映った新たな機影を見つけ、乱入者が現れた事を知る。

 その乱入者へと魔王軍の一機が襲い掛かった。


 だが魔王軍の機体が爆発!

 それも頭を吹き飛ばされたが故だ。


 頭部を失った胴体が倒れ、乱入者の機体がレイシェルの視界に入る。

 炎と煙を背にした、輝く巨人が。


 白みがかった金色の――薄い琥珀のような鎧。それを纏ったケイオス・ウォリアー。

 関節部は黒く、(へそ)の辺りには半透明の球体が緑色に輝いている。

 その機体はマントを羽織っていた。炎の風を受けてはためく、巨人サイズのマントを。

 そしてその頭部は……人間を模った物では無かった。

 緑色の複眼が輝く、まるで虫のような頭。後頭部が背中に繋がっており、ある種の飛蝗(バッタ)のようでもある。

 その機体から通信が入った。


『レイシェル=クインだな。探していた。僕を助けてもらいたい』


 青年……あるいは少年か。若い男性の声である。

 周囲で燃え盛る炎。その中で彼はレイシェルに言った。

 自分を探していたという言葉に驚くレイシェル。さらにこの状況で「助けてくれ」と要求してきた。絶体絶命のレイシェルに、である。


 言われた彼女は茫然と見上げるしかなかった。

「あ、貴方はなんですの?」

 戸惑いながら声を振り絞るレイシェル。

 相手の答えは――


『僕はノブ。地上最強の霊能者(サイオニック)だ』

設定解説


・魔王軍

この世界インタセクシルに現れ、人間の国家群へ侵攻する魔物達の群れをこう呼ぶ。

なぜか有史以来現れ続け、前の軍が壊滅しても時間が経つと新たな指導者が「魔王」となって新たな軍を立ち上げる。

魔王の種族や目的が共通しているわけでもなく、この世界の人々は「時間が経ったらわいてくるもの」としてある意味受け入れている。


魔王軍と戦うための有効な手段を求めた結果の一つが「異世界から勇者となれる者を召喚する魔法」であり、

この世界には異界から呼ばれた勇者が魔王を滅ぼした記録が無数に残っている。


この時代の魔王は「暗黒大僧正」を名乗り、空戦大隊・陸戦大隊・海戦大隊・魔怪大隊の四軍団で人間国家を攻撃していた。

だが物語開始の少し前、海戦大隊は異界から来た勇者達に大隊長が討たれ、事実上壊滅している(前作のエピソード)。

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― 新着の感想 ―
[一言] 悪役(の妹)令嬢(笑)。
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