幽霊とおデート
とにかく楽しんで戴けたら嬉しいです。
デート当日。
待ち合わせは近所の公園のベンチ。
先に着いた蘭が待っていると大助の身体に取り憑いた清友が小走りでやって来た。
「蘭さーーん! 」
手を振って内股でちょこちょこ走る大助の姿に蘭は少し戸惑った。
「ごめんね、遅れて
待っ……………………………」
蘭の眼の前で清友はダイナミックに転び、地面に見事なスライディングをした。
「………………た? 」
蘭は屈んで言った。
「随分、派手に転んだなあ」
清友は笑顔で起き上がり言った。
「あはっ、また転んじゃった
これで五回目
身体動かすのに、まだ慣れなくて
何せ五年振りだから」
蘭はまじまじと、服に付いた泥を落とす清友を見詰めた。
「やっぱ、中身が変わると雰囲気変わるもんだな
山口は? 」
「人の恋路に首突っ込むほど物好きじゃ無いって、寝てます」
二人は取り敢えずベンチに座った。
蘭は脚を組んで座り、清友は内股で座っていた。
「色々考えて午前中はウィンドウショッピングしませんか」
「ウィンドウショッピング? 」
「お互いの趣味とか解り合えていいかなって思ったんですけど
嫌ですか? 」
「いや、楽しいんじゃない」
「じゃ、決まり」
清友はにっこり笑った。
奇妙な二人はファンシーショップやオモチャ屋などが建ち並ぶ商店街に繰り出し、まずは蘭が音楽好きと云う事で、CDショップを訪れた。
「危なっ………………! 」
蘭の叫びも虚しく、清友はCDショップの入り口のドアに思い切り激突した。
地面にひっくり返った清友の傍に屈むと蘭は言った。
「あそこまで無防備に、ドアに激突する奴、初めて見たよ」
「ドアは通り抜けられるものと云う概念が抜けなくて」
清友は苦笑いした。
「清友っ!
てめえ、人の身体もっと大事に扱えっ! 」
「ごめーん」
「ごめんで済むかっ! 」
「山口、あんまり喋るな
端で見てると異様な光景だ
可成り変な人だぞ」
大助は沈黙した。
しかし、清友は別の商品棚に行こうとして、商品棚に激突したり、壁の向こう側を覗こうとして頭を強かに殴打したり、CDショップだけで大助の身体には大量の青アザやこぶができあがった。
ファンシーショップでは、清友は誰も居ない売り場で屈み込み、何か言っていた。
戻って来た清友に蘭は訊いた。
「座り込んで、何ぶつぶつ言ってたの? 」
清友は笑顔で答えた。
「病気で死んだ五歳の娘が居て、お父さんもお母さんも夜帰っちゃうけど可愛いのがいっぱいあるから淋しく無いんだって」
清友は後ろを振り返ると誰も居ない壁に向かって手を振った。
「清友、変な行動は慎め
オレが変な人に思われるだろ! 」
「山口が話すだけで充分変人に見える」
大助は黙った。
あちこち見て回った後、ファミレスで昼食を摂り、午後からは映画を観ることにした。
「こっ、これ観るの? 」
清友は焦って言った。
「アタシ、こう云うのメチャクチャ好きなんだ」
映画はスプラッターホラー。
二人は並んで座り、映画を観た。
残虐なシーンになると、蘭は身を乗り出し、清友は悲鳴をあげて蘭の肩にしがみついた。
「映画終わったよ」
蘭が清友の肩を叩くと、清友は眼を開けたまま失神していた。
こうして敢え無く清友と蘭の初デートは幕を閉じた。
清友は失神しているので大助の身体に留まっている事ができず、気絶したままふわふわと風船の様に浮かんで、大助に手を引かれ帰路についた。
「いってえ!
人の身体だと思って好き放題しやがって、清友の奴」
「それじゃ、ずーっと起きてたのか? 」
浮かぶ清友の手を掴んだ大助と蘭は並んで歩いた。
「あんな、しょっちゅうぶつかったりコケたりされたら痛くて寝てられるかよ
あちこち痛くてしょうがないや」
蘭は大助を見てクスッと笑った。
「それでも気前良く身体貸すあたり山口らしいよ」
十階建てのマンションの前を通り掛かると大助はふと思い出して言った。
「そういやさ、夕べここで飛び降り自殺在ったんだってな」
「ふーん」
と、言った蘭の肩を二つの青白い手が掴んだ。
大助も蘭も、それに気付かなかった。
読んで戴き有り難うございます!
残り後一話です。
ここまで読んで下さり有り難うございます。
最後まで読んで戴けたら幸いですぅ。
実はこの作品のタイトルですが、今回のサブタイトル、幽霊とおデートだったんですよお。
しかし、娘が言うには古くさ過ぎると云う事で、
ポゼッストゥバイラブになりました。
そこで一言。
古くさくったって、しょうがないよお。
歳なんだからあ!
明日も宜しくお願いします。