エリーナ・ガーディ(1)
エリーナ視点です!
何かが割れるような音が頭の中で響き,それと同時に制御のされていない強大な魔力が体にのしかかった。この感覚には覚えがある。この感覚は[エリーナ・ガーディ]の100年程度の短い生で2度目となるものだ。人間が50年振りに行った世界を越えた召喚魔法による空間の揺らぎ……そして異世界人の魔力だろう。
「また……戦争が始まるのかしら…………」
人間は、度々戦争を吹っ掛けてくる野蛮な種族だ。魔族を悪とし,排斥し,弱い癖に難癖をつけてくる。そして奴らは、関係のない異世界人を定期的に召喚して戦争に巻き込む。魔族と呼ばれる私たちであっても悪魔の所業だと思う。
「……今回の異世界人はどんな子かしら」
異世界人にも様々な人間がいたと言われている。前回の人間は,暴力的で化け物として処理されていたが、200年前に召喚された人間は人間側では勇者ともてはやされていた…………などと考えていたら念話が送られてきた。
《エリーナ・ガーディに告ぐ。直ちに召喚された異世界人を監視せよ。場合によっては保護することも許可する》
仕事だ……。相手はこの世界を知らない無関係な人間故に攻撃なんてしない。今代の異世界人もただの監視で終わるだろう……と楽観視していた。焦ったのは魔都を出発してすぐのことだ。
(わざわざ召喚した人間を殺そうとするなんて…………まさか今代の異世界人は黒の髪か瞳を持っているの?)
今までの、異世界人の記録にも黒目,黒髪の者は数人いたらしい。そんな異世界人は基本的にその場で処理されて、召喚失敗と報告されているとのことだ。
「魔力がまだ感じられる! つまり……まだ死んでない。保護してあわよくば戦力に出来れば御の字ってところかしら」
時折、魔力を感知しずらくなるが、隠密系統のスキルを無意識のうちに使用しているのだろうと一人で納得し、急いで異世界人の居場所へ飛んでいく。
(この精度の隠密なら,大抵の人間は気付かない…………私も意識を向けているから、この垂れ流しの魔力が感知出来ているだけ。これなら保護はできる)
飛行速度を更にあげて飛ぶこと1時間と少し……
「召喚の儀式のために結界を張ったのね……」
人間の領地に侵入して数メートルの位置に『察知』『拒絶』の2つの性質を持った結界が張られていることに気付く。大方、私たちが直ぐに駆けつけれないようにしたのだろう。実際に、結界を破壊せず,人間に気付かれもせずに侵入するのは困難だ。
「私がたどり着くまでに殺されないでね」
そんな事を呟きながら結界を弄くる。
自分と異世界人が出入りしても察知されないようにと四苦八苦していたら3時間近くも時間が過ぎてしまっていた。異世界人の分に2時間ほど費やしてしまったのが大きい。幸いにもまだ彼は生きている。魔物や獣に出会わなかったのだろうか? 出会っても生き残れるだけの力があるのか……それとも《危険察知》などのスキルを持っているのか。
「今回の子はなんだか暗殺向けの能力を持ってるのねぇ」
などと呑気に飛んでいたらいきなり魔力が感知出来なくなった。死んではいないはずだがこれは焦る。どこにいるのかわからないため、保護をしたくても出来ない。広大な森をしらみつぶしに探すのは骨が折れるのだ。
「厄介ねぇ。これで召喚されて間もないとか……敵対したくないタイプね」
深夜と言ってもいい時間帯。月が出ているため空を飛んでいては目立つ。人間に見つかったら面倒な事になると考えたエリーナは歩いて異世界人を探すことにした。
「夜行性の魔物がこの辺りに少ないのが悪いのよね。本当に面倒なんだから……」
時折休憩も挟んで探すこと5時間半……。すっかり日も顔を出してしまった。しかし、まだ見つからない。気配が感じられない。
「……こんなことならもっと仮眠を取ればよかった」
睡眠不足は乙女の敵……魔族ならば一週間ほど眠らずに行動できるがそれはそれなのだ。ため息をつこうとしたがあることに気付いた……。
「魔力が感知出来る!」
魔力の出所を把握してエリーナは飛んだ。
(この魔力で間違いない。彼が異世界人ね…………髪が黒いのね。あぁもう! 本当にあいつらは自分勝手なんだから!!)
見つけた少年は黒髪だった。予想通り黒を持っていたために内心で、人間を罵倒する。少年も此方を認識したのか慌てて逃げようとして転んでいる。それを見て落ち着かせるのが先だと考えたエリーナは優しくを意識して語りかけた。
一話で纏めようとしたけど出来ませんでした。なので次回もエリーナ視点です!(たぶん文字数は大幅に減るとは言えない)




