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01 婚約破棄 

「レオン、あなたとの婚約を破棄させてください」


 隣国との戦争の帰途、馬を駆るオレ――レオン・スチュワートは上機嫌だった。

 6か月にも及んだ従軍の疲れも、オレの居城で待っていた婚約者で幼馴染のビビアンを見かけて吹き飛んだ。

 父から譲り受けた漆黒の甲冑や全身を覆う黒いローブの重さも気にならないほどに――

 早くビビアンと話がしたかったオレは並走する従者に馬を近づけてオレの馬の手綱を握らせると、馬から飛び降りた。


「ちょ、ちょっとレオン様!」

「悪い、馬扱いの得意なお前なら二体同時に止められるだろ?」


 器用に手綱で馬2体を操作する従者を尻目に、オレはビビアンを目指して駆けだした。

 

 背筋を伸ばしたビビアンはいつものように赤茶色の髪をくせっ毛を丁寧にまとめ、髪と同色のドレスを着てオレの帰りを待っていてくれたのだ。

 自分の城に居たってオレの方からすぐにでも会いに行ったのにと、オレは満面の笑みを浮かべてビビアンに走り寄って行ったんだ。

 そのオレに向かってビビアンは開口一番、婚約破棄という言葉と、冷たい瞳をオレにぶつけた。

 ビビアンは取り乱したオレの質問に一切答えてくれなかった。

 「お父様が決めたことですから」と吐き捨てるように言った後、オレの制止を振り切って用意してあった馬車に乗りこむと、逃げるようにしてオレの領地を後にした。

 突然の出来事にオレは混乱していて、ビビアンを引き留めたくて宙に浮いたままの手すらそのままにして呆然と立ち尽くしていた。


 ☆★


――オレとビビアン・マクマナスの婚姻は貴族には珍しく恋愛から発展したものだ。

 もちろん家格が釣り合うからっていう理由もあるんだけど。

 父の武功で男爵から成り上がった、いわば成り上がりの子爵にマクマナス子爵は対等の付き合いをしてくれていた。

 オレの親であるスチュワート子爵と、マクマナス子爵は仲が良く家族ぐるみでお互いの家を行き来していた。

 子どもの頃、ビビアンはいつもオレの後をついて回っていて、一緒にいるときはどこに行くのも何をするにも一緒だった。

同い年のオレたちは年頃になってからは互いに意識するようになって……

 だから、ビビアンはオレの幼馴染で……初恋の相手だったんだ。

 初恋の相手と結ばれることなんてないって物語では言うけど、オレはビビアンと結婚するんだって子どもの頃からおぼろげに思っていたんだ。


 それなのになぜ婚約破棄なんて言うんだ。

 何だよ、あの冷たい視線。

 それにお前、オレに敬語なんて使ったこと一度もなかったじゃないか。

 

 呆然と立ち尽くしていたオレは、ふらつく足取りで自分の城に戻った。

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