出発
「それにしても、なんて威力だ。 想像以上だな。
flyFさんが感心そうに言った。
「ぜひ一度、怪異庁に来て欲しい。 神器の譲渡などについても調べておきたいのだ。」
「何日ぐらいで返してもらえます? 単位が……」
「一日で十分だ。 明日、午前11時に連絡する。 メールアドレスを渡して置こう、個人使用もしているやつだが。」
「了解です。 あの、さっきから気になってたんですが、なんで巫女の格好を?」
つい聞いてしまった。
「呪符の威力を上げるためには必要なのだ。 似合ってないか?」
「とんでもない、惚れ惚れするほどお似合いですよ。」
山下が割って入る。
「ありがとう、自信が持てる。ではこれぐらいでお別れといこう。 後日、また。」
そう言うと、flyFさんは巫女服姿のまま、外に着地させていたらしい戦闘機で去っていった。
「凄い体験だったな、柳川。 神器だってよ。」
「山下、怪異庁に貢献できそうになったな。」
「無理だけはすんなよ? 何されるかはまだ分かって無いんだぜ、解剖されるかも。」
そんなこと言うなよ、怖くなるだろ。 ついつい山下を睨みつけてしまった。
会話を終えた後は、布団に戻り、就寝した。 二人ともサメのせいで疲れ果てていたので、朝まで起きることはなかった。
「おはよー! 柳川! 朝だぞ!」
「うるせぇ!!」
「調子良さそうだなぁ!」
朝からハイテンション過ぎる… 寝起きにはきつい声だ。 スマホにはAM10時と映されている。 そろそろ時間か、出発の準備をしなくちゃだな。
バッグには財布、スマホ、あとは護身用の催涙スプレーを一つ、念のために入れておいた。 山下はいざという時は拳で立ち向かうと宣言している。 あいつってあんなに脳筋だったか? 疑問に思い、部屋に落ちているゴミをよく見ると、全てプロテインの残骸だった。
「うわっ…… 山下って今筋トレでもしてるのか?」
「ああ! 廃病院で知ったんだ。 俺はまだまだ弱いと、力をつけ、お前を守り抜いて見せるぜ、騎士のようにな。」
私の居ない間に山下の頭はおかしくなったらしい、怪異庁へ行った帰りには、精神科医にでも診てもらおう。
「準備は出来たか? 山下、出発の時間だ。」
「おうともよ、時が来た。」
flyFさんからは、市役所で待っているとの連絡が来ている。 私は未開の地に心を躍らせ、出発した。