堕ちた勇者(6)
あ……あれ? 戦闘が長引いた……サラッと流す予定だったのに。
焔,水,氷,石(と言うか岩),木葉に蔓……翠の魔法が四方八方から襲いかかる。俺は兎に角、避けて避けて被弾して避ける……えぇ,全てを避けるなんて芸当出来ませんとも。
翠による的当て(的は勿論俺)が始まり体感で一時間(実際は二十分前後)……無駄な抵抗とか真の絶望って奴をリアルタイムで味わっている。
「……て言うかおかしくねぇか!? いくら……確りと,魔力…………を練れてない……とは言っても! 木葉が火の玉…………突っ切って来ると……か!」
魔力量が負けてるとは言え、相手は複数の魔法を使いこちらは一種類。魔法の練度……戦闘経験の差が,込められている魔力の差として明確に現れている。その結果、俺の被弾回数(と言っても掠るだけですんでいる)が増えていく。
(……どうしよう。怪我が増えるだけで、俺の魔法は翠に当たらないどころか途中で飛散するし……まぁ,《超回復》のせいで怪我は直ぐに治るけどエネルギーは勝手に消費されるし……)
『ウザイ……ヨケルナ……サッサト死ニナサイ』
「怖いんですけど!」
ってヤバいヤバいヤバい! 突っ込み入れなければよかったかも! 魔法の追加とかマジ要らねぇ……避けれないってコレは!
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
水(めっちゃ圧縮されてるけど!)が腹に当たり吹っ飛ばされる。痛いじゃなくて苦しい……しかも、吹っ飛ばされて背中から木に当たった。受け身とか出来ない……なのに休めない。休んだらその瞬間に蜂の巣だ。木に隠れるのも無駄……木が文字通り一瞬で消し飛ぶから。水に一回直撃しただけで死にかけるとか……なにこのクソゲー。水の癖に威力高すぎて身体が千切れるかと思った……。
(《超回復》がなければ二桁は死んでたね……)
などと心の中でふざけていると(ふざけてないとやってられない)飛んでくる魔法が心なしか減少していることに気付く。
(……? 理性を取り戻した様には見えないけど)
この場で咄嗟に反撃に出なかった俺を誉めてやりたい。反撃に出たら死んでいただろう……何が起きたかって? 翠の奴が《地》に属する魔法で巨大なライオンを創りやがりましたからですよ! しかも四体,囲むように!!
「無理! 無理無理無理無理むーりー……コレは死ねるからぁ!」
ライオンに包囲され,逃げ場が狭くなり,四方八方から魔法が飛んできて,ライオンに近づけば爪や牙,近づかなくても爪が(物理的に)飛んでくる。空では翠が嗤ってる。
(正気に戻ったら覚えてろよ!!)
この気持ちを支えにこの状況を乗り切る気力を振り絞る…………気力なのよね
「マジ……で,ゴホッ手立てが…………ないんですけどぉ!」
体力も尽きてきて、避けれなくなってきた。怪我も治らなくなってきたし……詰んだ。
「ガホッ! 〜〜〜〜〜〜〜!!」
喉に氷の礫が当たり雷が左足を貫通する……腹に蔓の鞭が,右の肘と肩に飛んできたライオンの爪が刺さる
(クソ……タレ…………こ……んな……処で……死んで……たま……る………か。意識を……し…………かりと持……たない………………と…………………………)
「み……どり…………」
俺の意識はここでなくなった
* * *
何か暖かいモノに包まれている……そんな感覚がして、俺の意識は浮上した。
「……ぁ…………ぅ………………」
声が上手く出なかった。目も開かない……と言うか開けたくない
『治れ……治れ……治って! 早く目を覚まして……死なないで…………』
翠の声だ……この暖かいのは翠の魔力なのか? 正気に戻ったんだな……よかった。何か水滴が落ちてきた……コレは翠の涙か。レイスの状態でも涙って出るんだなぁ…………て言うか泣くなよ……後でお仕置きし辛くなるだろうが…………。
(あぁ……ダメだ。眠い…………翠に大丈夫……だって言わないと……いけな……い…………の……に……………………)
〜翠side〜
(声が聴こえる……最近聴いたような気もするけど…………誰だったっけ?)
思い出そうとするけど思い出せない……頭が働かない。けれど私は、休む間もなく攻撃を……あれ? 何で私はこの人を攻撃してるんだっけ?
(王国を滅ぼそうとしてたはずなのに…………彼は私の邪魔をしようとしてるの?)
だから攻撃したのかな? なら
『ウザイ……ヨケルナ……サッサト死ニナサイ』
また避けられた……しぶといなぁ。もっと手数を増やさないと……あぁ……やっと当たった
(……? まだ動けるの?)
なら少し本気を出そう…………
(あれ? 何で私は今、攻撃を躊躇ったの?)
まぁいいや……魔法で囲んで叩こう。考えるのは後ででいいや。彼もしぶとかったけど…………ほら,これで終わり。その程度で私を止めようだなんて甘かったのよ。
「み……どり…………」
(……あ……れ…………? 彼は……彼…………は)
『あ……ぁ…………タク……マ……いや……………いや……タクマァ!』
私はなんて事を! タクマが来てくれたのに……どうすれば…………
『まずは回復させないと! 怪我も魔力も体力も……急がないと手遅れに!』
本能に飲まれるなんて……いいえ,それは言い訳でしかないわね。
『絶対に死なせない! 死なせるもんか……私なんかのせいで彼を死なせてたまるもんですか!!』
残りの魔力を使いきってでも……私が消滅したとしても死なせやしない!
〜翠side out〜
戦闘描写が下手ですいません……へ? 描写らしい描写ですらない? そこは言わないお約束。
ちなみに、翠が正気に戻ったのは
・魔力を大量に消費したから
・主人公をサンドバッグにすることである程度破壊衝動が収まったから
という理由があります。ご都合主義(微少)ですね
次はやっと封印が解かれます!




