プロローグ 「おい力抜けよ」
俺の夢はなんだって? はは。そりゃイケメンたちの穴という穴を俺のエッフェル塔で侵略することだ。
と、俺が言うと友人たちは皆揃って俺の背中をバシバシと叩きこう言った。
「へへへ、じゃあ俺たちめっちゃ危険じゃんかぁ」
口元から零れる白い歯。俺の背中を子気味よく打つ血管の浮き出た筋肉質の腕。
俺にだけ見せるそんな無邪気さが欲望を刺激する。
「いや、本気だから。雄二、今夜一発どうだ?」
「やべぇぇ、俺の貞操がピーーーンチ!」
笑みを浮かべながら俺から逃げるように走っていく、田中雄二 17歳、誕生日は1月14日5時14分。血液型A型身長181センチ。
魅力の塊のようなホモサピエンスのオスが俺を誘惑するように陸上で鍛えられた尻をふり俺を誘う。
セッツ。
クラウチングの構えをとる。
俺のエッフェル塔は既に臨戦態勢だ。照準は既に雄二の穴を捉えている。
「あはは、やべぇ雄二ピンチ! 位置についてぇ?」
そう言って俺の横に立ちイチモツを顔の横に添える遠野太一。随分余裕そうだが、雄二の次はお前だ。
「よぉぉぃ? どん!」
――俺は野獣になる。
勢いよくスタートを切った俺は全速力で廊下を駆ける。
「くそぉはえーよ多田野! 俺陸上部だぜ!?」
「俺はまだまだいけるぞ」
既に目前まで迫った雄二の尻は、その揺れを更に激しく躍動。
それにつられるように俺は自らの本能を解き放っていく。
ジグザクにイチモツを揺らしながらステップを踏む雄二ではあったが、とうとう限界が来たのか速度が段々と落ちていった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
雄二の荒い息がフレグランスのように空気と混ざり合い、俺の鼻腔を刺激する。
活力はみなぎった。もはやこれまで。
俺は横目で使われていない理科準備室の扉を目視し、勝利へと腕を伸ばした。
伸びていく俺の腕。その先には雄二のぷりんとした尻が気だるげに蠢いている。
「オワリダ」
俺の腕が雄二の尻を捉えかけたその瞬間――ふと体が軽くなるのを感じた。
まさか……これは……新境地か?
確かに俺のイチモツは高速に動く足の前後運動と雄二によって最終形態に変化しつつあったが……これは……。
驚いたのはそれだけではない。目の前にいたはずの雄二の姿はそこに無く、俺の真横で必死な形相をしながら俺へと腕を伸ばしている。
……相思相愛、という事でよろしいか?
俺は胸いっぱいに幸せを感じながらその腕をとろうと……。
瞬間、激しい痛みが俺を襲った。
隕石が落ちたかの如く視界は揺れ、ゆっくりと世界が白く染まっていく。
「やべぇよ……やべぇよ……」
雄二の……声。
「どうするんだよ……」
「おい! すごい音がしたがお前達階段で一体なにを……アッー!」
混濁していく意識の中で俺は、届かなかった筋肉たちの叫びを……確かに……耳にした。