33 王宮剣術大会~初戦~
オレが入場すると、観客の割れんばかりの拍手で迎えられた。
円形の客席にずらりと観客がひしめいていて、一番上の特別席には王女がいた。
とはいっても、王女の前にはついたてがあるし、だれかと会うときにはそれに加えて扇で顔を隠すから、オレは王女の顔を見たことはない。
だが、王女を危機から救ったとき、ついたて越しではあるが、対面することが出来た。
二言、三言ほどしか言葉を交わしていないが、声を聴くだけで、嬉しさもひとしおだった。
王女を救えたことは、オレにとってとてつもない栄誉だった。
だから、論功行賞でその栄誉を汚されたことが、オレにとっては許せない。
優勝して、もう一度王女に会いたい。
気合を入れなおして、初戦に臨もう。
≪それでは、王宮剣術大会を始める!≫
声を増幅させる魔法で、会場中に開催宣言が響き渡る。
しかし、妙に太い声だな。
どこかで聞いたような……
≪第一試合、ゴーレム使い「オルグ・スノー」対、死霊術師「レオン・スチュワート」
両者、闘技場の舞台中央まで進め!≫
オレと対戦相手は、舞台中央に進んでいく。
対戦相手は大きな袋を持った小柄な男。
オレと目が合い、会釈をしてきた。
「はは、お手柔らかにお願いします。
レオンさん、武勇は伝え聞いております」
そういった後、オルグ・スノーはてきぱきと袋を開き、土くれを取り出す。
そして、袋を裏返しその上に土くれを積み上げた。
オルグは右手にぐっと力を込め、魔法陣を発動させた。
まばゆい光を放った後、ガタガタと音がして、ゴーレムが積みあがる。
≪両者剣を持て、はじめ!≫
戦闘開始が告げられ、ゴーレムがズシリズシリと近づいて来る。
それに対し、こちらはずっと止まったままだ。
≪どうした、レオン殿!
巨躯のゴーレムに臆したか!≫
止まったままのオレに対して、実況から檄が飛ぶ。
……誰だよ、って思ったけど。
あの人しかいないな。
≪ワシとお主の父に続いて優勝するんじゃなかったのか、レオン殿!≫
観客席がどよめきだす。
そりゃそうだ。
引退して隠居を決め込んでいる、ファーガス元将軍が実況解説を務めているんだからな。
「さて、どっから攻めてくるんです?
ゴーレムと白骨騎士、真正面から戦わせても勝ち目はないと思いますよ」
オルグは自信に満ちた笑みを浮かべていた。
ゴーレムは強く、白骨騎士は弱い。
一般的にはその通りではあるが。
≪その通り、どうするんだレオン殿!≫
ジリジリと進撃してくるゴーレムの体とオルグを互いに見つめ、攻め方を探していたんだが、ファーガス将軍が煽ってくるな。
「見極めた。
行くぞ」
≪黒騎士が動いた!
突撃に合わせて繰り出されたゴーレムの右手の一撃を、ひらりとかわし、連撃をゴーレムに繰り出していく。
この剣技は、まさしくスチュワート家のもの!
そうか、その黒騎士はレオン殿の父親の白骨騎士なのだな。
であれば、ゴーレムと互角の戦いをするのも納得というもの!
皆の者喜べ、優勝経験者が白骨騎士として戻って来て、この大会を盛り上げてくれるぞ!≫
客席からは割れんばかりの歓声。
知ってはいたが、父の人気をあらためて感じさせられた。
≪とはいえ、剣の連撃を食らってもビクともしないゴーレムにしびれを切らし、黒騎士はゴーレムの攻撃をかわしてオルグへ向かっていく!
オルグの目の前に黒騎士が迫る!
オルグは絶体絶命か?≫
オルグは目を見開いた。
「ククク、残念でした。
レオンさん。
ゴーレム使いのボクは、自分が狙われるのには慣れています。
何も備えもなく、ボーっとしてるように見えましたか?
ボクの目の前で自慢の黒騎士を消した後、レオンさんの本体をゴーレムでなぶり殺しにしてあげますよ!
≪炎の渦≫!」
オルグの詠唱に合わせて、黒騎士の足元の魔法陣から炎の渦が……巻きあがらなかった。
「え?
え?
何で魔法陣が発動しないんです?」
≪魔法陣が発動しなかった! そうか!
魔法陣には大きく×が刻まれている。
黒騎士が突撃した際に、剣で図形を破壊し、魔法陣を無力化していたのだ!≫
「く、くそ!
ゴーレム、ボクを守れ!
何してるんだ!」
オルグの呼びかけにもゴーレムは動かない。
「ググ……」
ゴーレムは膝から崩れ落ちた。
ズズズウウンン。
≪ゴーレムが倒された!
黒騎士が剣を持って近づき、オルグの首筋に剣を突き立てた!≫
「ま、参りました……」
オルグはがっくりとして頭を垂れた。
≪第一試合、勝者はレオン・スチュワート!
戦闘は黒甲冑の白骨騎士に任せ、自分は一歩も動かず勝利を決めて見せた!≫
通常の人間では歯が立たないゴーレムを倒したことで、観客は大いに盛り上がっていた。
気を取り直したオルグは、ゴーレムの状態を確かめに行った。
「体の各所に仕込んだ魔法陣が潰されています……ゴーレムの知識があって、相当な剣の腕がなければこんな芸当はできません。
……完敗です、レオンさん」
オレは白骨騎士を引き連れ、舞台を後にした。




