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召喚されたら魔族と言われた  作者: 水島 香
人の国
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堕ちた勇者(5)

うはぁー! 終わらなかったぜぇ





 職員に追い出された俺は、いつも泊まっている宿に戻り訓練をせずに休んだ。明日は使ったこともない魔法を翠の補助有りとは言え使わなくてはならないのだ。普段よりも繊細な魔力制御を求められるはずなので、疲れを残してはいけないのだ。そして翌日、俺はギルドに行くことなくそのまま廃城まで走り続けた。そろそろ廃城の屋根が見えてくる……といった距離で『ドンッ!』と爆発でもしたかのような音が響き渡った。


「えぇ……なに? 何が起きたのさ」


 パニックになりかけた思考を一度空っぽにしようと深呼吸をする。魔都にいた頃に先輩冒険者が口うるさく言ってた言葉が頭を掠めたからだ。


「『回らぬ頭で行動するな。焦ればそれだけ死に近づくぞ』」


 一年前の俺なら何も考えないで現場に向かっただろう……しかしそれは愚策でしかない。情報が足りていないのだ。向かうにしても気配を消す事が最低条件。この場で得られる情報が有るなら手に入れる。


「《隠密》《魔力感知》《危険察知》」


 魔力感知をするまでもなく感じていた濃密な魔力を調べ、現状で俺がどれだけ戦えそうか調べる。曖昧にしか相手の強さはわからない……しかし、全く分からないよりはマシだ。


「……え? この魔力って禍々しいけど翠のだよな」


 まるで人間に呪詛を吐いていた時のような刺々しい翠の魔力が感じられた。しかも莫大な魔力量だと言われた俺と同等……否,それ以上の魔力を感じる。周りには生き物の気配はない。


「戦ってる訳でもないのに……何でこんな魔力を放出してんだよ」


 近寄ろうと考えても危険察知は問題なしと判断している様なので、戦闘したとしても死にはしないと思う。けれど……


「超回復の再生を前提とした判断だろ……これは」


 異世界に来てから死にそうになった事は何度もある……が、恐らく今回が一番ヤバい。どれだけ奇策を練っても勝負にならなさそうだ。殺されなくてもサンドバッグにはなるだろう。それなら隠れて封印を解くのがベター。ベストは逃げる。


「気が狂って無いとか嘘ついてんじゃねぇよ! 封印解いたらパワーアップして暴走するとかないよな? 正気を取り戻せよ?」


 落ち着く事を願って、俺は封印を解きに廃城に向かった。





      *      *      *




 気配を殺し慎重に進んだが、廃城周辺には魔物や獣が一匹たりともいなかったために大して時間をかけずに(元)城門前に着いた。恐らく魔物や獣は、翠の強大な気配を感じ取り逃げ出したのだろう……近辺の村が壊滅しそうで心配だ。


『殺す…………ころす……コロスコロスコロス。ヤツラハコロス』


(……うわぁ)


 翠の目が完全に逝っていた。無闇矢鱈と攻撃をしてないが、人を見つけたら有無を言わさず殺しにかかりそうな雰囲気だ。一瞬「封印を強化した方が良いかも」と思ってしまった。


「どうしよう……マジで」


 これは完全にレイスになってる気がする……レイスとは、死んだ当人の未練や怨みを全面に押し出した魔物だ。翠の場合は完全に死んでないままレイスとなると言うイレギュラーがあった為に、多少の理性が残って怨みを押さえられていた……と予想する。恐らく本来のレイスとはこんな魔物(もの)なのだろう。


『ソコにイルノハダレダ?』


 ……隠密のレベルも高いしこのまま地下まで行ける自信はあったんだけどなぁ。あっさりと見つかっちゃったよ


「……俺だよ,タクマ。流石に忘れてないだろ?」


『エエ……覚エテルワ。約束通リ封印ヲ解キニキテクレタノネ。オ礼ヲ言ウワ。デモ少シ待ッテテネ。今カラ王国ニ取ッテオキノ魔法ヲ放ツカラ……時間ハカカラナイワ』


 ……アウトです。


「ストップ,ストーップ! 何言ってんのさ……そんなのダメに決まってるでしょ!」


『何デ? ……肉体ガ無クテモ大丈夫ヨ。国一ツ壊滅サセルクライナラ私モ消滅シナイワヨ』


「そうじゃなくって!」


『……タクマモ私ノ邪魔ヲスルノ? ソレナラ仕方ガナイケドタクマモコロス』


 衝動的に止めたけど、これは最悪のパターンだ……この状態の翠を止められる気がしねぇ。早く正気を取り戻してくれるのを願うしかないな……。





次こそは……次こそは!

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