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その①

映画『プロメア』を観て思いつきました。

人類の生存を賭けた宇宙への脱出計画。

ロマン溢れますね。

ここはとあるビルの一室。

5人の面接官にあらんかぎりのアピールをする男がいた。

彼の名は仁野誠(ひとの まこと)

"市民"としてノアプロジェクトに参加しようと応募した者だ。


2xxx年の地球では至るところでこのような光景が見られた。

間近に迫る遊星の地球衝突から難を逃れるために人類は選別された100万人を宇宙へ脱出させようと計画していた。


それがノアプロジェクト。

人類の多くはこの限られた生存の権利を得るためにやっきになっていた。


今後の人類の発展に欠かせないと思われる1000の職業をもとに人選は行われ、各界のエキスパートたちが既にプロジェクトへの参加権を得ていた。


しかし、特にこれといった技能がない人々のためにも"市民"枠が用意され、誠のような小市民がその座を巡って必死のアピール合戦を繰り返していた。



「ふーむ、仁野さん。やはりあなたの能力では"市民"枠での参加は難しそうですな。」


5人のうちで真ん中に座る一番偉そうな男が誠に告げた。


「そ、そ、そんな!そこをなんとか!」


「とは言ってもねえ。大した特技も無いんだから…。」


誠は良くいって普通、悪く言えば無個性な人間であった。

いや、誠だけではない。この時代の多くの人間はそうなのだ。


「不平を漏らさぬ人間」「飛び抜けていない人間」こそがこの時代の教育が作るべき理想の人間像であり、国が求めた人間像であった。

そのような人間ほど権力は御しやすかったのである。



誠は追い詰められた。

これが最後のチャンスなのだ。

これを逃したら「不能者」の烙印を押されて二度と面接には参加できなくなる。


なんとしてでもここで参加権を得なければ…。


人間追い詰められたときに真価を発揮するものだ。

誠は自身でも忘れていた特技を思い出した。


「ま、待ってください!私は…カラスの鳴き真似ができます!」


面接官たちは苦笑した。


「いやね、仁野さん。カラスの鳴き真似が出来たからって人類の存続にどのような寄与ができると言うんです。まあ聞きますけど。」


誠は全神経を喉に集中させた。

このチャンスに賭けろ…!


「くぁー。くぁー。」


誠のカラスは面接官たちの侮蔑的な表情は瞬時に真顔へと変えた。


「これは…。」

「ええ。確かに…。」


やった。

かなりの手応えがあった。

誠は内心ガッツポーズをきめた。


「ふむ。仁野さん。あなたのカラスはたいしたものだ。」


「では僕もノアプロジェクトへの参加権を頂けるのでしょうか?」


面接官たちは顔を見合わせた。


「ええ。ただし条件付きです。」


「条件?」


「世間ではあまり知られていませんがノアプロジェクトには"人間枠"の他に"動物枠"もあるんです。この"動物枠"であれば参加を認めたい。」


「動物枠ですか?」


「ええ。冷凍遺伝子とは別に実際の動物を連れていく予定なのですが…普段の日常を維持するためにね。ただ、動物を連れていくのなら人間を優先させたほうがいいのではという声もありましてね。」


「はぁ。仮に動物枠で参加した場合、どのようなことをすればいいのでしょう?」


「まあ…カラスとして船内で生活してもらうことになりますなぁ。」


「はぁ。」


誠はいまいち理解ができなかった。

カラスとして生きる…?


それでも自身が何とか生き残れるかもしれないチャンスを得たのだ。

これを逃してはならない。

一族のほとんどは既に"不能者"の烙印を押されてしまっているのだ。

なんとしてでも自分は命を未来につながねば…


誠はカラス枠での参加権を獲得した。

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