三作品合同 クリスマスネタ
クリスマスネタ 2019
12月23日 都内の某所、某部屋。
橘たちは、宛先人Xという怪しさ極まりない人物から、とある部屋に呼び出されていた。
「さて、醜いクリスマスネタ戦争を経て……見事に勝ち抜いたのは僕たちデザイアチームでした」
橘が勝利宣言をしながら手を叩く。隣にいる要は「まっ、当然だな」という顔で静かに笑っている。
ショートネタという部門で、いまいち光れない、というか他の二作品に負けるデザイアからすると大躍進だ。
「とりあえず、どうする? 本編には出てきてない人も割と居るけど……しれっと出てもらう?」
「呼び必要なんてねぇーよ。ウゼーのばっかりだ。そんな事より、何かクリスマスを盛り上げるような事を考えろよ」
「クリスマスに盛り上がることか……」
要のいつもの無茶振りに橘が、少しの間考える。
イルミネーションを見る……次の日に彼女と見る予定のため却下。むしろ、男二人でイルミネーションなんて、要が絶対に嫌がる。
部屋でパーティーゲーム……今の所二人しかいないため、完全に白けそう。
ピザやチキンなどを買って食べる……絶対に片付けは自分(橘)
プレゼント交換、要と。……とてもじゃないけど、柄じゃない。
次から次へと浮かんでくる、とても有り得そうな未来だ。
そんな情景を想起した橘が、やれやれと言わんばかりにため息を吐いた。
「要、駄目だ」
「あ? 何がだ?」
「正直、僕ら二人だけでイブイブを楽しむなんて、割と無理があった」
「…………………………」
表情を歪ませたまま、要が暫く沈黙してきた。
きっと自分と似たような事を考えたに違いない。
要って、やっぱり分かりやすいなぁ。
そんな事を橘が考えていると、
「マジで、ありえねぇ……」
要が不愉快そうに言葉を吐き捨ててきた。主語がないため、何があり得ないのかは、橘が勝手に想像するしかない。
自分と同じ事を考えたのか、将又、呼びたくないと言っていた人物を呼ぶ事を考えたのか。
むしろ、両方を考えた可能性がある。
「まぁ、じゃあクリスマスツリーでも飾る。割と大きめなツリーがあるし」
橘が部屋に用意されていたオーナメントとツリーを指差す。
すると、眉を顰めた要が橘の頭を叩いてきた。
「痛っ」
「気色悪い事言ってんじゃねぇよ。ガキの頃でもあるまいし。ったく、仕方ねぇ、こうなったら買い出し行くぞ!」
「……じゃあ、僕がツリーを飾っておくから、要がその間に一人で……」
「ああ?」
ギロッと睨まれ、橘は肩を竦ませた。
「人はやるだけのことはやるべきである。けれども、どうしてももう出来ない時は、落ち着いて笑っていなければならん。落ち着き給え」
諦めの境地で橘が宮沢賢治の名言を呟き、橘はアウターの袖に手を通した。
まぁ、この部屋でウダウダしているよりは良いだろう。
出来るだけ、ゴミ捨てが簡単なのを選ばないと。
後々の片付けを想像し、橘は外へと出た。
外に出ると、口から白い息が出る。顔に吹き付ける風にも鋭さがある。
「腹立つほど、寒い」
「まぁ、冬だからね。空も曇りってるし。もしかしたら、雪が降るかもよ?」
「雪とか、最悪すぎるだろ。寒いわ、乾燥するわ、地面が凍るわ、良いことが一つもねぇ。しかも雪なんて、埃の塊だぞ? 汚すぎるだろ。はしゃぐ奴の気が知れねぇ」
イルミネーションでキラキラとする街中には、雪が降るのを楽しみにする人がいる。
むしろ隣の恋人たちが「雪振ったら、良いよね」なんて話していた矢先だ。
要も所構わず、そんな事を普通の声で言ったため、彼女の方が気まずそうに口を閉じてしまった。
「良いんじゃない。埃が一番綺麗に見える時なんだから。ほら、いつもは嫌がられる埃でも、この時期は輝けるって事で」
「誰へのフォローだか知らねぇけど、フォローになってねぇからな」
「はは。上手いことを言ったつもりなんだけど」
片眉を眇めてきた要に苦笑を零す。
そんな他愛もない話をしている内に、要たちが付いたのは近くのコンビニだ。
コンビニの店頭には、『クリスマスセール』の文字があり、チキンなどの揚げ物類が並んでいた。
「とりあえず、チキンでも買っておく?」
「無難だな。あとは……ポテト、ラーメンでも買っておけば良いだろう」
「チキン以外、割といつも通りな気もするけど。まっ、良いか。あとは飲み物を……」
「飲み物なんて買わなくて良い。確かあそこの部屋に冷蔵庫があっただろう?」
飲み物売り場に向かおうとした橘を要が引き止めてきた。
そういえば、招待状を貰い向かった部屋には、中型の冷蔵庫が用意されていた気がする。
「でも、要……要は中を見た? 一応、言っておくけど、僕は見てない」
先ほどいたレンタル部屋っぽい所は、家電製品が揃っていても中身まで用意されていない。
「俺も見てはねぇ。けど、俺の直感があるって言ってる。つまり、ある」
「……根拠もないのに、言い切れるのが要だね」
しかし、自分と要はデザイアゲームでランスロットに選ばれている。ランスロットの加護は幸運。つまり、幸運で冷蔵庫に重い飲み物が入っているという状況は大いにあり得るのだ。
そのため橘も、
「じゃあ、チキンとポテトとラーメンを買って帰ろうか」
飲み物を買い物リストから除外した。
とはいえ、イブイブに食べるものとしては、かなり質素だ。
そう思いつつ、橘たちは部屋へと戻った。
すると、そんな橘たちを出迎えたのは……無人の部屋ではなかった。
玄関を開けると、そこには数人の靴があり、部屋に入ればさっきまで何も置かれていなかったテーブルに、クリスマスに相応しい料理が並んでいた。
「あれ? これは……」
「どういうことだ?」
外から帰ってきた二人が呆然とする。
するとそんな二人にキッチンの方から声が掛かった。
「やっぱり、橘君たちも呼ばれてたんだ」
そう言って、キッチンの方から顔を出したのは家事仕事をしていた狼だ。狼の隣には櫻真がおり、ケーキを切り分けている。
「黒樹君に櫻真君……」
「僕たちも招待状を貰って、最初は怪しいなぁ〜と思ったんだけど、出流が『気になる』って言ってさ、真紘とフィデリオと共に来たんだ」
「俺の所にも同じ招待状が来とって、蓮条と一緒に来たんです。本当は菖蒲さんと桔梗さんの所にも来とったんやけど、用事があって来れへんで……」
橘が狼と櫻真から話を聞いていると、リビングへ行った要の不機嫌な声が響いた。
「何でサイヤ人たちと巣鴨まで来てんだよ? むしろ、そこは俺の席だ! 退けっ!」
三ノ輪先輩たちも来てたんだ……。
姿を見ずとも要の言葉で、デザイアチームから来た他のメンバーが判明した。
温和なクリスマスが過ごせれば良いけど……。
そんなことを考えながら、橘は小さく溜息を吐く。
テーブルには、きっとアストライヤーチームと鬼絵巻チームが揃えてくれた料理が綺麗に盛り付けられていた。
チキンやピザ、ケーキにサーモンムースやオリーブのマリネ。ビーフシチューにシュトレン、数種類の飲み物が置いてある。
その飲み物の中に「cidre」と書かれたラベルを見つけた。りんごベースの発泡酒だ。
「この中で一番、デザイアらしいかも」
そう呟いて橘がそっとほくそ笑む。
何だかんだ、騒がしいクリスマスになる予感を感じながら。




