堕ちた勇者(3)
令和二度目の投稿
女レイスは数分間ブツブツと、人間への文句を垂れ流し 続けていた…………俺? 逃げたらどうなるか分からないしずっと待ちぼうけだったよ
『ごめんね……屑どもが未だに異世界人を召喚し続けてるって聞いてついつい我を失っちゃった。私もさぁ召喚されて,散々こき使われて……最後は封印だよ! この数百年の間ずっと暗闇で独りぼっち……気が狂いそうなのに平常心を何故か保てちゃうし……やっと封印が緩んだと思えば魂だけが外に出て肉体はほったらかしになっちゃうし,この城の外には出れないし……』
彼女は『うが~』とでも言いそうなポーズをとりながら捲し立てて最後は膝をついてしまった。
「えぇ……あの,大丈夫ですか?」
『…………うん,大丈夫大丈夫。そう言えば、自己紹介とかしてなかったわね。私の名前は天井 翠。一応勇者をしてました。翠って呼んでちょうだい』
「はい。俺は白河 拓真といいます。こっちではタクマで通してるんでそう呼んで下さい。一年ちょっと前に召喚されました」
翠は見た目通り(自己紹介は)凛としていた。おそらく人間……特に異世界召喚をしている奴らが関わらなければ、まともな人なのだろう。ただ、何か姉御と似た雰囲気を感じる。本当はフランクな感じの人なのかもしれない。
「翠……さんはどうして堕ちた勇者だなんて呼ばれているのかって聞いてもいいですか?」
『かまわないわよ……あと、さんも敬語もいらないから! むしろ敬語禁止ね!』
こちらにビシッと人差し指を向けてそういった彼女は、本当に何も気にしてないようだ。
『それと理由なんて単純よ。私は召喚される前は日本って言う国に住んでたのよ』
………ん? 日本っていった?
「……話をいきなり遮ってすいません。翠さんは日本人だったんですか? 俺も日本人なんですけど」
思わず遮ってしまったが、彼女は気にしていない……と言うよりも驚いて興奮していた。
『本当!? 同郷の人なのね! 嬉しいわぁ。異世界人を召喚するって言ってもランダムでどの世界から召喚しようとか決めてないって言ってたし会えないって思ってたのよ!』
封印なんてされなければ会えなかったでしょうけど……と彼女は締めくくり、深呼吸をした。
『私は2015年の夏に召喚されたの……タクマは?』
「俺は2017年の秋に」
予想してなかった訳ではないが、やはり時間の流れが違う。翠さんが召喚されてから何百年もたっているのに俺は二年後に召喚されている。
『やっぱりかぁ。予想通り時間の流れは違うね……それならそれで話しやすいし良いんだけど。私は,召喚される前に髪を染めていたの……これで察しはつくよね?』
つまり、髪が伸びて本来の髪色がバレたのか
『母親の方がオランダ人で瞳は元々翠で召喚された時はやり過ごす事が出来たけど髪は自然と伸びてくから魔法で誤魔化すしかなくって……けど、戦争で魔族と戦ってたら運悪く将軍が出て来ちゃってねぇ』
「魔力が尽きたんだね?」
『そうなのよ! それで疲れきった私は殺されそうになって……流石に抵抗はしたから封印に落ち着いたのよね』
守っていたのに髪が黒になったからと殺そうとするなんて酷い話だ。やはり勇者なだけあって、疲れきった身体でも抵抗は出来たんだね……。
『タクマは不良か何かだったの? 死んでないってことは髪を染めるだけじゃなくてカラコンもやってたんでしょう?』
彼女の不良の定義に突っ込みたいものの、一旦置いておいて説明した。
『すごいわねぇ。召喚されて困惑してただろうに』
「……まぁ,逃げ足には自信があったからね。何とか」
それから暫く、俺と翠は日本の話で盛り上がった。この世界の事はあまり触れずに親睦を深めることにしたのだ。そして、そろそろ日が落ち始める頃になってしまったので、俺は一度町に帰ることにした。
『明日は早めにこっちに来てね! 私も出来ることはしておくけど、この封印を解くのは簡単じゃないし……』
「おう! 俺は俺で出来るだけの準備をしておくからまた明日」
帰る頃には、同郷の仲間を助けたい……と言うだけでなく彼女と旅をしたいと思えるほどに仲良くなった。
どうしてだ? この話で封印を解くはずだったのに……




