堕ちた勇者(4)
まだ終わらない!
翠と別れて町に戻った俺は、早速冒険者ギルドに向かった。
「タクマさん! お帰りなさい……調査はどうでしたか?」
出迎えてくれたのはいつもの受付嬢さん。被害らしい被害が出ていないとは言え心配してくれていたようだ。『堕ちた勇者』の封印された廃城故に何が起きるかわからないため、分からなくもない。
「レイスが出た原因を掴んだ……と言えば掴んだよ,うん。明日,明後日までには問題の解決は出来ると思う」
俺の言葉に彼女はとても驚いたようで「えぇ!」と声を上げ、直ぐに口を押さえた。
「本当にいってますか? こういう問題って普通は原因の特定でも一週間前後はかかりますよ。なのにもう解決の目処がたったのですか!?」
彼女は先程の反省を踏まえたのか、小声で叫ぶと言う矛盾した驚き方をした。(それに俺は驚いたよ)
「今回は偶々自分に合った依頼だったと言うだけですから。このような調査のノウハウは持ち合わせて無いので、確実に他の調査だったら多くの時間を必要としましたよ」
事実、今回は運が良かっただけなのだ。レイスの正体が翠で、翠は日本人(とオランダ人のハーフ)だったために、同郷の俺をすんなりと懐に入れてくれたのだ。召喚された者と言う共通点のみであったならば、おそらく半日程度であんなに話が盛り上がることは無かったであろう。
「今回の報告はこれだけになりますのでこの話は終わりです。今回の移動ついでに薬草と魔物を狩って来たので換金をお願いしますね」
彼女は渋々ながら素材の査定をし始め10分程で換金を終える事ができた。受付嬢の中でも彼女はかなり腕が良いのだ。そして俺は、ギルドの資料室(Cランク以上は無料解放)で解呪や魔法除去についてを職員に追い出されるまで調べた。
(絶対に翠を自由の身にしてやる!)
その思いを胸に秘めて
〜翠side〜
月明かりに照らされる廃城に一人(?)の女レイスがいた。
『あぁ……今日は楽しかったなぁ』
数百年振りの会話……加えて相手は同郷。会話は必然と盛り上がった。この数百年の間……狂う事は無かったものの、流石に自分と言うものを見失いかけていた。封印が弱まっていなければ……あと、数年でも弱まるのが遅ければ、恐らく私は人としての何かを失っていただろう。今でさえ、レイスになってしまったせいで本能に飲み込まれそうなのだ。レイスになったのは狂うまでの期間を延ばしたにすぎない。
『精神的に落ち着いてきた……けど、限界に近いね。早く明日にならないかなぁ。本能のままに暴れそうだよ…………あぁ,人間の国を滅ぼしたい……ってダメダメ。落ち着かなきゃ』
本当にギリギリだなぁ。おそらく彼と一緒にいればこの状態であっても本能に飲まれる事はない。封印が解かれれば(自信はないが)地球にいた頃と同じように道徳的な行動が出来る。けれど今のままだとギリギリ本能が理性を上回る。怨みからか《この王国を滅ぼせ》ともう一人の私が囁くのだ。
『意思を強く……持たないと………………』
〜翠side out〜
つ……次こそは封印を解くから




