34 王宮剣術大会 ~準決勝~
2戦目、氷魔術師、3戦目弓使い、4戦目……
オレは順調に勝ち進めていた。
≪さあ、続いて準決勝1試合目!
炎魔術師エイデンと聖騎士ユノー、舞台へあがれ!≫
ファーガス様の熱い実況を観客は喜んでいた。
歓声の中、エイデンとユノーが現れた。
二人の戦いは、はじめ互角の様相を見せた。
とはいえ、炎魔術師であるエイデンだが、にやけながら剣術のみで相手をしており、ユノーはそれに怒りを募らせていた。
まるで剣舞でもするようにエイデンは舞台を踊りまわり、ユノーは槍でそれを追い回した。
追いかけているうちに、ユノーの槍はエイデンをとらえはじめ、ついには槍先がエイデンの頬をかすめた。
「ついに我が槍がお前をとらえたぞ。
炎魔術師エイデン、魔法も使わずなめやがって」
「別に舐めてたわけじゃないさ」
エイデンは飛び上がって舞台中央に剣を突き刺した。
「魔法陣を書いてたんだよ、特大のな」
エイデンがそう言うと、空中に文様がうかびあがる。
文様は赤い光を放ち、魔法陣となって緩やかに舞台の床に落ちた。
すると、舞台全体を炎が包み込み、エイデンとユノーを隠してしまった。
「な、何が起こっている?」
炎の中にいるユノーは混乱した様子だ。
「くく、このまま炎をアンタにぶつけても良かったんだけどなあ」
≪紅炎の剣≫
エイデンが呪文を詠唱すると、舞台を包む炎は中央の剣に収束していった。
エイデンが舞台中央から剣を抜き放つと、炎はすべて剣にまとわりつき、紅々と刀身を光らせていた。
「さあ、オレの究極武器の完成だ。
かかって来いよ」
「く……くそおおお!」
冷静さを失っていたユノーはエイデンへ突撃。
エイデンが剣を十字に振ると熱風が巻き起こり、ユノーを襲った。
「ぐあああああ」
ユノーは熱風を浴びせられ、その場に崩れ落ちた。
「どうした?
まだやるかい?」
エイデンはツカツカとユノーに歩み寄った。
「ま、まい……」
ユノーが降参しないうちに、エイデンが魔法剣をユノーに叩きつけた。
「ぎああああああ!」
性根の腐った野郎だ、最後の一撃がなくとも、もう勝負は決まっていた。
ユノーは降伏するつもりだったしな。
黒こげのユノーを見下ろし、エイデンはこぶしを掲げる。
≪勝者、エイデン・ラッセル!≫
観客からは歓声が巻き起こった。
降参しようとしたユノーに魔法剣を食らわせたニュアンスが、観客席からはわからなかったのだろう。
「ぐ……」
ユノーからは消え入りそうなほどだが、息遣いは聞こえている。
救護班が慌てて駆け付け、医務室へユノーを連れて行った。
余裕の笑みを見せるエイデンとすれ違った。
「次はお前の番だぜ、レオン」
「……エイデン、お前にも痛みをわからせてやる」
≪準決勝、第2試合、剣聖シラノ対、死霊術師レオン、両者舞台へあがれ≫
次の相手は、剣聖シラノ。
なかなかの大物だ。
流しの冒険者で、それぞれの街で依頼を受けて生計を立てているらしい。
だが、傭兵として人を殺めるのは好まないらしく、戦場には行ったことがないと聞く。
それゆえ、オレは一度も会ったことがない。
夜の眷属なども、討伐歴がある凄腕の冒険者であることは確からしいが。
魔法も使えないと聞くから、かなりの肉体を誇っているのかと思っていたが、目の前にいるのは細身の優男だ。
顔に刻まれた皺が年齢を物語っているが、かなりの美形ではある。
背はオレよりも少し低く、一見、武芸者とは思えないほどだ。
武装も、胸当てと籠手以外は、普通の旅装と変わりない。
「お噂はかねがね聞いております。
レオン様。
一度、手合わせ願いたいと思っておりました」
強者のうわさを聞けば、手合わせ願いたいと思うのは武芸者の本能みたいなものだな。
互いに武器を構えた。
≪それでは、両者見合って……はじめ!≫
「行きますよ!」
≪先ほどの戦いとはうって変わって、果てしない剣のぶつけ合いだ!
白骨騎士たる黒騎士が、剣聖シラノの攻撃を正確にはじき続けている!≫
「ははは、こんなに強い白骨騎士は初めてですよ」
確かな剣筋だ。
自分の身長を優に超える長剣を軽々と操り、繰り出されるすべての剣閃が正確に急所を狙っている。
人の域を超えようとしている剣だ。
だが、父の剣のほうが、よほど重かったぞ。
≪おお、黒騎士の剣がシラノの攻撃を完全にとらえた!
無数の剣の連撃を、あえてぶつけ黒騎士の力を見せつけるかのようだ!≫
「くっ……押されていますね。
いかに強化された白骨騎士とはいえ、こんなに鮮やかに剣を操るとは……」
≪おっと、シラノが守勢に回った!
恐るべき速さの連撃を黒騎士が繰り出した!
力で押されたシラノが吹き飛ばされ、態勢をくずしたところに黒騎士が必殺の横薙ぎを繰り出すが、シラノ、たまらず後ろ飛びをしてかわした!≫
「はあ……はあ……おかしいですね。
私の力を超える力の白骨騎士と戦っても、私は必ず倒してきました。
いかに力を持った白骨騎士であるとしても結局のところ、動きはパターン化しているはず。
数度、刀を交えれば自ずと隙が見えてくるのですが」
シラノは、黒騎士の剣をだいぶ体力を失っているようだ。
倒れそうな体を剣を杖代わりにして、何とか体を支えていた。
≪おっと、体を休ませるいとまなど、黒騎士は許さない!
一直線にシラノへ突撃してきた!≫
シラノは剣を納刀し、必殺の一撃で迎え撃つつもりだ。
納刀した。
居合だな、ならば。
≪黒騎士の突撃に合わせて、シラノは必殺の一撃を繰り出す!
納刀のまま構えて一閃!
黒騎士は突撃をピタリと止め、体をひねって一閃をかわした!≫
剣をシラノの首筋へ。
「攻撃を途中で止めて体をひねってかわすなど……こんな生きた剣、白骨騎士にできるわけがない……まるで……そうか、そうだったんですね」
シラノは剣を下ろし、両手を上げた。
≪剣聖の必殺の一撃をかわして見せたぞ、白骨騎士!
勝者、死霊術師レオン・スチュワート!≫
観客は剣術の名試合に大喜びだ。
魔法同士の戦いより、剣術の方が見ごたえがあるらしいな。
観客が総立ちで拍手をしていた。
≪それにしても、強いレオン・スチュワート!
本人は一歩も動かず決勝へ駒を進めた!≫
いよいよ、エイデンとの戦いだな。
下卑たその笑顔、屈辱に歪めてやるからな。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマークや評価など、励みになります。
次回更新、12月5日予定です。
次回以降もお付き合いしてくれると嬉しいです。




